風紀委員長の激情
――心の痛みが、限界だった。
多分あの、『パリン』と音がした、浮気現場を見た瞬間から、胸がどんどん苦しくなっていったのだと珠白は思っている。
「五泰良、別れよう」
五泰良の部屋に久しぶりに出向いた珠白は、エントランスの扉がしまった直後に、本題を切り出した。五泰良を見ているのも辛いからだ。すると振り返った五泰良が一瞬だけ驚いた顔をしてから、顎を持ち上げて不意に言った。
「じゃあ、最後に抱かせろ」
まぁ……最後に一度くらいはいいか、どうせ短時間で終わるし、と、考えて、珠白は頷いた。
「まぁ、一回くらいいいだろう」
「ぁ……ぁァ……っ、う、ぁあ!! あっ!!」
両手で押さえているのに、声が止まらない。舐められつくした全身が鋭敏に変わっている。初めてここまで存在を主張したというような朱い乳首、全身に散らばったキスマーク、今は足首をもたれ、親指をしゃぶられている。
「や、やだっ」
足の指と指の合間をねっとりと舐められる。それから踝に口づけられてから足をおろされ、また反転させられる。膝を折ってベッドに伏せた珠白の後孔のごく浅い位置を、人差し指の尖端で、浅く弱く五泰良が刺激する。ローションでトロトロになった中が、さらなる刺激を求めて収縮するのに、本当に浅い位置ばかりで抜き差しし、前立腺にすら触れない。触れないのは陰茎も同じで、焦らされ反応している珠白の尖端からは先走りの液が零れているのに、そこには五泰良は触れない。太股の付け根に触れるのがせいぜいだ。
「あ、ぁっ、ああ……」
その時、やっと人差し指が根元まで入ってきた。クチュクチュと音を立てて、尖端を少し折り曲げ、五泰良が後孔を解し始める。
――それから二時間。
「うああああああああああああああ、やぁああああ」
もどかしすぎて、珠白は泣き叫んでいた。全身が熱い。こんな愛撫は知らなかった。もう体がドロドロに蕩けそうで、呼吸が熱くなり、何も考えられない。
「どうされたい?」
「挿れてくれっ、あ、お願いだからぁァ」
「――お前から、そう言われたのは初めてだな」
そう言うと、巨大で太く長い剛直を、ぐっと会長が挿入した。
「ああっ」
いつもと違い、すんなりと挿いってきた陰茎がぐぐっと内壁を擦り、前立腺を刺激するように進んで、動きを止めた。その衝撃で、珠白は放っていた。はぁはぁと肩で息をしている。
「ところてんか。そんなに気持ちがいいのか?」
「あ……っ」
その言葉に恥ずかしくなって、真っ赤になって目を伏せ、珠白が顔を背ける。
「俺はまだだからな?」
「っ、ああ。満足するようにすればいい」
珠白は、最後なのだから、五泰良にも気持ちよくなって欲しいと考えていた。寧ろ五泰良が満足すればそれでいいと思っていた。だからこんな風に抱かれるのは予想外すぎた。
「そうか」
五泰良は静かに頷いた。そしてさらに奥まで陰茎を進める。
「っ、ひ!」
そんなに奥深くまで、これまで暴かれたことはない。
「あ、やぁ、深い、ま、待て」
「待たん。今日が最後なんだろ?」
「あ、あ、ああああああ!」
ズクンっと、さらに奥――結腸を五泰良が突き上げた。その瞬間、珠白の頭が真っ白に染まった。
「あ」
また、ズクンっと。そこを貫かれ、目を見開き、それから髪を振り乱して珠白が泣く。
「深い、あ、そんな奥無理だ、や、動かないでくれ、お願いだから、無理だ!」
「いつも我慢してたんだよ、全部挿れんのは」
「あ、あ、ああ」
びっしりと体が汗ばみ、中から未知の感覚がせり上がってくるのが分かる。
ギュッと珠白が目を伏せる。内部が収縮する。トロトロのまま、脈動する。
「イけよ、中だけで」
「ンあ――!!」
初めてドライで果てた珠白は、ビクンとしてからベッドに沈んだ。
するとその背を押しつぶすようにして、深く貫いたまま五泰良が体重をかける。
珠白の耳の後ろを舐め、肩口に噛みつく。それから肌をペロペロと舐めた。
「俺様は、まだイってない。つまり、最後の一回は、まだ終わりじゃねーからな」
この日、珠白は未知の快楽をたたき込まれ、気づくと意識を手放していた。