ルシフェリアの良い仕事




 ゼクスは、弱い。弱っちい。今日も一人敵攻撃で可哀想な感じになってしまったゼクスを、敵の大部分を範囲殲滅した高砂が呆れたように眺め、傍らでロステク兵器を展開していた橘が苦笑、PSY融合兵器を操作していた時東は無表情、指揮をしていた榎波は腕を組んでいる。

 なんだか可哀想である。隊長というだけで、この過酷な場所にいるのも、色々と。
 しかし、決まりは決まりだ。それに闇猫には、後始末という雑用ある。



 さて――オーウェン礼拝堂に入れるけど、出られなくなってしまったのは、そんなある日だった。扉自体もあと三日で締まるという。各地が焼け落ちて、大部分が避難済ではあったが、まだ、品物などの収集確認は途中だった。だが、敵が迫っているらしい。

 だがサイコメモリックが言うには、重要人物はまだ外だから、早く保護をしろという。しかし、外には出られないのだ。ということで、外にいる人物の確認となった。

 各組織何人かいたが、末端が多い。あと、ガチ勢が比較的外に居たのは救いだ。円卓関連だと――幸か不幸か、ゼクスが外に居た。メルディ猊下に運んで来いと言われた机を運んでいるところだったらしい。が、この場所、ESP砂嵐が吹き荒れていて、連絡が取れない。とりあえず、その他の人々には、三日後に締まると伝えることができたので、捜索してだめそうなら、自分優先で避難と指示を皆が出した。闇猫にはラクス猊下が伝えた。

 こうして三日目。ゼクスのみ……困ったようにメルディ猊下指示の机と格闘している。というのは、宗教院の瓦礫の中にあるからだ。壊すわけには行かないという医師なのか、PKも使っていない。人々は、絶望的な気分になった。この最重要人物は兎も角、ゼクスが……いくら弱っちくて使い物にならないとは言え……見殺しにするのは……。なんとか通信をみんなが試みる。その時だった。

「ゼクス=ゼスペリア」

 声が響いた。みんなは――出現したルシフェリアのサイコメモリック映像に、条件反射的に画面越しだが膝をつく。

「……あ、レクス伯爵の送迎係の黒色の……何か?」

 この言葉に、立ち上がりつつ、みんな首を傾げた。

「悪いんだが、ギルドおよび万象院&匂宮黒咲からの依頼として、ちょっと運んで欲しい品があってな。その机は後回しで良い」
「え、け、けど……――分かった」

 どういう事かと見守っていると、ルシフェリアが視線で転移装置を示した。
 そして座標を表示した。

「来てくれ」
「ああ」

 すると二人――誰も見たことのない、翡翠鳥万象院真紅匂宮総取り暁卿旧邸宅にいた。初めて見るから、関係者一同ぽかーんとなった。

「ここにあるものすべて頼む」

 そこには、焼け落ちたと考えられていた万象院の仏像などもある。ルシフェリア、さすがすぎる。しかしだ。高砂でさえ一体持つのがギリギリで、映っている大鏡などもつのも無理だ。と、思っていたが、あっさりとゼクスは縮小処理していき、すべて亜空間倉庫にしまった。え? だが、疑問解消は後だ。ギルド&万象院&匂宮の重要そうな品物は、全部ゼクスが保持した。あとは、ゼクスに来てもらうだけだ。

「ゼクス=ゼスペリア、王宮に大至急迎え」
「え?」
「――そうすると、ゼスペリア十九世猊下を保護できる」
「本当に?」

 ゼクスが驚いた顔をした。その時モニターに『ゼクス=ゼスペリアがゼスペリア十九世だbyルシフェリア』と表示された。すげぇ親切である。なるほど、それならば荷物が持てたのもわかる。人々、順番にも納得した。

 こうして、ゼクスが三日目の扉が閉まる二時間前に帰ってきたので、ほかの人々も全員きた。ゼクスのみ事態が分かっていない。首をひねりながら、キョロキョロしている。ゼスペリア十九世を探しているらしい。

 使徒ルシフェリアは偉大である。みな、心にそう刻んだ。