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「ひと部屋寝室が空いてるから使ってくれ。歯ブラシとか出してくる」
「有難う」

 俺は洗面所に歯ブラシを用意し、倉庫に高砂の着替え類を用意し、寝室を確認してから下に戻った。高砂が倉庫を確認していた。

「自由に使ってくれ」
「倉庫の中も良いの?」
「ああ、冷蔵庫とかも、アンチノワールルールと一緒で良い」
「さすが。なんかこう、最悪の状況下なんだけどその中で最高に勝ち組でそこは良かった」
「あはは。ただ困った……救助、来ないのか……」

 二人でソファに戻った。呟いた俺を見ながら、高砂が腕を組んだ。

「外に恋人でもいるの?」
「だから俺はぼっちのひきだと言ってるだろうが。なんでそういうグサっとくる事言うんだよ!」
「ぶは、あ、本当にそうなの? ごめん、悪気は無かったんだ。純粋に」
「……お前のようなイケメンに俺の気持ちは分からないだろう」
「イケメンを通り越してる顔面の人に言われると複雑なんだけど、ゼクスから見て、俺はイケメンなの?」
「ああ。フィールドでだってみんなザワザワして、レクスと琉衣洲もキラキラした瞳になっていた。大体、ゲーム時から『高砂様(はーと)』『イケメン』だったのが、同じ顔なんだから当然だろう」
「時東もでしょ」
「ああ、やつもイケメンだ。お前ら二人の登場は、俺にとって神様来訪だったが、その後、レクスと琉衣洲のキラキラした目を見て、イケメン爆発しろって思った」
「ぶはっ、へぇ。ゼクスは、俺と時東どっちの顔がイケメンだと思う?」
「んー? 方向性が違うからな。なんかお前は結婚相手として、時東は恋人として人気ありそうだ。別に時東が遊びとかではなく」
「当たってるかもね。ゼクスは、憧れ対象とか目の保養枠だろうね。俺と結婚する?」
「しないぞ、馬鹿! いくら俺が寂しい人間であっても、そこまで焦ってない!」
「はは」
「けどお前、そういう冗談言うんだな。イメージに無かった」
「猫相手には言わないからね」
「ぶはっ」
「ゼクスは中身は変わってないんだけど、見た目が違うから、印象が違う」
「前と今を語れ」
「今は、優しくて儚いけど面白い美人。前は優しくて面白いけどド迫力の大福様」
「ぶはぁっ、大福! けどなんか、美人って沢山言われたけど、そうなのか? 本当か? みんなで俺をからかって無いか?」
「からかってないよ。榎波が見たら一分後には押し倒すだろうから、気をつけてね」
「えっ」
「誰かゼクスはリア友いるの?」
「一応ルシフェリアとイリスは知ってる。ゲーム前から知人。けど、超たまにしか会ってないな」
「顔は知ってるの?」
「まぁな。やつらはアバターとそのまんま」
「そうなんだ」
「高砂は?」
「50000人もいるわけだから、どこかにはいるかもしれないけど、特別心当たりは無いかな」
「それもそうだな。レクスがやってるのは知ってたけど、俺も昨日まで会ったこともなく具体的にも知らず、ユレイズ攻略組とか初めて聞いたしな。まぁその点レクスと琉衣洲は、リア友クランあるとかって話だから、俺らとは違うだろう。学校繋がりみたいだ」
「ああ、そういう事か。それでリア友といるんだ」
「あれ、高砂って今、クランとかギルドは? ギルド無くなってるみたいだけど」
「アンチノワールの他は、万象院総亜だけ。両方特別枠だから、クラン空き3。ギルドは、副と榎波がやってる、ハーヴェストクロウ大教会とほぼ一緒に行動してる、『ルミナスティック』っていう所にいて、ここは特別クランに追加された。ヨゼフにいる。もう一箇所は、天球儀。クライス様の所にひっそりといた。こっちも特別枠になった。から、ギルド枠減ったけど、空き1」
「そうだったのか」
「時東も、特別クランが、医者クランと聖職者クランと、ルミナスティックと天球儀。元々のマンハッタンも特別枠。あと、普通クランでユレイズ入ってたはず。クラン空き2のギルド1じゃないかな。ユレイズクランはレクスくんとかは入ってないの?」
