【IF】もし在沼が史上最悪の俺様だったら★(夢オチ)




唐突にサロン奥の執務室に促され、俺は正直機嫌が悪い。もちろんそんな表情を表に出すわけにはいかないから、俺は菩薩を召喚済だ。
奥のソファに堂々と座った在沼はといえば、ガチャガチャとベルトを外している。
今度はこの俺様は一体何をなさる気だ?
嫌な予感しかしない。ここのところは、有栖川という生徒とうまくいっているらしくて、俺は至極平穏な生活を送っていたというのに……はぁ、ため息が漏れてしまう。

「咥えろ」

そして事も無げに言われて、俺は目を見開いた。

「瑛がはじめてじゃあんまりだからな。筆卸しはお前でいいぞ誉」
「何言って……」
「聞こえなかったのか。さっさと俺の物を口に咥えろ。お前相手じゃそうでもされなきゃ立つ気がしない」

理不尽な話である。唇を噛みそうになったが、下ろしたままだった手で拳を握り耐えた。
在沼を怒らせれば、高屋敷家は潰されてしまう。
静かに歩み寄り、俺は膝を床に就いた。そして座っている在沼の陰茎をまじまじと見る。こんなところまでいちいち端正で嫌になった。俺は本当にこいつのことが大嫌いなんだからな。

「遅い」

そういうと、在沼が俺の後頭部に手を置き、無理やり腹部に顔を近づけさせた。
慌てて俺は、在沼の陰茎を口に含む。
むせ返る雄の匂いに息苦しくなりながらも、何度か必死で唇を往復させる。

「下手だな」

そんなことを言われても当たり前だ! 誰が男のモノなんか口でするか! いやいましているんだけれどもな。これはあくまでも、仕方がなくなんだからな。俺は涙目で思わず在沼を睨んだ。すると髪の毛を掴まれて、ぐっと喉の奥まで腰をすすめられた。息苦しくて、吐きそうになる。しかしガンガンと頭を動かされ、陰茎を突き立てられて、俺は息をすることだけで精一杯になり、ただ耐えようと必死で舌を這わせた。

「こんなものか……飲めよ」

喉の奥に暑いしぶきを感じたのはその時のことだった。何度も片手で息をしながら、喉の奥に打ち付けられたものを必死で飲み込む。苦いような酸っぱいような、美味しくない味がした。これで在沼は満足か? そう考えて俺は生理的に浮かんだ涙を拭きながら、顔を上げた。すると正面から目が合い、息をのむ間に、ソファの上に押し倒された。

「本番はローションてやつを使うらしいんだけどな、無いからな。舐めろ」
「っ」

在沼はそういうと、俺の口の中に指を三本押し込んできた。そして逃げ惑う俺の下を、指の腹で蹂躙しだした。奇妙な感覚と息苦しさに、視界がグラグラしだす。しばらくそれに耐えていると、片手で、自分の服が脱がされていることがわかった。ひんやりとした冬の寒風が、シャツの下へとはいってくる。

「!」

硬直したのは、口から指を引き抜かれてすぐのことだった。
在沼が俺の唾液で濡れた指のうちの一本を、俺の後孔につっこんできたのだ。

「あ、あ」

無理にそれが第二関節まで進み、引き抜かれると同時に、今度は勢いよく2本目もまた入ってきて、再びそれらは第二関節でとまった。目を見開きながら、周囲に散らばる衣服を掴む。ここまで来てやっと俺は自体を理解した。在沼は俺で童貞を捨てる気なのだ。

「や、やめ……――ん!!」

その時、指先を曲げられて、前立腺を刺激された。瞬間俺の背がしなり、ゾクゾクと見知らぬ快感がこみ上げてくる。その動きがいっとき止まり、俺の体からは力が抜けた。そこを見計らうかのように、三本目の指が入ってくる。今度はそれぞれをバラバラに動かされて暴かれていった。押し広げられる感覚がきつくて、僕は大声で泣いてしまいそうになった。だけど羞恥があってそれはできない。それに気づいて誰かがここに来て、こんな姿を見られてしまうのも嫌だった。

「いれるぞ」
「え、あ、ア――!!」

そして。
それまでの指とは全く異質な、熱の暴力に俺は貫かれた。ガクガクと体が震える。痛い、痛かった。途中からなにか滑り出したから、多分切れたのだと思う。しかし奥に勧められ、そして先ほど見つけられてしまった感じる場所を擦り上げられたとき、再び俺の体ははねた。

「ああああああ」
「気持ちいいのか?」
「あ、は、ああ」

痛みと快楽が同時に襲って来るから、一概に気持ちがいいとは言えない。
けれど内部が絡みついていくのが自分でもわかる。俺は在沼の存在感が嫌いじゃなかった。
朦朧とした思考でそんなことを考えていると、在沼が俺の前へと手を伸ばし、陰茎をなでた。同時に腰を強く打ち付けられた。どちらの衝撃からなのかはわからなかったが、俺は果ててしまったのだった。




「――という夢を見たんだよね」
「それで誉の顔色はそんなに悪いのか」

階段に座った俺と和泉は、ボケっとそんな話をしていた。
本当、在沼は俺様だとは思うが、史上最悪ではなくて良かった。

「ま、あいつはそんなことしないだろ」
「うん。僕もマキくんのことを信じてるよ」

ふたりが座る階段の向こうの窓からは、まだ休み時間だというのに、在沼のクラスの体育風景がよく見えるのだった。