会長による分からセ
――寝入っている珠白を見ながら、五泰良は無表情になっていた。
危うく、折角付き合えた珠白を失いかけたからだ。
五泰良は珠白に恋をして、もう長い。
実は珠白より先に、五泰良の方が惚れていた。
「絶対に逃さん。別れるなんて許さない」
寝入っている珠白を見ながら、ぼそりと呟く。
珠白は感情が見えにくい。いつも冷静沈着な風紀委員長の顔をしていて、表情を変えない。だから自分を好きだなんて全く気づかなかったから、両思いだと知った時は舞い上がりそうになったが、それを知られたくなくて平静を装った。珠白が欲しくて欲しくてたまらなかったから、その日のうちに抱いて、既成事実を手に入れた。
だというのに、付き合ってから、珠白からの好意はほとんど見えなかった。
しかも自分といてもニコリとも笑わないのに、見ていると学内では、明らかに珠白に好意がある生徒に向かって珍しい笑みを返してやったりしていた。それも不特定多数に。イライラが募った。本当は嫌われている可能性を、五泰良こそ感じていた。
極めつけは、浮気現場を目撃された時の対応と、その後の一言だ。
五泰良なりに焦ってかけつけたのだが、なんとも思っていないというような対応をされた。正直、心が折れそうになった。
その上、唐突に別れを切り出されたのだ。
怒りもしない。だが最後だというから、自分がやりたかったように抱いてやろうと、それを実行したら、結果己が見たかった珠白が見られた。勿論最後になどするつもりは無かったのだが。
「ん……」
珠白が目を開けた。それから気怠そうな眼差しで、五泰良を見た。
目を合わせて五泰良が微笑すると、珠白もまた口元を綻ばせた。
五泰良が見たかった笑顔だ。
「珠白」
「ん?」
「――俺様はまだ足りない」
「!」
「好きなようにしていいんだろう? 自分本位で悪ぃがな」
そのまま五泰良は寝台に戻って、再び珠白を押し倒した。
「えっ、も、もう出来るわけが――んぅ」
荒々しく唇を奪ってから、手つきは裏腹に優しく、珠白を愛撫していく。
その甘さと焦れったさに、珠白が泣き叫んだのは二時間後だ。
「やぁああ、も、もう、やだ、頼んでるだろ、挿れてくれっぇ」
「おう」
こうして挿入してから、ニヤッと五泰良は笑った。
「お前には、じっくり分からせてやらねぇとな」
「わ、わかったっ、わかったから……も、もう分かっ――んああああああああ」
この日、珠白は何度も愛の言葉を聞きながら、果てさせられ、五泰良の愛の深さを知るのだった。