【番外】お化け屋敷(テーマパーク)へ行く。(★)



「藍円寺」

 絢樫Cafeに行くと、ローラに抱きしめられた。正面からギュッとされて、まず俺は硬直した。続いて周囲を見渡し、そこに砂鳥くんと火朽くんと紬がいるのを見て、慌ててもがいた。

「離せ」
「やだー」
「離せ!」
「嫌だ」
「ローラ!」
「んー?」

 ローラは俺を腕の中に閉じ込めるようにして、ニヤニヤと笑っている。それから唇を近づけてきたものだから、俺は焦った。このままでは頬にキスされてしまう。それは――嬉しい事だが、周囲に俺とローラの関係がバレてしまう。恥ずかしい……!

「なぁ、藍円寺」

 俺の腰に腕を回し、ローラがもう一方の手で俺の唇をなぞった。その感触に、ゾクリとしてしまう。ローラに触れられると、俺の体はおかしくなる。

「次の休み、空いてるか?」
「ん? 土日か?」
「おう」
「斗望が遊びに来る予定だ」
「――へぇ。いやな、俺とお前と、桔音と紬でテーマパークに行こうかという話をしていたんだ」
「テーマパーク?」

 俺が首を傾げると、ローラが砂鳥くんを見た。

「砂鳥。お前も来て、斗望くんの相手をしてやれ」
「僕は良いけどさ……」
「藍円寺もそれでいいだろ? 嫌か?」
「え、あ……あ、ああ。たまには甥にサービスするのも悪くはないな」
「決まりだ。デートだな」
「な」

 紬に聞こえてしまったと思って、焦って視線を向けると、紬は俺を見てすらいなかった。火朽くんと一緒に、巨大パフェを攻略中で、黙々とクリームを食べている……。

「藍円寺、久しぶりに肩でも揉んでやろうか?」
「ん? ああ」

 そのまま俺は、ローラに促されて、セミダブルのベッドがあるマッサージルームへと向かった。この部屋に入るのも久しぶりだ。


「ローラ……ぁ」

 性急に前をはだけられ、左の乳首に吸い付かれる。
 右手ではユルユルと陰茎を撫でられた。

「ン」

 唇で優しく含まれ、舌先で刺激される度に、触られていない側も含めて乳首が硬くなっていく。緩慢に上下へと動く右手は、俺の陰茎をなぞるようにして動いていた。

「あ、俺」
「ん?」
「その、あ、っっっ」
「どうした?」

 優しく囁くようにローラに聞かれ、真っ赤になって俺は思わず目に涙を浮かべた。

「ひ、久しぶりだから、直ぐ出ちゃいそうでッ、んぁ」
「出しても良いぞ」
「けど、ローラので、イきた……ッ」
「っ」

 笑みを吐息にのせ、ローラは指を口に含んだ。俺の胸の突起に左手をそえ優しく、けれど早く擦りながら、右手の指を唾液まみれにする。

「あ、ああ……ッ」

 二本の指を、ローラが揃えて俺へと入れる。

「うあ、あ、ああああっ」

 俺が震える声を上げたとき、無事に入りきったところで、解すようにローラが指を動かした。

「ああっ、う、ンぅ、ッ」

 その時感じる場所を刺激され、俺の体が跳ねた。

「あ、あ、あ」
「大丈夫か?」

 俺の様子を優しい瞳で見ながら、今度は左手で、ローラが俺の前を撫で上げる。

「ん、ぁ、ああっ、やぁあっ、あ、あ、ローラ……好きだ」
「ここだろ?」
「違う、ッ、ローラのことが――ぁあああ」

 俺が言うと、ローラが一度体を固くしてから、ニヤリと笑った。

「……――けど、ここも好きだろ?」
「ああああンぅ、あ、あっ!!」

 そして俺の感じる場所を的確に刺激する。
 それから指を引き抜いて、菊門に先端を宛がった。

「入れても良いか?」
「う、うん――ッ、あああああ!!」

 頷くと同時に入ってきた熱に、目を見開き俺は震えた。

「俺も好きだぞ。愛してる」
「ああっ、う、あ、ああっ、俺も……ッ、ンああああ!!」

 そのままあっけなく俺は果てた。
 それから体勢を替えられた。


「あ、ああっ、ン……」

 先ほどから、後ろから抱きしめられ、ずっと胸の突起を両手で擦られて、俺は、もどかしくて泣きそうになっていた。

 中には、まだローラの肉茎が入ったままである。奥まで突き上げられたまま、動きを止められていた。そうして胸を嬲られる度、自然と腰が動く。

「あ、ああっ、う、うう」
「ずっとお前に触りたかった」
「俺も……」
「俺に触られたかったのか?」
「……ああ」
「じゃあ、もう少しこうしていても良いか?」
「や、やだ、やめ、あ、あああっ、う、あ、お願、お願いだッ、ああああ」

