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 朝。七時四十分に起きて、そのままVRで内部をチラ見してから、四十五分に外に出て、シャワーに入り、出てきて10秒飯を食べた。レクスは、ジャストに部屋から出てきた。起きてはいたようだ。

「おはよう」
「おはよう。俺は撮影の日は朝は食べない。兄上は?」
「俺、10秒チャージ系」
「そうか。チャージ済か?」
「うん。テレビに出したのが、今の用意済」
「! 完璧だな。横長のソファの傘立てにもルシフェリアの剣がさらっと入っている。すごいな……俺は、昨日琉衣洲と撮ったのがコレだ」
「あ、良い感じだ。お前のクエイクONLYもカッコイイな。制服と私服と黒騎士服だ」
「そうだ。私服は、父上の系列会社の新商品だ」
「あはは。父上から連絡あったのか?」
「父上――……インフィニティで、兄上と1ページコラボすると言っていて、8時に来ると言っていた」
「ぶはぁっ、え!?」
「父上もアースタロット・オンラインに出すらしい」
「ぶはっ!!!」
「父上、アースタロット・オンラインをやっているようだ」
「吹いた。そうなのか」
「ああ。さらに兄上との共同店、俺との共同店、三人での共同店、父上のリアル会社、お祖父様大元のグループ全部とのお店、合計5つを増設希望だそうで、さらにお祖父様も兄上と合同1店舗希望で、お祖父様もやっているそうだ」
「ぶはっ」
「お祖父様は八時半に来るそうだ……今それで部屋にいたんだ、俺は」

 レクスが言い終わった時、インターホンが鳴った。出たら、父上とお祖父様の両方がいた。久しぶりである。

「おはようございます」
「ああ、おはよう。まさかゼクスがアースタロット・オンラインをやっていたなんて」
「私も驚いた」

 二人は微笑してそう言った。いやそれ、俺のセリフである。
 とりあえず、ソファに座らせた。レクスがお茶を出した。

「それでね、ゼクス。転用で良いんだが、俺の『セイレーズ』と『フェスティバル』と『アキナレイド』の3紙にも広告を打ちたいんだ。アンチノワールの内部独自インテリア、鴉羽商會Ver黒騎士、黒曜宮クラフトの古書店&アンチノワール商會とのカフェ。というかまさかゼクスが、鴉羽で黒曜宮だとか、俺は今でも信じられないんだけど、本当なのかい? フレ登録早く」
「あ、ああ……本当だけど、家具雑誌は分かると言えば分かる、趣味雑誌は、え、もしかして生産者向けか? アキナレイドは、カフェ取材だろうから分かる。ええと、ここでタブレット接続でキャラ情報が出ます――あ、お祖父様も父上も承認した。あれ、これ、お祖父様は薬剤カンストだろ、父上は服飾カンストで建築の貴重な300以上だろ? お祖父様は名前そのままだし、父上もそうだし、父上、天球儀のギルマスだろ? 生産の大きいギルドの」
「うむ。俺は、ゼクスと医療用復古聖遺物&薬剤店をやりたい。イリスあたりがやるかとは思うが、俺もやりたいんだ。後は、白衣をデザインしてくれ」
「あ、なるほどな。お祖父様、じゃあ、店舗用意頼んで良いか?」
「うむ」
「――俺も天球儀で正解だよ。知っていてもらって非常に嬉しいな」
「俺も驚いた……アイゼンバルドで一番有名な生産露店ギルドだ。内部クランも数え切れない……」
「ふふ。いやぁ、レクスがユレイズ攻略組というのにも驚いたけれどね。黒十字同盟もレッドクロスも勿論知っていたよ。まずレクスとは天球儀×黒十字同盟で装飾具、ゼクスとは天球儀×鴉羽商會で武器、三名では天球儀×ハーヴェストで家、俺の会社も×ハーヴェストで庭園とか庭を売りたいんだ、敷地。それでグループ全体は、×ハーヴェストで、宗教建築と生産施設を販売したい。三名・会社・グループは、こちらでデザイン出すから、ゼクスに作ってレクスに販売補助を頼みたいんだ。生産施設は、お祖父様が研究所をデザインして送る。装飾具は、天球儀ブランドをリアル会社で出すから、それを黒十字同盟装飾具に適用して欲しくて、武器は天球儀でケース作るから中身と銘を鴉羽希望。武器リストはこれ。その他の家や空間からのリストがこっち。納品希望期間も書いてあるよ。すごくやりたかったけど、スキルが無かった」
「ああ、なるほど。武器は置いておき、これは、一回納品すれば良いのか? 毎月とかか?」
「バラ園とハーブ園のオリジナル、宗教建築は、需要的に多分かなり売れるから、月30〜50は欲しいけど、複製は俺がやるから初回に1つ納品で良いよ。他も初回」
「分かった。武器は、どういう感じだ?」
「オリジナルじゃなくて良い。デフォルトに、天球儀マークを入れて、銘は鴉羽。逆にね。それでこちらは複製制限があるから、月にリスト、各10追加が希望かな。5種類の300レベル錬金術師杖ONLY」
「うん、分かった。俺は良いぞ。他はレクスと相談してくれ。後は、お祖父様は?」
「医療用復古聖遺物のレシピが全て見たい」
「ええと、それ見てる感じで後で相談で良いなら、VRスタジオに降りる時に送って、自分用の写真を撮ってくる」
「うむ」
「兄上、俺と父上も後で良いから行く――お祖父様も撮らないか? サイトに載せたい」
「う、うむ……」
「俺も賛成だな」
「うん、俺もお祖父様も良いと思うな」
「……そうか」

