お前騙したな!?







「――ところで、五泰良。俺達は、付き合ってもう三ヶ月だな」

 ベッドの下に座り、ベッドに背を預け、雑誌を読みながら珠白が言った。
 その隣にいる五泰良が、ビクっとした。

「お、おう……」
「寝ないのか?」
「っ」

 なんでもない事のように珠白が言う。
 息を呑んだ五泰良は、真っ赤になって震えた。

「お、俺様がどれだけ我慢してやってると……」
「そうだったのか? 上か下か?」
「――へ?」

 上以外考えた事が無かった五泰良が目を見開く。
 それを見て、珠白は純粋に疑問に思い首を傾げる。

「お前は俺に抱かれるのを待っていたのか? と、聞いているんだ。我慢していたのか? 悪かったな。気づかなかった」
「ち、違っ」
「いつでも抱いてやるが?」

 そういうとパタンと雑誌を閉じて、珠白が五泰良に向き直った。

「ばっ、馬鹿野郎! 俺様が上だ!」
「俺も上がいい」
「なっ」
「下は痛そうだからな」
「おい。俺には痛い思いをさせてもいいって事か?」
「俺は過去、抱いた相手に痛がられたことは一度も無い」
「はぁ!? お前、ヤってたのかよ!?」
「ん? まぁ適度にな」

 さらりと答えた珠白に、嫉妬心もあったが――それよりも問題は、上下である。

「五泰良、素直に俺に抱かれろ」
「巫山戯んな」
「巫山戯ていない」
「俺様は絶対上だ!」
「何故?」
「そ、それは――……」

 そこで三十秒間、五泰良は頭をフル回転させた。

「……――俺が童貞だからだ! お前に初めてを捧げたい! 筆卸をしてくれ!」
「は?」

 珠白が唖然とした顔をした。

「頼む!」

 そう言って、五泰良は土下座をした。
 天上天下唯我独尊の俺様何様バ会長の、あの五泰良の土下座だ。
 珠白は目を見開き、呆然としながら、信じられない気持ちで冷や汗をかいた。

「……そ、そうか。わかった……そこまでいうのなら」

 頷き、困惑した後、珠白は自分でネクタイを解き、ジャケットを脱ぎ捨てた。そして立ち上がり、ポツポツとシャツのボタンを外して寝台に上がる。

「好きにしろ」
「――ああ、好きにさせてもらう」

 そう言って珠白の予想よりずっと早く、五泰良がのしかかってきた。

「んぅっ」

 濃厚なキスが降ってくる。舌で舌を絡め取られ、口腔を嬲られる内、キスがあんまりにも巧いため、キスは経験があったのかとぼんやり考える。続いて唇に右乳首を挟まれてチロチロと舐められ、吸われ、ゾクリとして、陰茎が反応したのに気づいた時、ゆっくりとまさにそこを撫でられて、なんだかおかしいと珠白は考えた。

「っぁ……」

 その後、下衣を脱がせられた頃、童貞だからきっと下手くそなんだろうと思っていた珠白は、愕然とした。

「ぁ、ぁ、ぁ」

 あんまりにも巧みに内部を解され、トロトロに蕩かされてしまったからだ。
 そして挿入され、確信に変わって、思わずキッと五泰良を睨む。

「初めてなんて嘘だろうが、このバカ! あああああ! 待ってくれ、やぁあ、うああ」
「悪いな。どうしても俺様は上が良くてな。それに、『お前』とは初めてだしな」
「巫山戯るな!! ぁあ!! あ――!! ン――!!」

 その日散々珠白は、五泰良に泣かせられた。