 強く乳首を摘まれ、俺は涙を零した。

「や、あ、も、もう、また、出……イ、きたッ」
「イきたいのか? どうして欲しい?」
「動いてくれ」

 俺の声に、ローラが片手で、俺の陰茎を握った。それを動かす。

「や、ぁああっ、ひ、うあッ、違」
「違うのか?」
「手じゃなくて、中、ねぇ、ローラ。お願いだから……っ」
「ああ」

 しかし片手で乳首、片手で陰茎をゆっくりと弄んだままで、ローラは腰を突き上げた。

「ンあ――! やぁッ、う、あ!」
「悪い、俺も出そうだ」
「俺も、もう、ぁああああッアアア!」

 ローラが中へと精を放った瞬間、俺も放ち、ダラダラと白濁とした液が跳んだ。

 グッタリとした俺を抱きしめながら、ローラが後ろから首筋に口づけをした。
 キスマークを付けられた。


 ――その後日、斗望を試しに絢樫Cafeへと連れてきたら、ローラと斗望がキスマークの話を始めたものだから、俺は焦ったものである。




 さて、ローラに誘われたので、この日俺は、みんなでテーマパークへとやってきた。
 新南津市ハイランドパークは、最近出来た遊園地だ。
 以前にも、紬と火朽くんは来た事があるらしい。

 みんなというのは、俺とローラ、火朽くんと紬、砂鳥くんと斗望、芹架くんと水咲くんという人だ。俺が初対面なのは、後者二人である。甥の斗望の同級生と保護者らしい。

 みんなで回るのかと考えていたら――ローラが俺の手首を握った。

「行くぞ! 藍円寺!」
「え」
「やっぱりテーマパークっていったら、お化け屋敷だよな!」

 ローラはそう言うと、俺を強引に引きずって歩き出した。
 え……。
 手をつないでいるみたいでドキドキした。

 本日は休日だが、なぜかローラが列に並ぶと、人ごみが一気に消えた。
 そのため、五分ほどで、俺達は中に入る事が出来た。
 非常に運が良い。他の人々は一体どこに行ったんだろうな……?

 中に入ると、色々なお化けの仕掛けがあった。しかし嫌な気配は特にしないし、人工物以外の何が見えるというわけでもない。意外と平気で、俺はシラケながら進んだ。ローラはそんな俺の腕をギュッと握り、「怖いなぁ」と言っていた。

 案外ローラは怖がりなのだろうか? ならば、頼りになる演出をしたい。俺はローラの恋人なのだから。そのままあっさりと出たので、俺はローラを見た。

「次はどうする?」
「んー、テーマパークって言ったら、基本こういったお化け屋敷と絶叫だろ?」
「ジェットコースターか……俺は、あんまり好きじゃない」
「怖いのか?」
「怖いというより、酔うんだ」

 俺がポツリというと、ローラが頷いた。

「じゃ、あれだな。メリーゴーランドか観覧車」

 ローラの提案に、俺は思わず言った。

「メリーゴーランドにしよう」
「――お、おう。別にいいけど、可愛らしいチョイスだな。普通、観覧車だろ?」
「いいや、メリーゴーランドにしよう」
「なんで?」
「か、観覧車より面白い!」
「どこが? 観覧車なら二人きりだぞ。俺、藍円寺と二人っきりになりたいなぁ」
「……っ、分かった」

