白い箱の神様
次の季節が来たーーわけじゃない。
この前後左右上下が真っ白な空間には、季節なんかない。
突き当たりながいようにみえて、十メートルもあるけば、実は鏡が設置されている。誰も歩かないし、皆大抵立ち止まってこちらの話を聞いているからである。
こちらというのは要するに僕、など、百階だての神様転生ルームで、転生業を営んでいるアルバイターである。六百年くらいぶっ通しのシフトだから、ちょっとだるい。しかも三十年に一人来たら多いほどだ。
人間の歩みと僕らの歩みにはあまりにも乖離がある。
暇な僕らがしていることといえば、部屋の改装だ。
僕の白い部屋には、金色の蝶々が飛んでいる。
他には、コンビニレジっぽく転生ポイントをもうけたり、肉塊になるように鋭利なワイヤーが張り巡らせた部屋だったりもある。どの部屋に振り分けられるかという時点で、結構その後の運は決まっている。
その後の人生をスクリーンで上映してくれる部屋経由だと、既視感やらーー実力あれば余地能力になる。やってくる人は皆自分の人生の主人公。じゃあ僕達はいつ自分が主人公の日が来るんだろう。
というか。
僕はいつからこうしてここにいるんだろう。
僕はたまに思う。
僕も転生して神様になったんじゃないのかと。
なんでこれ選んじゃったかなぁ……。
一番古い記憶を探すと、誰かとぶつかったような気がするのだ。
すごくすごく僕はそれを後悔しながら、ええと……。
そのまま落っこちたんだっけ?
何処から何処にだろう。
まぁいいか。
そんなことを考えていたら新しい転生者がきた。
適当なことを言って、魔王がいる世界へと放り込んだ。
考え事をしてるんだから、今は来るなよ、空気読めよ。
で、まぁ、良くないか。
あれぇ、本当にどこだろ。
アラブっぽい階段だったのは覚えている。
言語は自動翻訳されるから不明。染めているのか、移民なのか、様々な色彩の人がいたが、顔は似ていたなぁ。自分はどこそこの王族脳んたらかんたらという人がたくさんいたから、血統妄想の精神科の豪華バージョン……とか?
なんだろう、腑に落ちない。
そうだ、みな、コウコウセイーー高校生!
そうか、高校生だった。たしか中高一貫性の男子校。
そこまで思い出した時、ビービービーとアラームがなった。
転生トラックの発動だ。
「また君?」
僕は思わず引きつった笑みを浮かべてしまった。
この前魔王のいる世界に送ったばっかりじゃないか!
思いの外整った顔立ちの、(主人公)さんを見る。
なんでまた来た。もう来るな!
「今度は希望通りに転生させて上げるよ」
二度と来ないように、希望以外にも、潜在的なチート能力をつけてな!
「村人Aでお願いします」
「OK」
うむ、これならば平凡な俺?、やら、しゃぁねぇなダリィけど俺が?、的な感じで、主人公になってくれるだろう。運命システムがレッド判定しない限り、それで終わりだ。人間の一生なんて短いから、少し見守るか。
腕を組み見守っていたら、すぐに死んだ。
あんまりにもあっさりと死んだから、僕は吹き出し、必死で顔を両手で覆った。
笑っちゃ悪いのはわかるが、あんまりにも主人公さんは、スクリーンの風景だったのだ。その役が悪いとは言わないが、仮にも記憶持って転生しておいて……げらげらげらって感じでした。
そして僕の体感的には、すぐに戻ってきた。
陰陽師になれなかった彼は、最強のスペックを手に現代とやらのニホンへ行った。
「何で共学じゃ無いかなぁ。本当に残念」
そんなことをつぶやいていたら、急に既視感に襲われた。
なんだかこれ何処かで見たことがある。
あれ、僕……。
何か思い出しそうだったが、考えているうちに、僕は見ていなかったが、また主人公さんが死んだ。
時空なんて関係がないこの部屋で、ぶつかった過去の相手の顔を思い出すのと、別途恋をするのは、同じなのだがまた別のお話だった。