【番外】その愛の光は星と同じ







 俺は鴻と付き合っている。

 最近では、ほぼ一緒に暮らしているようなもので、行先がどちらの部屋になるかは兎も角、大体の夜を共にしている。

 周囲も、俺と鴻が付き合っている事を、知っている様子だ。時折、まだ一緒に暮らさないのかと聞かれる事がある。例えば、部下の晴宮などから。その度に、いちいち照れて言葉を失う俺がいる。そんな俺を、鴻はいつも楽しそうに見守っているだけだ。

「助けろよ!」

 この日も晴宮に揶揄されている俺を笑ってみているだけだった鴻に、俺は二人きりになってから抗議した。しかし鴻は、どこ吹く風だ。

「ねぇ、葵。そんな事よりさ」
「そんな事って、俺は――……っ、な、なんだよ?」

 不意にその時、鴻が俺の頬に触れた。ビクリとして、俺は目を丸くする。
 それから思わず、顔を背けた。

「……まだ、寿命延長技術による処置を受ける気はないのか?」
「無いよ」
「でも、それじゃあ――」
「ねぇ、葵。先の不安ばっかり見ていないでさ、『今』を見てよ。僕がそばにいる、今を」
「……ちゃんと、俺はお前を見てるぞ?」
「じゃあ今、僕が何を考えているか分かる?」
「?」
「葵が欲しい」

 率直に言われて、俺は体を硬くした。そんなのは、俺だって同じ気持ちだ。
 その後は、二人で俺のマンションへと帰った。

「ん」

 本日帰宅した俺の部屋で、シャワーを浴びて出ると、すぐに鴻に、寝台へと引っ張られた。正面から抱きしめるようにしてキスをされる。

「葵、舌を出して」
「う、うん……ぁ……」

 言われた通りにすると、甘く舌を噛まれた。それだけで、もう鴻に開かれっぱなしの俺の体は、熱を帯びる。腰の感覚が無くなりはじめ、思考がフワフワする。

「ぁ……っ……ン」

 俺の口から、鼻を抜けるような声が出る。俺の右胸の突起を摘まみながら、鴻がキスを繰り返す。ジンジンと、体が疼き始める。左手では、左側の乳輪をなぞられ、乳首を捏ねられた。

「ひ、ぁ……」
「だいぶ敏感になったね」
「う、うう……ぁァ……」

 鴻が俺の右の乳頭に吸い付いた。ゾクゾクして、俺は背を撓らせる。両胸を愛撫される内に、俺の陰茎は反応を見せた。それに気づいた様子で、鴻が意地悪く笑う。

「勃ってるよ」
「っ、早く……挿れ……」

 涙ぐみながら俺が頼むと、鴻が口角を持ち上げる。そして細い目に獰猛な色を宿した。

「僕が欲しい?」
「うん」
「素直。じゃあ、自分で解して、自分で乗ってごらん?」
「う……ぁ、あ……わ、分かっ……ふ、っ」

 俺は片手の指を自分の後孔へと挿入した。そして抜き差ししながら、熱い吐息をつく。膝立ちで解しながら、俺はチラリと鴻を見た。早く欲しい。早く、鴻を感じたい。鴻がいなくなったら、俺はきっと耐えられない。

「あ、ああ……っ」

 指を吹き抜き、俺が上に跨ると、鴻が、俺の腰を支えた。

「まだキツいんじゃない?」
「でも……っ……もう我慢できない……ぁア」
「僕の事が好き?」
「好きだ。愛してる」

 ゆっくりと腰を下ろしながら、俺はめり込んでくるような衝撃に耐える。いつもよりも奥深くまで、鴻の陰茎を感じてしまう。必死で呼吸をしながら、なんとか根元までを受け入れた時、俺は全身から力が抜けてしまい、ガクガクと震えながら、ギュッと目を閉じて、鴻の胸板に額を押し付けた。

「あ、ああ、あ……だ、ダメだ、や、う、ン。うう……あ、あ、気持ち良い、でも、動けない。力はいらない……あ、ああ……」

 自然と結腸を押し上げられる形になり、俺の頭が白く染まる。もう既に、俺の陰茎はガチガチだ。ダラダラと先走りの液が零れている。繋がっている個所が兎に角熱くて、汗ばんだ体に髪の毛が張りついてくる。

「やぁ、乳首今は止めてくれ、あああああ!」

 不意に鴻に胸の突起を吸われ、左側は摘ままれ、俺は泣き叫びながら果てた。するとガクンと更に体から力が抜けてしまい、より奥深くまで貫かれる形になる。

「あ、あああああ!」

 しかもそれを見計らっていたかのように、鴻が動き始めた。快楽が強すぎる。ボロボロと俺は泣いた。

「ん――っ、うあ、あ……あァ!」

 下から何度も突き上げられて、俺は思わず鴻の体にしがみつく。俺の腰をギュッと強く掴み、鴻は笑っている。

「葵、大丈夫だよ」
「あ、あ、あ」
「僕の事、いっぱい刻み付けてあげるからね。忘れられないように」
「ん、ぁ!」

 一際強く穿たれた瞬間、俺は今度は中だけで絶頂に達し、射精してもいないのに、足の指先までをも快楽に飲み込まれた。思わず指先を丸めて快楽の奔流に耐えるが、その漣のように響いてくる快楽は、いっこうに止まる気配がない。

「ア、ァ、あああ! あ!」

 直後、追い打ちをかけるように更に強く突き上げられて、俺は内部に鴻が放った白液の感触を感じたのとほぼ同時に、意識を手放した。そして、最後に聞いた気がした。

「一生、愛し続けるよ。例えそこに存在しなくても光が届く限り、星があるように見えるのと同じ事だ。それが、僕の愛だよ」




     【END】