続・勃たない、どうしよう。






 悩み抜いて三日。

 珠白はついに、前立腺マッサージを試す決意を固めた。
 だが、自分の部屋でやったら、記憶に残りそうで嫌だったので、誰も居なくなり無人になった、風紀委員会室のソファで試す事にした。ここならば、日々雑多に人が入るので、印象も薄れるだろうと考えた結果だ。

 ベルトを外して下衣を脱ぐ。上はそのまま――だと、苦しいので、ブレザーのボタンを外し、ネクタイも少し緩めた。

 そしてローションを指につけ、ちょっと人差し指の尖端を、ソファの上に四つん這いになって入れてみる。異物感はあるが、痛みは無い。それにほっと息を吐きながら、すぐに指を引き抜いた。それから虚ろな目で、マッサージ器具を見てから、それを手に取り、そちらにローションをまぶす。

 それを入れてみた。

「……」

 異物感がある。

「……うーん」

 だが別に陰茎が反応する気配は無い。効果が無いのだろうかと、やっぱりやらなきゃよかったと、そう落胆しかかった時である。

「珠白! いるって聞いてるから、来てやっ――……!?」

 扉がバーンと音を立てて開き、五泰良が入ってきた。彼は、先日、摘発時に何故か悲しそうな顔をしていた珠白が気になり、悩みでもあるのだろうかと慮って見に来たのである。その結果、下半身を露出させ、自分で自分の孔に玩具をぶちこんで、アナニー中らしい風紀委員長様を見てしまったと思った。誤解である。

「! 五泰良……」
「へぇ。風紀委員長様は、随分といいご趣味をお持ち見てぇだなァ」
「……」

 珠白は、遠い目をした。全然違う。寧ろそうなれば勃起するのなら、喜んでこれを趣味にするという心境だった。

「なんなら、手伝ってやろうか? ん?」

 ニヤニヤしながら五泰良が笑う。正直、宿敵の秘密を見たという気分で、テンションが上がっていた。これをネタに虐めてやろうと思っていた。

「ああ! 頼む!」

 だが、威勢良くまさかの返事が返ってきて、五泰良はポカーンとした。

「――あ? ……え?」
「頼む。聞いてくれ、実は俺は……EDみたいなんだ……勃起しないんだ……」
「は?」
「だからこうして、なんとか勃たないかとチャレンジしてみたんだが、全く勃たない……もうどうしていいのか分からない」

 沈痛な面持ちで悲しそうに語る珠白の瞳に嘘はない。
 なにせ、事実である。
 さすがにこの告白には、いくら五泰良といえども、笑うような真似はできなかった。ダラダラと汗をかきながら、しばし珠白を見てから、腕を組んで、一人二度、真面目な顔で五泰良が頷く。

「そうか、分かった。そういう事なら、真面目に俺様が手を貸してやる」
「本当か? お前にも良いところがあったんだな」
「どういう意味だ!? あ!? 人が折角心配してやってんのに!」
「悪い、頼む」

 改めて珠白が頭を下げたので、気を取り直して五泰良は、珠白のもとへと歩みよった。

 こうして二人の挑戦が始まった。