湖岸の白鴉




 冬の風は、どこか翠色に似ている。
 特に湖の上を行く風は。
 瞬きをすれば、周囲の光景が映る。常緑樹――椙と、雪だ。空も白い。
 昔は雪が好きだった。
 今も好きだ。
 好きに、再びなる事が出来たのは、彼のおかげだ。
 もう今はない故郷を追憶し眺めながら、静かに目を伏せる。
 だから吐き出した煙草の煙の色を、僕は知らない。