嘲笑
こんな事は、初めての頃以来だと、珠白は考えた。
ローションをたっぷりとつけられて、内部を解されてから挿入された。
両手をドアにつき、ぬめる手では陰茎を扱かれながら、実におだやかに昂められている。このようにされると、純粋に気持ちがいいと思ってしまい、悲しくなる。
『理事長はまだか?』
その時だった。
扉の外から声がした。珠白は目を見開く。
確かに五泰良の声がしたからだ。
「ああ、待ち合わせをしていてね」
ここは理事長室の隣接の応接間だ。ビクリとした珠白は、唇を引き結ぶ。
「っ」
だが今日に限って、理事長は珠白の快感を高めるように動く。
「ッ」
「声、出さないのかな? まぁ、出せば五泰良会長に聞こえてしまうがね」
「!」
笑うように理事長が言う。珠白は怯えた。腰を掴まれ、その間もゆっくりと抽送される。
「ぁ……っ」
思わず声を零しかけて、慌てて口を閉じる。
「そういえば、中庭では、随分と親しく話していたようだね」
「!」
「こんな姿、五泰良くんが見たらどう思うかな? 呼んでみようか?」
「やめ――」
「君には拒否権なんかないと教えたはずけど? まぁ、声を堪えられたら呼ばないであげるよ」
その日、理事長は非常に緩慢に優しく動き、焦らしながら穏やかに風紀委員長の体を高めていった。声を必死で堪え、でも快楽に逆らえなくて、どうしていいのか分からなくなった頃。
「ひっ!!」
ぐりっと最奥を抉られて、思わず珠白は声を上げた。
『ん? なんだ今の?』
『さぁ?』
隣室から不思議そうな五泰良と、とぼけている秘書の声がした。
慌てて口を閉じたのだが、今度は底ばかりを貫かれ、腰を揺さぶられ、必死で頭を振る。体を震わせてから、力が抜けてしまい、ガクンと珠白は床に頽れた。すると陰茎を引き抜いた理事長が後ろから珠白を抱きしめて、その首筋をねっとりと舐める。
「君には、恋をする権利もない。哀れだね」
耳元で囁かれた時、脳裏に五泰良の顔が浮かび、苦しくなって息が詰まった。
けれど。
珠白を助けてくれる者は、この部屋には誰もいなかった。