 こうして全員で10階に向かった。ゲーム専用では無いが、VRは大量にある上、スタジオ特化のデザインがまるっと空いているので、一気に降りられた。

 そこでお祖父様にレシピを渡して、無言だけど目で感動されてから、俺達は撮影に入った。多分、お祖父様は、装飾具スキルが足りないから、全部出ていないのだろう。

 そこからはもうバシバシと撮影であり、父上は撮る側もプロだから、俺は配置して後は指示に従えば良かった。

 吹いたのは、俺以外全員アバターが狼だったことである。人間ゼロだった。

 しかも名前は全員本名とかいう逆に奇跡だ。
 なんかこう『ハーヴェスト家』みたいなノリでの撮影になった。

 その場で、レクスの赤バージョンの貴族衣装と俺の黒暗殺者を父上とお祖父様が着て、赤と黒で四人とかである。なんかすごく新しい。

 しかもお祖父様は、350カンストのキャラで、聖職者&暗殺者&魔術師も350カンストで伝説だし、父上もキャラ320で、魔術師&錬金術師&死霊術師が300Overという超上位だし、なんかもう、ゲーム一家である……。

 ちなみに、父上もお祖父様もモデル経験者だから、普通にバシバシ撮っていた。インタビューもした。なお、お祖父様は本業は医者だ。父上とレクスは経営であり、デザイナーが俺である。誰もご飯とか一言も口にしないまま、午後五時過ぎに撮影は終わり、そこから父上とレクスが加工&マーケティング経営会議に入った。

 俺とお祖父様は、聖遺物装飾具の話に入った。ちなみに、グループは曽祖父、医者も曽祖父からの引き継ぎがお祖父様である。医者の血が濃かったようで、経営の血は父に隔世遺伝だそうだ。俺は、レクスがいてくれて良かった。

 お祖父様の希望は、ロックをかけて、全商品おきたいそうだった。POTは350レベルのみ。スキル書も希望として追加されて、300以上の聖職者のスキル書のみでロック。POTレシピは300以上全部で、こちらもロック。

 さらに、350レベルの聖職者の回復杖と聖書も全部でロック。俺はこれを用意して終わりで、お祖父様が、販売用のPOTなどは適宜作るそうだった。俺的には楽だった。

 なぜならば、逆にこれは、自分でも作って保存しておいたものだからである。予備3個ずつくらいだ。必要になる可能性が高いからだ。それで、『エクエス・ロードクロサイトの館』として、銘は全部エクエス・ロードクロサイトと決めた。

 エクエスは黒騎士の読み方だし、ロードクロサイトはお祖父様の露店名だ。後、白衣は黒騎士にデータがあったので、そこにエクエス・ロードクロサイトと入れて完成した。店舗は、お祖父様の研究所デザインの、四角い白いひらべったい施設である。内部も無機質で、非常に格好良い。

