続々・勃たない、どうしよう。








「どうだ……?」

 五泰良が前立腺マッサージ用の器具を、ぐっと押しこんだ。

「待っ、ちょ、乱暴にするな、いきなり!」

 珠白は焦った。それまでビクビクしていたから、ゆっくり入れて、優しく押し上げていたためである。

「なんだよ、あ?」

 その言葉にイラッとして、ゴリゴリと五泰良が動かす。するとビクンと珠白の体が揺れた。ジンっと甘い感覚がしたからである。

「ぁ……いいかもしれない……? もしかしたら、勃つかも……? 五泰良、その調子で頼む。任せる」
「それは、好いってことか? あ?」
「んー……そうとは言いがたいんだが、前よりは刺激を体で感じている」
「へぇ。ほれ、どうだ?」
「っッ」

 またグリっと動かされると、陰茎の方に熱が集中していく感じがした。だが、まだ勃たない。悲しくなって、珠白は涙ぐんで俯いた。それから顔を上げて、首だけで五泰良に振り返る。その涙に濡れた瞳が艶っぽく見えて、気づくと五泰良は唾液を嚥下していた。

「……え、あ……――っと、この機械的な器具が悪ぃんじゃねぇか?」
「へ? じゃあどうすれば?」

 珠白がしょんぼりしている。それを見て、慌てて五泰良が言葉を続ける。

「俺様が直接してやる」
「! 分かった」

 珠白は、善意からの言葉だと疑わなかった。だがこの時既に、五泰良の頭の中は、欲望一色だった。既に珠白の中が解れているのは明らかだったし、一瞬で五泰良も勃起していた。

「前、向いてろ」
「ああ、分かった」

 素直に珠白が四つん這いのまま前を抜いたので、音を極力立てないようにしながらベルトを引き抜き、陰茎を出した五泰良は、その尖端を、無言で問答無用とばかりに、珠白の後孔へと突き立てた。

「は? え? は?」

 最初、珠白は何が起きているのか分からなかった。

「うあああ」

 だが直後、自分が貫かれていると理解した。

「ま、待て」
「あ? 俺のテクなら絶対勃つだろ」

 適当に五泰良が言う。

「ここは風紀委員会室だ! これでは俺まで不純同性交友で捕まってしまう! 自分を捕まえて、自分で始末書を書かなければならなくなるだろ!」
「……アナニーしてた奴に言われても」
「違う! 俺は真剣に――……ふぁ……ぁア」
「まぁそれは分かる。悪い……って、お前、ほら、ちゃんと勃ってる」
「!」
「もっとよくしてやるよ」
「ああっ……あんン――っ、ぁ……ああ!」

 その後緩急をつけて巧みに貫かれ、最初は浅いところを、その後グリと前立腺を擦られてからより深いところを暴かれる内、珠白は完全に勃起したのだが、そんな事を考えている余裕が無いくらい気持ちよくさせられてしまい、ポロポロと泣いた。

「あ、あ、ああっ、ン――!!」

 そして完全に勃起している陰茎を手で扱かれた瞬間射精した。同時に内部に飛び散る五泰良の白液の感触を覚えた。


 ――事後。

「勃ったな」
「ああ。ありがとう五泰良……しかし、お前にツっこまれないと勃たないのでは、今後SEXをする際、お前に貫かれた状態で無ければ、俺は突っ込めない。どうすれば……」
「俺にだけ抱かれてればいいだろ!」
「へ? そんな恋人でも無いのに」
「恋人にしてやる! ……ん?」

 勢いで口走った五泰良は、本当にこれでいいのか悩んだが、快楽に涙していた珠白が可愛かったこと――及び、そもそも自分はずっと悲しそうな珠白のことが気になってここへ来たくらい心が疼いていたのだから、元々好きだったのではないのかと、恋心を自覚した。

「……」

 そう自覚したら、五泰良の行動は早かった。

「これからもずっと勃つように、手伝ってやる。そうしたら、いつか一人でも勃起するかもしれないだろ? な? それまで俺の恋人って事で、俺にだけ抱かれてればいいんだ」
「そういうものか?」

 まだ珠白は分かっていない様子だが、口車で五泰良は丸め込んだ。

 その後、珠白の心まで陥落させるのだが、それは別のお話だ。