IF-T・卒業
「――しかし、残念ながら、君には買い手がつかなくてね」
それを聞いて、珠白は一縷の望みを抱いた。
「それ、は……解放し――」
「そんなわけがないだろう。この学園の奴隷が売れ残るなんて恥だ。私が自腹で君を買った。勿論、君を手放したくないというような理由では無い」
「っ」
また、これまで通りの日々が続くのかと、珠白は暗い目をした。
「斑目」
「はい」
理事長の言葉に、秘書が前に出る。その手にはメスがある。
「斑目は医師免許も持っていてね」
「な、なにを……」
メスの光里に呆然とした時には、右足に痛みが走っていた。
「うあぁ、っ」
「足の腱を切った。これでもう君は、走れない。歩くのも困難だ。ま、ちょっとくらいは歩けるだろうが、何処にも逃げることは出来ない。尤も、常に首輪と鎖で繋いでは奥がね」
斑目が縫合する前で、理事長がそばの机の上にあった注射器を持って歩みよってきた。痛みに涙していた目を、珠白が向ける。
「それ、は……」
「これはね、非常に強力な媚薬だ」
「!」
呆れたように笑うと、理事長はそれを珠白の首筋に注射した。
「ああああああああ」
すると灼熱のような快楽に襲われ、珠白は射精していた。直後意識を失った。
次に気づいたのは、また首筋に痛みを感じた時だった。足首に包帯が巻かれていることにも気がついた。だが、また熱が襲ってきたから絶叫した。
その繰り返しだった。気づくと注射をされ、気づくと放っていた。
結果。
「あ、は……早く、注射を……っ」
「まだ時間では無いよ」
「早く!! 早く、っ、うあああ!!」
いつしか注射を求めて泣き叫ぶように変わっていた。それが暫く続いてから、次第にそれすらも考えられなくなっていった。
「言ってご覧、抱いてくれって。そうすれば注射をしてあげるよ」
理事長が、そう言い始めたのがいつなのかは分からない。
「抱いて……抱いてくれ……」
「そうだ」
珠白がそう言うと、理事長は注射を与えた。連続で何本も。
「ああああああああああああああああああああああああ」
射精を繰り返し、熱に侵され、薬が無いと体が辛く変わった。
「抱いてくれ……抱いて……」
その言葉と嬌声以外を、珠白は発しなくなった。
唇の端からは、唾液がたらたらと零れている。
そんなある日だった。
「んだよ理事長。見せてぇものって――っ!!」
「やぁ、五泰良会長。君に卒業祝いだ」
理事長が振り返り、入ってきて目を見開いている五泰良に声をかける。
「た、珠白……ど、どういう事だ……?」
「うん? 薬漬けにしたのさ。最高の性玩具の完成だ。あげるから、抱いてみたら? 君は珠白くんの事を気に入っているようだったけれど」
それを聞くと、五泰良がはぁっと溜息をついた。
「誰がいるか、こんなゴミ」