 俺は、ローラのお願いに弱い。
 こうして俺達は、観覧車へと向かった……。
 しかし――大問題がある。俺は、高い所が苦手なのだ……。

 ジェットコースターのように早かったり、急降下するアトラクションは何故か大丈夫なのだが、密室でゆったりと進む観覧車は……正直怖い。

 俺達の番のゴンドラが来たので、静かに乗り込んだ。
 ローラと対面する席に座り、俺はなるべく外を見ないように俯いた。

「今日は、藍円寺とデートが出来て幸せだ」
「俺も……ローラと外出できて楽しい」
「本当か? 顔が青いぞ?」
「ほ、本当だ……!」

 そんなやりとりをしていると、頂上になり、下り始めた。
 やっと半分が過ぎた――そう思った時である。

「!」

 急に観覧車が停止した。

『強風により、一時停止致します』

 そこへ、非情なるアナウンスが響いてきた。俺は思わず両腕で体を抱き、震えた。

「藍円寺、こっちに来いよ」
「行かない」
「じゃあ、俺が行こうかなぁ」
「ダメだ!」
「――なんでだよ?」

 俺が必死に言うと、ローラの声が少し低くなった。

「傾くだろう! こちらばかり重くなったら、観覧車が傾く! 揺れる! 落ちたらどうするんだ!?」

 慌てて俺は、状況を説明した。吸血鬼は、観覧車に詳しくないのかもしれない。

「――ま、まぁな。ふぅん。けど、傾いてもすぐにバランスがもどるぞ」
「え」
「こっちに来いよ――『命令だ』」
「!」

 ニヤリと笑ったローラの声を聞いた瞬間、俺の体が勝手に立ち上がった。
 そして俺は、四人乗りの観覧車のローラの隣に移動した。
 グラリとそちら側に観覧車が揺れる。

「っ、うわ」

 その時体が自由になったので、俺は思わずローラに抱きついた。
 全身に震えが走る。

「ローラ、どうしよう、落ちたら」
「落ねぇよ」

 俺はローラにしがみつくようにしながら、ギュッと目を伏せる。震えが止まらない。
 閉所と高所が一緒に来ると、なぜなのか怖いのだ。片方ずつなら平気なのに。

「藍円寺の方から抱きつかれるって、新鮮だな」
「ローラ、あんまり動くな。揺れる!」
「そんなに怖いのか?」
「……べ、別に」
「――怖さ、忘れさせてやろうか?」
「え?」

 ローラの声にうっすらと目を開いた時、ローラの唇が俺の口に触れた。

「!」

 目を見開き、抗議しようと小さく開けた口に、ローラの舌が忍び込んでくる。

「ン」

 そのまま舌を絡め取られて、歯列をなぞられた。片腕で逃れられないように腰を引き寄せられ、もう一方の手で顎を持ち上げられる。

「んんン!」

 すると不意に、口から全身に快楽が走った。蕩けるような甘い快楽が体の中に忍び込んでくる。ただキスをしているだけなのに、全身が一気に熱くなり、俺はもがいた。しかしローラは俺を離さず、深々と口を貪る。

「ぁ……」

 気づくと俺は、体から力が抜けていた。そのまま押し倒され、椅子の上に頭を置く。この観覧車はおもいのほか広い。

「あ」

 するとローラが俺の下衣を脱がせて、陰茎を口に含んだ。
 ねっとりと筋を舐め上げられて、カリ首を刺激された時、俺は思わず右手で唇を覆った。
 嬌声を上げそうになり、きつく目を閉じてこらえる。

「ん、ぅ……ぁ、ローラ、やめ」
「やめていいのか?」
「……っ、あ、でも、動き出して下についたら――」
「見られちゃうなぁ」
「ローラ! ひァ」

 その時、強く唇で扱かれて、俺の腰から力が抜けた。咥えられている箇所からも、快楽が流れ込んでくる。

「あ、出る、あ、ああっ」
「早いな」
「だめだ、あ、ああっ」
「これなら下どころか、動き出す前に、果てるだろ」
「ン――!」

 ローラの言葉の通りで、俺はあっさりと精を放った。
 飲み込んだローラは、それから俺の下腹部を綺麗にしてくれた。

「……」

 起き上がった俺を、ローラが抱き寄せる。

「もう怖くないだろ?」
「……ああ」

 俺はその肩に頭を斜めにして預けて、動き出した観覧車の中で吐息した。
 確かに、怖さは消えてしまった。

 それから下へとつき、俺は恥ずかしくて、ローラの手首を掴んで逃げるようにその場から立ち去った。すると、斗望と砂鳥くんの二人に遭遇した。

「あ、享夜くんが、ローラさんと手をつないでる! 享夜くんが引っ張ってる!」

 斗望の声にハッとして、慌てて俺は手を離した。
 見ればローラはニヤニヤと笑っていた。

「砂鳥も楽しそうだなぁ。斗望くんと。俺はてっきりあの妖狐と遊んでるのかと思ったが」
「水咲さんは、芹架くんとジュースを買いに行ってくれてるんだよ。ローラこそ、藍円寺さんを連れ回して楽しそうじゃん」
「まぁな。火朽達は?」
「火朽さんと紬くんは、お茶を飲んでるみたい。荷物を預かってもらってるよ」
「へぇ。じゃ、俺と藍円寺も少し休んでくる。じゃあな」

