偶然









「失礼致します」

 初めての転職。
 声をかけてきたのは先方だが、結果は面接次第だ。緊張しないわけではなくて、珠白は落ち着こうと心がけながら扉を閉めて、頭を下げた。

「久しぶりだなァ」
「――!」

 見ると正面の席には、ニヤリと笑っている五泰良の姿があった。
 学生時代、非常に険悪だった仲だ。冷や汗が浮かんでくる。
 これは、お祈り確実だ、と、珠白は虚ろな目をしつつ、座ろうとした。

「立ってていいぞ。面接を始める」
「……はい」

 目の前に椅子があるのに嫌がらせかと思った。するとニヤニヤ笑ってから、五泰良が言った。

「脱げ」
「え?」

 コートなら既に脱いでいる。首を傾げると、小馬鹿にするように五泰良が言った。

「ワイシャツはボタンだけ外せ。他は全部だ」
「な」

 言われていることに気がついて、珠白は驚愕して目を見開く。だが、面接なのだしと、狼狽えながら俯く。病気の弟がいる。仕事を失うわけにはいかない。そしてなるべく給料が高いところが望ましい。その迷いで、ジャケットのボタンを開き、シャツの一番上のボタンに手をかけたのだが、指が震えた。

「――そんな事は出来ない」

 顔を上げて、珠白は五泰良を睨み付けた。すると面白そうな顔に変わった五泰良が、物珍しそうにしげしげと珠白を見る。

「帰る」

 珠白はそう言ってボタンを閉め直し、ドアへと振り返った。
 ――しかし。

「!?」
「外から鍵をかけさせた。バカか、お前は」
「な」
「はなから、俺がお前を引き抜かせたんだよ、こうやって再会するためにな」
「ど、どういう……?」
「物わかりの悪い風紀委員長様だな。ドアに手をつけ」

 立ち上がって歩みよってきた五泰良が、強引に珠白のベルトを引き抜き、下衣をおろす。そしてポケットから取り出したボトルのキャップを、珠白の正面で開けた。するとあまい香りが広がる。

「俺はワクチンを飲んでる。それはな、非常に強い媚薬だ」

 五泰良がそういった直後、珠白の体が沸騰したように熱く変わった。
 気づくと勃起していて、射精していた。
 その後孔に、五泰良がぬめるゴムをかぶせた二本の指を挿入する。そして暫く解した後、陰茎を挿入した。その衝撃で、珠白は再び果てた。

「まだキツぃな。ま、これからたっぷり開発してやるよ。俺の社員になったんだからなァ。職務上の、教育だ。面接は、合格だ。よかったな」

 その後。
 毎日出勤し、ありとあらゆるる快楽をたたき込まれ、退勤するという日々が幕を開けた珠白だった。