【*】体の相性(★)



 ――本日は、六条彼方と会う、二度目の日だった。

 平日の日中、前回と同じホテルで待ち合わせをし、朝儀は一緒にエレベーターに乗った。だが、通された部屋は、前回とは別だった。

 そもそもこのような高級なホテルに入った経験が朝儀にはあまりない。
 だから少し緊張していると、彼方が微苦笑した。

「今日は、体の相性をもっと確かめたいんだ」
「――一回五十万に値するかどうか?」
「それもあるかな。ただ、どちらかといえば、朝儀さんにもっと気持ちよくなって欲しいんだ。俺は」

 彼方はそう言うと、部屋のテーブルの上を見た。
 何気なく視線を追いかけて、朝儀は息を飲んだ。

 様々な玩具が並んでいたからである。


 ――まず朝儀は、黒い革製の拘束具で全身を縛られた。

 そして袋の下から性器の上には丸い黒ひも状のリングで戒められた。両手は頭上で固定され、他にも紐で、腕や肩を縛られる。自由に動くことは出来ない。ツルツルとした縄の感触が、体に張り付いているようだった。きつくはない。

 朝儀は膝を折ってベッドの上に座っている。彼方がそうさせたのだ。

 そして彼方は朝儀の陰茎に、プラスティックで出来た振動するオナホをあてがった。白くて、大きなバイブの中が空洞になっているような代物だった。

「ひ、ア!!」

 強い振動がすぐに始まった。容赦なく彼方がスイッチを入れたのである。このように機械的に与えられる感触は初めてで、朝儀はすぐに達しそうになった。射精しそうな感覚に熱い息をはく。

 すると、それを見計らうように、続いて後ろに、ローションまみれの巨大なバイブを、彼方が押し込んだ。


 それなりに慣れている朝儀の体は、痛み無くそれをすんなりと受け入れた。だが、無機質感な刺激など初めてで、思わず目を見開いて震えた。直後そちらのスイッチも入れられ、バイブが振動を始める。早い振動だった。大きめのイボ付きの代物で、その内の一つが朝儀の前立腺をごりごりと、おしてくる。もうそれだけで気が狂いそうになった。求めていたものが、そこにはあった。

「いやああああああああああああっ! うあ、あああああああ!」

 前と後ろの両方から、規則的な刺激が襲いかかってきて、強制的に快楽を煽られる。

 きつく目を伏せた時、黒い布紐で目元を縛られた。何も見えなくなった時、さらにそれぞれの振動が早くなった。

「ああああああああああ」

 刺激に堪えられず、朝儀は叫ぶしかなかった。襲われた快感が激しすぎて何度も首を振る。何も見えないからなのか、全身が敏感になっている気がした。触覚だけが際だっているように感じるのだ。感じすぎて、体がドロドロに蕩けてしまう気がした。

「ン――、――ッ――! ひァ――!!」

 外と中への規則的で激しい刺激で、すぐに朝儀は果てそうになった。
 出したいと思う間すらなく、もう出てしまうと言う感覚に襲われたのだ。


「ひぅ、やぁ、止め、も、もう、出……出ます、出る、ああッ」
「気持ち良い?」
「うあああああああああ――――!」

 朝儀は彼方の言葉に答えることが出来ないまま、悲鳴を上げて精を放った。
 強すぎる快感に、頭がクラクラしていた。

「あン、あ、あ、あああああああ!」

 しかし前の動きも後ろの動きも止まらない。ただ静かに目隠しだけを外された。

「やっぱり、その艶っぽい目、見てる方がいいな」

 正面には楽しそうな顔でこちらを見ている彼方の姿があった。

「ん――――! うあ、うわ、わ、あ、いや――――! ひァ、ああ!!」

 気持ちが良すぎておかしくなりそうで、朝儀は悲鳴を上げた。



「イきまくりだな。思ったより慣れてる」

 彼方が、喉で笑った。オナホの中からは、たらたらと朝儀が出したものが垂れた。それを引き抜かれた時、朝儀はまた精を放った。

「中だけでもイける?」

 その時、バイブの動きが強められた。

「ああああああ! うあ――――! ア!」

 朝儀は、すぐにまた中の刺激で強制的に勃起した。そして熱い体は通常通りで、朝儀の体はすぐにまた精を放った。透明になった蜜が陰茎の側部を垂れていく。

「イけるみたいだね。まぁこの前も俺ので果ててたしな……ふぅん……――じゃあ、こういうのはされたことある?」

 そう言うと、透明な長く細いチューブを持って、彼方が歩み寄った。
 身悶えたまま朝儀見守っていると、彼方の操作でバイブの振動が止まった。
 それが寂しくすらあった。


 朝儀の体が一気に弛緩した時、彼方が朝儀のそそり立った陰茎を握り、もう一方の手で、先端にぷつりと、カテーテルの先を押し込んだ。

「ひッ」

 カテーテルが中へ中へと入ってくる。

「あああああ……や、やだ、嫌だッ」

 陰茎内部を抜き差しされる感覚に、朝儀ガクガクと震えた。恐怖よりも、純粋に気持ち良いと思っていたのだ。こんな医療行為じみたことにすら快楽を覚える体が恐ろしくなったが、思考は蒙昧で、もう何でも良かった。

「本当に嫌か?」
「うあああん、ん、ア、気持ちいいッ」

 そのまま散々、朝儀は体を嬲られた。そして意識を飛ばした。

 目が覚めてから、朝儀は彼方に聞いた。

「彼方さんって、Sなの?」
「Sな俺は、嫌い?」
「ううん。俺、Mだから」

 こうして、体の相性を確認し合った二人だった。