 ローラはそう言うと、今度は俺の手を握り直した。恋人繋ぎだ……嬉しいけど、みんなの前且つ人ごみの中なのに……! 思わず赤面した俺には構わず、ローラが歩き出す。

「休むってどこに行くんだ?」
「ん? そこのホテルに部屋を取ってある」
「え?」
「たまには藍円寺とホテルデートもいいかと思ってな」

 そのままローラは、俺をテーマパークの施設の一つであるホテルへと促した。このホテルは遊園地の付属なので、ボーイさんなども、テーマパークの仮装のように、一風変わった服を着ている。ローラは受付で鍵を受け取ると、俺をエレベーターへと促した。

 こうして連れて行かれたのは、テーマパークと新南津市を一望できる高層階の部屋だった。正面の壁がガラス張りで、しばしの間、俺は見惚れた。

「藍円寺」

 すると後ろからローラが、そっと俺を抱きしめた。

「続き、しよ?」
「あ、ああ」

 俺が硬直しながら答えると、ローラが後ろから俺の首筋に唇を落とした。ツキンとした甘い痛みが走り、キスマークを付けられたのだと分かる。ベルトを外され、後ろからジャケットのボタンも外された。

 下を脱いだ俺のシャツを少しだけローラが外す。それから――そのまま後ろから俺にのしかかるようにした。

「わ」

 重みに転びそうになり、俺はそのままベッドに身をあずけた。
 するとローラがそんな俺の上に乗り、耳の後ろを舌でなぞる。

「ぁ、ぁ、ぁ」
「本当にここ、弱いよな」

 そう言うとローラが、二本の指を口に含んでから、容赦なく俺の中へと挿入した。

「ん、っ」
「どうして欲しい?」
「……あ、ン……」

 異物感が強いと思った時――その指先から快楽が流れ込んできた。チカチカと青いさざ波のような快楽で、俺の体が染まっていく。

「うあ」
「もうドロドロ。俺の指、気持ち良いだろ?」
「あ、ああっ、あ」

 どんどんローラの指の動きが早くなっていく。濡れるはずもないのだが、卑猥な音が響き始めた。俺は気づくと蒙昧とした思考で、瞳を虚ろにしていた。頬が熱い。早くローラが欲しい。

「ぁ、う、ぁああっ」

 ローラがのけぞった俺の胸の突起を、シャツの上から、もう一方の手で弾く。

「ひ」

 そうしながら耳の後ろを舐められて、俺は涙をこぼした。

「あああああ」

 指の動きがさらに早くなり、重点的に前立腺を刺激されて、俺は何度も首を振った。気持ちよすぎておかしくなりそうだ。

「挿れていいか?」
「あ、あ、早く」
「――挿れて欲しいか?」
「欲しい、あ、早く、ローラぁ!」

 俺の理性はとっくに飛んでいた。懇願すると、すぐにローラが腰を進めた。
 その質量と熱に俺は喉を反らせる。唾液がこぼれそうになる。

「ひあ、あ、あああっ、うあ」
「熱い。本当、お前の中、気持ち良い」
「や、やめ、言わないでくれ、恥ずかしい――うああああ」

 思わず俺が言った時、ローラが激しく動き始めた。俺は必死で呼吸し、ギュッとシーツを握る。そのまま気持ちの良い場所を刺激され、俺は果てそうになった。だが、その時、ローラの動きが止まった。

「ふ、ぁ、はっ」
「大丈夫か?」
「あ、あ、イかせてくれ」
「まだ、ダメ。さっき観覧車で一回、イかせてやっただろ?」
「……っ、ぁ……」

 ローラがゆるゆると、実にゆっくりと緩慢に抽挿を始めた。限界まで引き抜いては、根元まで突き入れられ、俺は悶える。

「やぁああっ、う、ア、ローラ、あ、ああっ」
「ん?」
「だめだ、やだ、それ、やだ、ああああ」
「なんで?」
「もっと、あ、もっと早く、頼むからぁ」
「可愛くない」
「お願い、お願いっ」
「そ。それ。その言い方――まぁ、実際には、お前の声は全部かわいいんだけどさ」

