【8】どうしてこうなった。(★)




 いいや、良くないだろう。
 そう考えていたら、気づいたら上着を脱がされていた。ポツポツとシャツのボタンを外れた俺は、慌ててザイドの体を押し返す。

「とりあえず離せ!」
「立てるか? 寝台に行くぞ」
「行くわけがないだろう! 俺は帰る」
「帰さない」

 ザイドはそう言うと、俺を抱き上げた。体勢を崩しそうになった俺は、慌ててザイドの首に抱きつく。俺は鍛え上げているし上背もある方なのだが、ザイドの方が悔しい事に体格が良い。そのまま横に抱き上げられて、俺は寝台の上に下ろされた。

 ザイドが俺にのしかかってくる。

「最後に聞く。嫌か?」
「……それは、その……」

 端正な顔に見据えられて、俺は言葉を飲み込んだ。正直、嫌ではないような気もするのだ。もうどうにでもなれという心境でもあるのだが……。

「俺に抱かれたいと言え」
「率先してそう思ってるわけじゃないから、それは言えない」
「ほう。つまり消極的ではあるが、抱かれる事自体には問題がないんだな?」
「う……」

 俺が言葉に詰まっていると、ザイドが俺の右胸の突起を唇で挟んだ。そして舌先でチロチロと刺激する。湿った熱に、俺は一気に緊張した。もう一方の手で、俺の左の乳頭を弾きながら、ザイドが笑う。

「人生でこんなにも一人の相手が欲しいと思ったのは、初めてなんだ」
「お前そういうこと、姫にも言ったのか?」
「いいや?」
「でもアニス姫は、お前が優しかったって……」
「嫉妬か?」
「どうしてお前に嫉妬しなきゃならないんだ? 頭が湧いているのか?」
「随分と雰囲気をぶち壊す事ばかり言うんだな」
「ぁ……」

 ザイドが俺の陰茎を撫でた。それから俺の太ももを持ち上げると、陰茎を菊門にあてがってきた。解れている俺の内側へと、先端が挿ってくる。酷く熱くて、硬い。繋がっている箇所から蕩けてしまいそうになった。

「あ、あ……っ」
「もう一度だけ聞こう。嫌か?」
「……っ、ぁ……わ、分かったから。嫌じゃないから。もうどうにでもしてくれ」
「同意だな」
「ん――!」

 俺の言葉が終わった瞬間、ザイドが深々と貫いてきた。慌てて俺はザイドの体にしがみつく。体がドロドロになってしまいそうなほど熱い。これが、SEXか。

 最奥までゆっくりとザイドの陰茎が進んでくる。根元まで入り切るとザイドは一度動きを止めた。そして荒く吐息をすると、俺の肌に口づけた。ツキンとその箇所が疼く。その後より大きく太ももを持ち上げられ、抽挿が始まった。

「あ、あ、あ」

 次第にザイドの動きが激しくなっていく。肌と肌がぶつかる音に、俺は羞恥を覚えたが、次第にそんな事を考える余裕が無くなっていった。純粋に、気持ち良い。これでは、アニス姫を責める事は、決して出来ないだろう。かといって同意だったらしいのだし、ザイドを責めるのも違うだろう。やはり俺が悪かったのか……いいや、でも、俺は俺なりに頑張ったし――という思考も、すぐに快楽に絡め取られた。

「ん――っ、ぁ、っく……あああ!」

 ザイドは俺の中の感じる場所ばかりを突き上げてくる。すぐに俺の陰茎もそそり立ち、先走りの液を零し始めた。気持ち良さに全身を絡め取られていくと、次第に未知の感覚が怖くなってきて、俺は涙ぐんだ。

「あ、ハ……ん、ぅ……あ、あ、ああ」

 そのまま激しく突き上げられて、俺は放った。ほぼ同時に、ザイドもまた、俺の中で果てた。結合部分からだらりと白液が垂れていくのが分かる。

「……」

 俺はぐったりと寝台に体を預けた。
 俺の初体験……まさかアニス姫以外とだとは全く思っていなかったが……なんだか、あっけなかった。記憶に残っているのは快楽だけだ、と、ぼんやりとザイドを見る。するとニヤリと笑われた。

「うつ伏せになれ」
「――?」
「まだ足りん」
「へ?」

 その言葉に俺は目を見開いた。ザイドは香油の瓶からダラダラと中身を、彼自身の陰茎に垂らしている。唖然としていると、あっさりと反転させられた。

「!!」

 そのまま――硬度を取り戻したらしいザイドが再び押し入ってきた。

「え、嘘だろ、まだ――」
「ずっと我慢していたんだ。お前が欲しくて」
「そもそもそれが信じられないっていうか、どこで一目惚れしたんだよ俺に! 学園に入学してから、あの日まで接点ゼロだっただろうが! ああ!」

 思わず俺が叫ぶように言うと、喉でザイドが笑った。

「この国と帝国の共同魔獣討伐の式典で何度か見かけた。以来気になっていて、この国に留学を決意した」
「え、あ……ああ」

 グッと奥深くまで挿入される。先程までとは違った角度で感じる場所を突き上げられると、一気に俺の体が熱を孕んだ。

「あ、あ……ああ……ンん!」
「勿論、ロイルが入学してからは、ずっと遠くから観察もしていた。あんまりにもお前が姫に愛を囁く姿を見すぎて、嫉妬で気が狂いそうだった」
「そんなの俺は知らな――っ、ぁ……ああ! ア!」
「俺を好きになれ」

 俺の腰を掴むと、再び激しくザイドが動き始めた。
 この日俺は――深夜までザイドに体を貪られたのだった。気づいた時には気絶していて、目が覚めると、ザイドが魔術で俺の体を綺麗にしてくれた後だった。

 どうしてこうなった……。