いつかのクリスマス
※時系列謎です。
※IFssで、環弟子入り前
※その内、加筆修正して本編に組み込むかもしれません。
***
慈覚は、明星宮の執務室で、細く吐息をしていた。
クリスマスプレゼントだなんて嘯いて、南極が珍しく置いていった熱い珈琲を、こちらも素直に受け取り、先程から飲んでいる。
虚空洞で森羅が出してくれる珈琲と比べれば断然劣る味だが、あると無いとでは大違いだ。
――今日は、師走の月の24日だ。
世間……許仙の商店街などでは、クリスマスイブとして、各地でイルミネーションが輝いているらしいが、慈覚は仕事詰だ。
「プレゼントの一つも贈ってやりたいものだな」
森羅の顔を思い浮かべて呟いたが、果たしてそれで師が喜ぶのかはわからない。慈覚は確かに森羅のことが好きだ。しかしそれを上手く伝えられないし、言葉が何も見つからない。
ノックの音がしたのはその時だった。
「入れ」
何気なく慈覚が答えると、静かに扉が開いた。
「森羅……?」
「今日も遅いんだね」
「平日だからな。休みは年末年始のみだ。何か用か?」
淡々といつもと変わらない口調で言いつつも、慈覚は狼狽えていた。クリスマスイブの夜は、プレゼントを貰えると聞いたことはあった。ならばこうして森羅の顔を見られたのは、プレゼントなのだろうか?
「? 用があるのは君じゃ無いの?」
「どういう意味だ?」
「慈覚が俺を呼んでいるからと南極が話していったんだよ。そうすると、南極が用意したクリスマスプレゼントを慈覚が受け取ることができるって。俺がここへ来ると、慈覚は何かを貰えるんでしょ? それが何かは知らないけど、南極は慈覚がどうしても今日欲しがっているから急げっていっていたけど」
森羅が首を傾げながら言った。心当たりのなかった慈覚は、先ほどもらった珈琲を見る。そして、理解した。南極が本当にプレゼントしてくれたのは、森羅との時間らしい。
「……ああ、最高のクリスマスプレゼントをもらった」
「もう貰ったの? それは良かった」
「森羅、その――お前は俺に何かプレゼントはないのか?」
「何が欲しい?」
「目を閉じて俺の前に立っていてくれ」
「?」
素直に歩み寄ってきた森羅の前に、慈覚も立ち上がり、静かに立った。そして森羅が目を閉じた瞬間、抱き寄せて、その唇を奪う。
「慈覚?」
「唇が欲しかった」
慈覚がそういうと、心なしか森羅が赤面した。慈覚の腕から逃れようとした森羅を、慈覚が抱きしめ直す。
「もう少し、こうさせてくれ」
そんな、聖夜がいつか、あった。