【タイトル】魔術師の剛直?(雨の降る黒い森SS)





ももたん(桃瀬わさび様【@mmsooe】)お誕生日おめでとうございます!(3/3)
リク感謝です? 愛を込めて!

※晴男(騎士)×雨男(魔術師)
※コチラ単品でご覧頂けます(本編未読でOK)。

#桃瀬わさび誕生祭






 ――その後も雨を見る機会は減少の一途を辿っていった。

 本日も、俺の住む黒い森には、青空が広がっている。俺はそれを室内から見るのではなく――サフの隣に立って、自然と見上げていた。雨男の俺にとって、それに拮抗するどころか勝る晴男のサフの存在は、本当に貴重だ。現在は、フキノトウを採りに出てきた俺達。黒い森の片隅で、山菜をカゴに入れていく。

 俺が一人で暮らす黒い森に来る時、サフは様々な食材を持参してくれるようになったが、俺はそれでも自生している山菜類も入手している。

 俺とサフの出会いを簡潔に述べると、ある日サフが、屍竜討伐部隊に加わって欲しいと俺に依頼に来た、となる。俺は、嘗て、魔王討伐をする勇者パーティにいた(約三百年ほど前だ)。その結果呪いを受けた魔術師が俺で、十七歳時点から不老なのだが、それを隠して、俺は依頼を引き受けた。その当時のパーティの勇者もまた――晴男。

 かつ聖女が雷女だった事から、俺の雨男っぷりに対抗して空を晴れでぶつけて曇空とし雷鳴を轟かせたサフの血筋を見抜いた俺は――その後、サフに殺されかかった。どういう事かというと、サフは勇者と聖女の末裔だったのである。しかしそれは、サフにとっては、墓場まで持っていかなければならない秘密だったらしく、俺は口封じに殺されそうになったのだ。サフは鬼だ。

 しかし紆余曲折を経て、現在俺達は恋人同士……全く、照れてしまう。

「このくらいあれば良いな」
「そうか」
「フキノトウと味噌でおかずを作るんだ」

 俺が持ち上げたカゴを、サフが一瞥して頷いた。それを見て立ち上がった時――サフが俺を後ろから抱きしめた。サフの顎が俺の肩にのり、艷やかな髪が俺の頬に触れる。

「フキノトウよりお前を食べたい」
「? 頭沸いてるんじゃないのか?」
「……その雰囲気をぶち壊す癖、そろそろ治す事は出来ないのか?」
「だって」

 俺が唇を尖らせると、短くサフが吹き出した。その吐息が俺の耳を擽る。

「好きだぞ、ソーマ」
「……」

 最近のサフは、甘い。ひたすら甘い。こいつは林檎が好きでアップルパイが特に好物だというが、林檎よりサフの言葉の方が甘い。照れるだろうが! やめろ! いつも俺は言葉に窮してしまう。

「ソーマは本当に可愛いな」
「サフはキャラ崩壊が著しいな!」
「キャラ? 俺はお前にとって、どういう印象を与える人間だったんだ?」
「俺以外には丁寧で優しいのに、俺にだけ鬼!」

 素直に俺が答えると、サフが両腕に力を込めた。そして俺の耳の後ろを舌でなぞった。

「愛しい相手は、寝台の上以外では泣かせないと決めているんだ」
「ど、どこから、出てくるんだよ、そういうクサイセリフは!」
「ただの本音だ」
「離せ! 帰って、フキノトウの味噌を作るんだから!」

 俺が抗議すると、あっさりとサフが腕を離した。こういうすんなりと離す所を見る度に、余裕たっぷりにからかわれている気分になる。どーせ俺は童貞でしたよ! 何が悪い!

 それから二人で帰宅した。俺が水道のそばにカゴを置いた時、サフが俺の手首の触れた。

「ソーマが欲しい」
「俺は俺だけのモノなので誰にもあげられません!」
「まだ勘違いしているのか? 貴様は俺のモノだ」
「……」

 顔から火が出そうになる。俺は、多分本当は、自分がサフのモノである事が嫌じゃない。だけどそんな事は、恥ずかしいから言えないのである。無理ー!

「行くぞ」
「どこに?」
「寝台に」
「なんで?」
「愚問すぎるな」

 サフが俺の手を引いた。俺はサフの胸に倒れこみ、赤面して唇を噛む。するとサフが俺の顎を片手で持ち上げ、もう一方の手で俺の唇をなぞった。

「だから噛むなと言っているだろう?」
「……」

 唇を噛むのは俺の癖だ。言葉を探していると――サフが俺の唇に、己の唇を近づけて、ペロリと舐めた。舌で唇をなぞられて、俺はビクリとする。思わずうっすらと唇を開くと……サフの唇が押し付けられた。そのまま暫く口腔を貪られた。

「ソーマ」
「な、なんだよ……?」
「貴様はただ俺に愛されていれば、それでいい。俺の愛は深い。覚えておけ」

 意地の悪い顔でサフが言った。クサイと罵りたかったのに、俺は嬉しすぎてそれができなかった。現在の俺は、愛されすぎて、非常に幸せである。