IF・純白
生徒会室から窓の外を見たのは、珠白が見回りをする時間だったからだ。
五泰良は白い雲が低い本日も、珠白の姿を見つけた。コート姿で、ぼんやりと空を見上げている珠白。その瞳は暗い。まるで自死でもしそうなほど脆く見える。
五泰良は、珠白が好きだ。
珠白は自分のものだと考えている。珠白は珠白自身のものですらなく、五泰良のものだという考えだ。だからもし、珠白が自殺するというのならば、先にこの手で殺して、永遠に自分のものにしたいと思う程度には好きだった。
上を見上げているくせに、窓から見ている自分に気づかない珠白にも苛立ったが、それよりも寒そうな出で立ちが気になって、五泰良は言った。
「ちょっと出てくる」
こうして校庭に出て、一言二言会話をしたら、非常に柔らかな笑顔で、辛そうに、そして泣きながら珠白が自分を見た。胸が締め付けられた。
去って行く珠白の背中を見ながら考える。
原因など、珠白にあんな風に寂しそうな顔をさせた原因など、一つしか思い当たらない。この学園が行っている奨学生への特殊制度――実体は、売買だ。
「……俺は、自分のものを勝手に甚振られるのは、好みじゃぁない」
ポツリと呟いた五泰良の目は、透き通っていた。
既に、敵は決まっていた。理事長だ。
「ああ、どうしてやろうかな。五泰良の人間は、絶対に敵を許さない」