睫毛
「藍円寺、眉毛ついてる」
「ん」
俺は思わず右手の甲で、目元を擦ろうとした。
するとその手首を、ローラが掴んだ。
「擦るな、赤くなるだろ?」
「あ、ああ」
しかし指先で拭おうにも位置がわからない。そう考えていたら、ローラが俺の頬を両手で挟んだ。
「取ってやるから、目、閉じろ」
「!」
その言葉に、俺は赤面しつつもギュッと目を閉じる。
するとローラの長く端正な指先が、俺の右の目元をなぞるように動いた。
と、同時に。
唇に柔らかな感触が触れたものだから、俺は驚いて目を見開く。
「だって藍円寺、キスするときと同じ顔で、目、閉じてるんだもんな」
「な」
「それに目を閉じてるお前、可愛いし。ついキスしたくなった。つい。本当、つい。無意識だ。怒ったか?」
俺はローラを怒ったり出来ない。怒れるはずもない。なにせ俺だって度々、ローラとキスをしたいと思っているのだから。
「睫毛はちゃんと取ったぞ」
「わ、悪い」
「だから、もう一回」
「ン」
答える前に、再び唇を奪われた。今度は触れるだけではなく、深いキスだ。舌を追い詰められて、絡め取られる。口腔を嬲られる内に、俺の息は上がった。