最奥ゴシゴシ



 俺は、王子の妃となった。男なのに、妃と呼ばれるのも微妙すぎるが仕方がない。今では、王子殿下を愛してしまっているので、俺はその境遇を受け入れている。

 どこで、か。それは、第一王子妃専用の一室、紫色の間での事である。後宮の最上階に位置している。後宮とは言うが、この国は、一夫一妻制度なので、俺しかいない。なお、第一王子殿下は、後継者は既に結婚している第二王子殿下の御子息とすると語っていた。なのでお世継ぎの心配は無い。

 心配なのは、部屋だ。紫色の間は、俺が来てすぐ、見まごう事なきゴミの山が築かれた。毎日、清掃の人が入り、夜にはやってきた王子殿下が掃除をしていく。その中間、夕方頃に、俺は汚してしまうのだ。もうある種の病気かも知れない。俺は本日も散乱してしまった衣類を見る。紅茶を入れた茶器も放置してある。しかし俺がこれまで暮らしていたゴミ屋敷よりは遥かにマシだろう。

「失礼する」

 そこへ今宵も王子殿下が訪れた。そして部屋を見渡すと、瞳を輝かせた。本当にきれい好きである。こちらも一種の病気だろうと俺は確信している。

「さて、風呂に入るとするか」

 紫色の間には、備え付けの浴室がある。大理石で出来た大きな浴槽と、魔導シャワーが付いている。王子殿下は、いつも俺を伴い、ここで入浴する。しかし俺をゴシゴシする頻度は減った。専らゴシゴシされるのは、寝台の上に変わったのだ。既に入浴を済ませていた俺は、王子殿下が帰ってくるまでの間、寝台に座っていた。

 戻ってきた王子殿下は、俺を見ると、抱きしめた。そして、薄っぺらい俺の服を脱がせる。脱がせやすい服を夜着として用意されているのだ。

「今日はまず、耳から綺麗にしよう」
「あ……」

 俺の左耳に、王子殿下が舌を差し込む。その感触に俺はゾクゾクとした。ゴシゴシされる時に近い感覚だ。俺はこうされると、一刻も早くゴシゴシされたいと願うようになってしまった……。

 そうしながら、片手を俺の腰に回し、もう一方の手では乳首を王子殿下が摘む。

「こちらもゴシゴシしないとな」
「ひ……ッ……ぁ……」

 ゴミ屋敷にいた頃から散々開発されてきた俺の乳首は、すぐに固くなり、王子殿下が指をコリコリと動かす度にどんどん存在感を増していく。普段は忘れている場所だというのに。そうされると、緩やかに俺の息子が反応を始める。

「液が溢れ始めたな。今日もここを綺麗にしないとな」
「あ、ぁ」

 殿下が一度立ち上がると、俺の太ももの間に体を置き、俺の息子を口に含んだ。そして鈴口を刺激してくる。先走りの液を舐めとられ、吸い取らるように唇を動かされると、俺の腰からは力が抜けていく。

 その時、殿下の右手の指が二本、俺の中へと入ってきた。そしてかき混ぜるように動かす。俺は涙ぐんだ。既に慣れきっている体が、殿下の息子の熱を求めているのが分かる。

「挿れるぞ。今日も思う存分綺麗にしてやるからな」
「あ、あ……ああああ!」

 入ってきた熱に、俺は喘ぐ。圧倒的な質量に、体が昂ぶっていく。そんな俺の腰を掴むと、殿下が激しく打ち付け始めた。気持ち良い。体を綺麗にされているのは分かるが、殿下はとんだ変態趣味だと思う。言葉責めみたいだ。だけど、そんな所も既に好きになってしまった……俺もまた変態だろう。

「ぁ、あああ!」

 殿下が俺の中へと放った。そしてずるりと息子を引き抜くと、俺の体を反転させた。そして再び指を挿入すると、白液を掻き出すようにした。だが――すぐにそれは、グチュグチュという音に変わる。

「あ、ハ、やぁァ」

 殿下が指で俺の中をかき混ぜ始めたのだ。ゾクゾクとする。そして、俺は前立腺を思いっきりゴシゴシされて果てた。肩で息をしたが、殿下の指の動きは止まらない。

「足りないな」
「も、もう綺麗になった! ああああ」

 殿下は再び俺に挿入すると、今度は奥深く貫いては、限界まで引き抜くという、緩慢な抽挿を始めた。その度に、卑猥な水音が響く。すぐに俺の体は、再び熱くなった。

「ひゃ!」

 その時、最奥を貫かれて、俺は息を呑んだ。

「今日は、最奥を綺麗にしよう」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ――ああああああ!」

 結腸をゆっくりと押し上げるように貫かれた瞬間、俺は絶叫した。あんまりにも気持ちよすぎて、俺は中だけで果てた感覚を味わっていた。頭が真っ白になる。前からは出ていないというのに、快楽の漣が俺の体を支配していた。

「まだ、足りないだろう?」
「いやああああああああああああああ!」

 殿下が何度も俺の最奥を穿つ。
 ――この夜、俺は散々、体の内側をゴシゴシされた。それがもたらした壮絶な快楽に涙しながら、俺はいつの間にか意識を飛ばしたのだった。

 翌朝目覚めると、全身が気だるかった。そんな俺を抱きしめて、王子殿下は眠っている。その顔を見るとやはり愛おしくて、俺は殿下の胸板に額を押し付けて、幸せを噛みしめる。

 こうして汚部屋から始まった恋は、今も変わらず続いている。
 俺は、幸せでならない。