【二】絶望の始まり(★)
その後俺は、気絶させられたようだった。次に気づくと俺は、馬車の中にいた。最初、どこにいるのか分からなかった俺は、直後愕然として目を見開いた。
「あ、あ、嘘だ――!」
俺は、馬車の中で、ベリアス将軍の上に乗っていた。深々と陰茎が、俺の中に突き立てられている。馬車が揺れる度、陰茎が俺の中をかき混ぜる。
「ああああああ」
その上、体が灼熱に襲われていた。ボロボロと泣きながら俺は、手の甲に突き刺さっている魔導点滴の器具を見た。震えながらチューブの繋がる先を見れば、魔術粉の光る水のパックが見える。
「いやだ、熱い、あ、熱い――うああああ!」
「俺無しではいられない体にしなければならないからな。たっぷりと媚薬を注がせてもらうぞ。この点滴には、俺の魔力が込められている。今、お前の魔力にそれを混ぜ合わせている。黒薔薇の刻印とこの魔法薬を摂取してしまえば、もうお前の体に自由は無い」
「あ、ハ……あ、あ、あ……いや、いやぁ……動いて」
「早速素直になったな」
「あ、ああああ、気持ち良い、あああああ!」
無我夢中で俺は叫んだ。全身を強い快楽が支配している。もう、体内のベリアス将軍の陰茎の存在しか認識できない。気づけば俺は、必死に腰を動かしていた。
「いいぞ、蠢いているな。その調子だ。存分に俺を楽しませるようにな」
「あ、ああ……あ、ア……いやぁ、いやぁ」
「いや?」
「イき、た……あああああ、出したい、いやああああ!」
俺は気づいた。陰茎の根元と首に、黒い鉄製の輪がはめられている。これでは射精できない。そんな俺の乳首を、後ろから両手でギュとベリアス将軍が摘まむ。頭が真っ白に染まった。
「中だけで果てれば良いだろう?」
「あ、あ、そんな、そんなぁ! いやぁ、助けて、ああああ!」
何かがせり上がってくる。その時、グリと最奥をベリアス将軍が突き上げた。
するとブツンと俺の理性が焼き切れた。
「あ」
一瞬、水のような静けさに襲われた後、全身を漣のように快楽が駆け抜けた。足の指先までをも快楽の奔流が襲い、俺の体が小刻みに震えた。
「ああああああああああああああああ」
嫌でも悟らされた。俺は、中だけで達していた。絶叫してそのまま俺は気絶した。
――次に目を覚ますと、俺は馬車から降ろされようとしていた。俺を抱き上げているベリアス将軍は、実に楽しそうに笑っている。
「今から火の国の国王陛下に、お前を報償として貰い受ける交渉をする」
俺を横抱きにしたまま、ベリアス将軍が歩き始めた。何も考えられないままで、俺は彼の胸の服を掴んでいた。既に点滴は外れていたが、全身が熱いままだ。
火の国の宮殿は豪奢で、樹の国の造りとは異なっていた。等間隔に甲冑や彫刻が並んでいる。ぼんやりとそれらを見たまま進み、俺は玉座の間へと連れて行かれた。
「よく帰還した、ベリアスよ」
近衛騎士が開けた扉から、俺を抱いたまま将軍が入場すると、玉座に腰を下ろしていた火の国の国王陛下が立ち上がった。そして俺を一瞥すると、顔を背けた。
「全て殺せと命じたはずだが? その魔力気配、樹の国の王族では無いのか?」
「なに、このような弱い子供など、飽きたらいつでも殺せます。それより陛下、暫し、私めにこの者を玩具としてお与え下さい」
「――好きにせよ。飽きたら殺すのだぞ?」
「ええ」
その言葉に怯える余裕さえ無かった。一礼するとベリアス将軍は、そのまま俺を連れて宮殿を後にした。終始ぼんやりとしたまま、俺は今度は豪邸に連れて行かれた。使用人達がベリアス将軍を出迎える。彼の邸宅なのだろう。
抱き上げられたままでその後連れて行かれたのは、窓の無い一室だった。室内には、巨大な寝台の他は、拷問器具のようなものしか存在しない。
「ありとあらゆる快楽を叩き込んでやる」
「……」
寝台に俺を押しつけたベリアス将軍は、輪がはまったままの俺の陰茎を口に含んだ。ねっとりとしゃぶられると、すぐに俺の体は再び熱くなり、俺は泣くしか出来なかった。筋を舌で舐めあげられ、鈴口を刺激される。陰嚢を手でもみしだかれ、俺は全身から力が抜けてしまい、ぐったりとしていた。
気持ち良い。もう、それしか考えられない。
「まだ傷が残っているな。これでは楽しめないか」
傍らの棚から魔法薬の瓶を手に取ると、ベリアス将軍が俺の菊門の傷に塗り込め始めた。グラグラする思考で、俺はその刺激にまで感じるようになってしまった己の体を不思議に思っていた。まるで自分のものではないような感覚がする。思考が一歩引いた場所にあるようにさえ思える。強烈な離人感のもと、俺は体が癒えていく事だけを漠然と理解していた。
「さて、どうしようかな」
今度は棚から黒い箱を取り出し、ベリアス将軍が何かを選び始めた。虚ろな視線を向けていると、細長い張り型を将軍が取り出したのが見えた。将軍は、ダラダラと香油をそれに垂らすと、俺の菊門に押しつけた。
「暫くは拡張するとするか」
「ひ!」
張り型が突き立てられた。それをベリアス将軍が、かき混ぜるように動かす。既に解れきっていた俺の中が、それを受け入れる。
「あ、あ――、――ァ!!」
「ここが感じるのだったな。もう覚えたぞ」
黒い髪を揺らし、残忍にベリアス将軍が笑う。獲物を捕食するような顔だった。その時、バチンと音を立てて、俺の根元の輪を外した将軍は、張り型を激しく動かし始めた。既にそそり立っていた俺の陰茎の先端から、透明な先走りの液が零れ始める。
「あ、ァ!」
そのまま張り型で貫かれ、俺は果てた。飛び散った白液を、ツツツとベリアス将軍が指で掬う。そしてペロリと舐めると、吹き出した。
「どうだ? 父を殺し、母を捕らえた男に、感じさせられる気分は」
「あ、あ、ァ……ああ……待ってくれ、まだ動かさないで……いや、ァ」
止めどなく涙が溢れてきて、俺の頬は乾かない。壮絶な快楽と恐怖、絶望感に苛まれ、何も考えたくなくなっていく。もう快楽に飲まれてしまいたい。一瞬だけそう思ったが、気づいた時にはそうなっていると直感した。
「あああああ、またイく、いやああああ」
その夜俺は、何度も何度も果てさせられたのだった。