 俺が、試験管だの顕微鏡だのを置きたいと言ったら、持っているなら好きにしろと言うから置いたら吹かれた。そこから――PSY融合医療装置の話になった。お祖父様は、是非ともそちらを作りたいそうだった。自分以外に出ている人を知らなかったからだという。それはそうだろう。俺もイリスしか知らなかった。

 なので、完成したらロックで展示と決めて、二人で分担してこれを作ることになった。俺のみ出ているものが俺担当である。六月中に2台を希望されて、七月中に追加で3台、とりあえず5台を希望された。これは、一番短いので、5日かかるからである。しかも、素材がかなり大変だったりする。

 建築や装飾具、その他色々をしてやっと出来上がる素材もあるのだ。建築を上げていないイリスには途中までしか無いものも多い。

 この話が終わった頃、父上とレクスが、リビングに戻ってきた。それでやっと食事の話になったのは、夜の十時過ぎである。俺達は、働いていると食べるのを忘れるのだ。この共通点は遺伝みたいだ。

 一階から出前を取って、雑誌各社には送ったという報告と、かつOKが出た報告と、WEBサイトがもう完成していて、ネット、半VR、VRの各地の街への広告ポスター動画まで出来ていて、テレビモニターでそれを見た。

「こうやって見ると格好いいんだけどねぇ」
「うむ。画面越しであれば、ゼクスほど格好いい者は中々いない」
「俺もそう思う」
「え、あのさ、それ、どういう意味だ?」

 という会話をした。なんか本物の俺が格好よくないみたいだ……わかってるけどな。写真マジックはすごいのだ。

 明日からは各自遠隔でのやり取りと決まった。そして食後十一時半すぎに、父上とお祖父様は帰っていった。俺とレクスは一息ついた。

 それで、ゼストからも書籍表紙、泣きながら感謝の連絡があったと伝えたら喜ばれて、ゼスト個人、ルシフェリア個人、イリス個人、義兄弟二名ペア、さらにハルベルト、クラウ、ヴェスゼストからもアバターで画像をもらっていて、ゼスト&ルシフェリア、ゼスト&イリス、ゼスト&義兄弟二人、ゼスト&ヴェスゼスト、ルシフェリア&義兄弟二名、ルシフェリア&ハルベルト、ルシフェリア&クラウ、このメンバー全員集合で、『ゼスペリアの教会』のギルドホーム(これは抽選で当たったから、解散した今もホームが残っているのだ)の前に立っている彼らが『ギルマスのゼクスへの一言』を書いている写真を貰った。

 桃花源の前でのルシフェリア&イリスからの『クランマスターのゼクス(銘・鴉羽)への一言』まである。やめろ。これ、反応に困るなと思いつつ、一緒に見ようと映してしまっていたから焦った。ゼクスが感激して倒れそうになっていた。

 特設ページを作って、彼らのサイトにリンクを張るそうだった。なんてこった……。彼らはアバターである。雑誌もアバターである。俺もそっちはアバターである。俺は猫だけど、他はみんな人型だ。ただ、イリスとルシフェリアは、リアルとの違いは、色だけである。ゼストも作家インタビューで見たことあるが、そのままだと俺は思う。

 なお、本名は、イリスだけである。それで、レクスがリンクと更新を完了したので、みんなにお礼とURLを送ったら吹かれた。

 クオリティ高過ぎというのと、後は、『本物のゼクスだ!』『本物のレクスだ!』『本物のクライス社長!?』『本物のザフィス先生!?』というものである。後ろ二名は、有識者としてテレビに出ていたりするから知っているのだろう。

 向こうからも、サイト公開日に貼っておいたリンクを公開してくれるというのと、イリスは、やはり自サイトを作っているようで、そこ、ルシフェリアも武器サイトを新設したらしく、そこのリンクを頼まれたので、レクスに伝えてその場で貼ってもらい、公開日は合わせることにした。桃花源ページとイリスとの共同ページは貰った。そこも貼った。なんか、思いのほか大規模になった。

 さて、それを行い、その日は寝た。多分二時過ぎである。