推葬――探偵フーダニット




 「この事件は、ミステリーなんかじゃないんだ。しいて言うならただのホラー話だよ」

 伊波にはその言葉が、ただの法螺話に聞こえたのだった。


 これは心に傷を負った人々の物語だ。
 現実とは、かくも厳しい。前提条件を語るならばこれは、とある破壊的カルト集団の被害にあった二人の物語だ。それを契機に様々な事件に巻き込まれる未完の物語。

 ――人生なんて、常に未完成なのかも知れないのだけれど。
 友情、愛情、そんなモノ。嗚呼、どこにだって転がっているはずなのに、忘却していく、追憶していく、そんな物語。

 二人の名探偵と、その友人の物語は、きっと透明で、けれど何よりも粘着質な泥沼に絡め取られて汚れていく。
 人間の生死など、そんなものなのかも知れない。

 ただの人の生涯を、眺めたい時に。そう言った時に、人間観察がてら読んで欲しい。
 人間観察など滑稽だと知ってはいたとしても。
 人は、自分自身のことすら分からないのだから。