【∞】another story
僕は――α(はじまり)にして、Ω(おわり)である。
草薙本家と言う、α中のαの家柄に生まれながら、Ωだった僕。
確かに色々と終っている。
優れた狼のリーダーの家に、ミジンコが生れたようなものだ。
比較対象のβ群ですらなく、種が違う。
しかし、しかしだ。
「――っていう夢を見たんだ」
僕が銃に倒れた夢を見たと言って、朗らかに笑うミナミに、僕は思わず笑みをひきつらせた。
「なんかそれ、僕が悲惨じゃない?」
「どうだろ。マナセとソウバ様に愛されてたみたいだけど。二人とも、ハルイの事、監禁して手元に置こうとしてたよ」
「そんな見えにくい愛情いらないから」
僕は辟易した。そんな現実まっぴらだ。
現実と夢は違う。
確かに、ソウバはαで僕の従兄だが、仲良くやっている。番でもない。
マナセはミナミの兄でβだが、当然僕らの間にあるのは、恋愛感情ではなく友情だ。
――ちなみに、僕の番は、ヨルノだ。
人格者を絵にかいたような性格で、僕に対してすごく優しい。僕が嫌だと言えば止めてくれる……止めてしまう……。
本当に完璧な人格者で(少なくとも僕はそう思っている)、性格を含めてαという感じだ。
――ただSEXでも、僕は嫌だと言えば止める。嫌がることはしないので……無自覚放置プレイになりがちだ……!
ヨルノに悪意が無いのは分かっているし、それが辛い。
例えば、気持ち良すぎて「イヤ」――ピタリと止まる手。
発情期は来なくとも、”番”のヨルノの手の中で、欲情しきっている時に、手を止められるのは辛い。
ただ焦らされているだけにしか感じられない。
って、昼間から何を考えているんだか。
「それより、病弱なミナミの想像がつかない」
「えー、なんで?」
「風邪を引いたところすら見たことないし。いや待って。まずマナセがそこまでブラコンだとは思わないし、ソウバが僕より優れてないとか、色々おかしいから」
「だって夢だし」
そう、夢――……
……夢。
血の匂いがする。
どちらが現実で?
That’s all .