 ローラはそう言うと、俺の腰を掴んだ。腰骨を掴まれる感触が甘すぎて、俺は泣き叫んだ。

「や、あああああ! うあ、あああ! だめだ、出る、あ、あああっ」

 そのまま大きく突き上げられて、俺は放った。
 肩で息をしていると、ローラに抱き起こされた。

「ひ」

 硬度を保ったままのローラのものが、より奥深くまで入ってくる。
 そのまま後ろから抱き抱えるようにして、ローラは俺の肩に顎を乗せた。

「俺はまだだ」
「あ、あ、あ、俺はまだ――やぁあああっ」

 前立腺を突き上げる形で、ローラが動きを止めたものだから、俺はもがいた。
 しかし俺の体にしっかりとローラが腕を回しているから動けない。

「あ、あ、だめ、あ、ああっ」

 せり上がってくる快楽が怖くて、俺はボロボロと涙をこぼした。
 酸素を求めて必死で息をしていると、ローラが右手の指を俺の口へと入れた。
 そうして舌を嬲られ、左手では乳首をつままれる。
 その状態で腰を揺するようにして突き上げられると、もうわけがわからなくなった。

「あ、ああっあ、あ、あ、ン――!」
「藍円寺、気持ち良いか?」
「うああああ」
「言えよ。言って? なぁ、藍円寺? どうなんだ?」
「気持ち良、い、ああっ、うあ、あ、ローラ、もっとっ」

 無我夢中で俺が叫ぶと、再びローラが腕を俺の体に回して動きを止めた。
 膨張した楔に奥深くまで穿たれて、俺は身動きがとれないまま、首だけを振って涙した。
 気持ちよすぎておかしくなってしまう。

「あ、あああっ、く、うあ、あ、ハ」
「藍円寺、腰が揺れてる。だーめ。動いちゃダメだ。『命令』だ。そうしたら、もっとよくしてやるから」
「いやああっ、う、うあ、あああっ」

 ローラの声に、俺は動けなくなった。全身から力が抜けてしまったようで、ただただ太ももだけが震え。せり上がってくる快楽が強くなり――俺は目を見開いた。ああ、来る。何かが――ドライだと、すぐに分かった。

「あ――!!」

 瞬間、俺は果てた感覚に陥った。内部だけで絶頂に達したが、出していない。なのに射精感が持続し、長い快楽が全身に響いてくる。

「ひ、あああ、だめだ、まって! うあああ」

 そのまま、シャツの上から、ローラが俺の両方の乳首をつまんだ。

「うあ、あ、ああああっ、あ、あ、ま、また、待って、やぁあああ!」

 さらに何度も強く突き上げられて、俺は泣きながら、再びドライで果てさせられた。
 頬がどんどん涙で濡れていく。ローラはそんな俺の左耳の中へと舌を差し込んだ。

「まだ足りない。俺は藍円寺が欲しい」

 ローラはそう言うと、再び体勢を変え、俺をベッドに押し倒し、猫のような姿勢にさせた。そしてまた、ゆっくりとゆるゆる動き始めた。

「ひあ、あ、ああっ、あ、ローラ! まって、あ、ああっ、や」
「んー、どうしよっかなぁ。俺は、ずっと藍円寺と繋がってたいな」
「できない、あ、でも、イきたい、出したい」
「藍円寺、可愛い」
「うああああ!」

 俺の言葉に、ローラが俺の腰を持って、激しく動き始めた。
 ダイレクトに感じる場所を突き上げられて、俺はそのまま、今度は前で射精した。
 同時に、中にローラのものが飛び散った気配がした。

 その後――シャワーを一緒に浴びた。ローラは俺を後ろから抱きしめて、何度か俺の首から血を吸った。その度に、ツキンと快楽が走り、俺は最終的に泡まみれのローラの手で扱かれて、シャワールームでも果てた。

 一緒にお風呂に入るのは初めてだと思ったのだが、なんとなく既視感があった。

 ――この時の俺はまだ、風邪をひいたあの日、ローラに暗示をかけられて、散々貪られた事は思い出していなかったのである。目眩がした日のお話だが、それはまた別のお話だ。

 身支度をして、合流地点に戻ると、俺達以外既に全員いた。

 こうして帰りのバスに乗った時、俺の隣でローラが言った。

「また来ような」
「――ああ。楽しかった」

 答えながら俺は、これからもローラと、沢山の思い出を築いていきたいと考えた。

 幸せだった。夕日を眺めながら、俺はこんな幸福な時間がいつまでも続くようにと、一人祈ったのである。