人間界で言う所のクリスマス
今日は人間界で言う所のクリスマスだ。
俺、随分と人間界に毒されてるな……。
なんでも本日、人間は、ローストチキン等を食べるらしい。俺、鶏の神様だけど、食べたら共食いになるのかな? い、いやいや。
子供達は本日、破壊神達の家に遊びに行ったから、今夜は朝蝶と二人っきりなんだよな。本当は俺と朝蝶も呼ばれていたんだけど、朝蝶が「たまには二人で過ごしたい」っていうから、俺も行きたかったんだけど我慢した。破壊神元気かなぁ? 最近、お互いの子供達同士の方が連絡を頻繁に取り合っていて、家事をやってる俺達はそんなに接触が無い。
俺はビーフシチューを煮込みながら、帰ってきたら、サンタさんから届いていたとしてわたすプレゼントについて考えた。俺と朝蝶の子供達は、結構大人びた品を欲しがった。俺、小さい頃とか無いから(最初から神だった)、子供の成長ってなんか嬉しい。
「ねぇ時夜見」
その時、朝蝶が俺の後ろから抱きついてきた。本当に華奢だ。その柔らかな温もりに、俺は振り返る。
「……」
「今夜はずっと二人っきりだね」
「……」
それはそうだ。子供達は出かけているのだから。それに、二人で過ごすのが、朝蝶の希望だったとも思う。え? まさかの寂しい? 今からじゃどうにも出来ないけど!?
「四人目が欲しいなぁ」
「……」
子供はさすがにサンタさんも急には用意できないと、俺は思う。
「ね? シよ?」
? 何を? 今はビーフシチューを煮込んでるけど?
「僕、時夜見が欲しくて仕方がないんだけど」
「?」
俺はずっとここにいるし、自分は朝蝶のものだと思う。今更何をいうのだろうと思って、俺は振り返った。すると正面から朝蝶が抱きついてきた。
「時夜見が大好き」
「……」
「時夜見は?」
「……俺は」
気持が伝わっていないのだろうか? 焦る。何を言えば分からないでいると、朝蝶が俺に回している腕に力を込めた。爪がたってる! 背中が痛い!
「俺は? 何?」
「……」
「僕のこと、きちんと好き?」
「あ、ああ」
慌てて頷くと、朝蝶が溜息をついた。
「だったら、キスして」
――どうやら、キスの方が想いが伝わるようである。だから俺は目を伏せて、柔らかな朝蝶の唇を貪った。
子供達が帰ってくるまでの、残りの数時間。
俺達は愛を交わす。