「リア友と、あと俺が昨日ルージュノワールに追加と、その場で新規作成テストして俺と作ったのとは入ってて、空き1みたいだけど、もしかしたらそれはユレイズが入ってるかもしれない。不明だ。ただ、ユレイズ情報に詳しいから、琉衣洲あるいはギルドごとの可能性もある」
「なるほどね」
「ルミナスっていうのは、ヨゼフ攻略するんじゃないのか? ラフ牧師の所の動ける高レベルと合同で。クライス様の所も最低限支援で出そうだな。万象院総亜は分からないけど」
「ヨゼフ勢は、俺もそう思う。万象院総亜は、俺は断ったし、無言を貫いてる。天球儀は、参加自由ってもう通知来てる。時東の方は、天球儀っていうより、医者クランが薬剤POTとか回復アイテム、医療用復古聖遺物とかを作る総合クランだから、そっちで天球儀から別枠で依頼あったと思うけど納品。聖職者クランは情報交換のみみたい。マンハッタンは今、アンチノワールと同じ感じだから強制とか無くここも情報交換。ユレイズ勢は、まとまってないヨゼフ勢みたいな感じだと聞いていて思ったかな。クライス様は、アイゼンバルドで支援みたいで、万象院総亜は多分フィールド巡り、天球儀の支援先はルシフェリアの黒騎士がメインのはず。それと英刻院閣下の『言祝ぎの荊棘』とアルト様の青薔薇騎士団にも支援するはず。英刻院閣下は今、セントラルにまだ居て、多分今後ヨゼフかアイリスかユレイズへの移動検討なんだろうけど、琉衣洲くんが家族なら、ユレイズかなと俺は思う。攻略は不明、拠点の話。アルト様は、エフネスを攻略予定だって。時東の聖職者クランにアルト様がいるから聞いたらしい。橘は、アステナ拠点で、エフネス全域、ユレイズ全域、そちら方面からのアイゼンバルド一部への、生産同盟からの支援窓口だって」
「なるほどなぁ。ヴェスゼストは、街待機って話だ。セントラルとアイリスだと思う。ログチラ見な感じだけどな、ヴェスゼストとミナスが炊き出しとか近々して救済活動するような気がする。ハルベルトは、PKとか強盗とかの自警団とかをやるっぽい。義兄弟二名はルシフェリアに合流らしい。ただ、攻略外はゼスト側に行ってセントラル見るっぽい。イリスはゼストといるけど、桃花源でルシフェリアと薬剤&武器を交換する話してる。桃花源は物々交換が多いから。クラウは、万象院関係ギルドの話は聞くけど様子みるって言っていた。しばらく、ゼスペリアの教会のホームにいるって話で、みんなでそこの防衛頼んである。こんな感じだな。ここと、あと、クランの方のハーヴェストクロウ大教会で、ラフ牧師&英刻院閣下とは、有事の場合には、衣食住相互援助と話してはいる。ただ有事の基準は八割餓死とかだからな」
「みんなが気になる伝説級の動きを全部知ってるのがすごいよね。俺が言ったのもかなりの情報のはずなんだけど、ゼクスの前だと、どうでも良い情報と化す」
「いやいやいや、長くやってるだけだ。それに、この状況なら、もう、そういうの関係ないだろ。普通に俺、俺とお前のどっちと戦いに行くか聞かれたらお前だ。俺より頭良くて慎重そう」
「俺はゼクスと行きたいけど――まぁ、変わるだろうね。ギルドの共闘じゃなく、再編もかなりあるはずだ。ギルド違ってた高レベル固定パテとかで、今回の枠1にギルドをもう作ってたり、クラン化してるけど全員蹴って解散みたいにしてる所とかもあるみたい。衣食住の取り合いとかで。一番悲惨なのは、恋人&結婚相手の外見が最悪パターン。性別年齢偽装とか」
「愛があっても乗り越えられ無かったか……」
「ぶはっ、どうだろうね。愛がそもそもあったかどうか」
「攻略も支援もしませんっていうギルド作ったらPKされるかな……メンバー募集も無し」
「返り討ちで良いだろうし、かなり加入希望者いそうだけど――レクスくん達は入らないような気がする」
「どうしたらやつらを大人しくここにおけるかな」
「うーん」

 高砂は腕を組んでから、しばらく何も言わなかった。