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お昼ご飯に突入に決めて、ラザニアの大皿と、個別のサラダ、スープ、バケットと塗るテリーヌを出したら喜ばれた。死ぬ程美味しいらしい。俺も食べたが、うん、美味しい。リアルの俺の手料理より、絶対に美味しい。確実にこれは、スキルの問題である。後で、実際に作るのも試してみようと思った。
食後、テレビの話になったから、みんなでつけて、視聴する事にした。セントラルの広場の風景を映し出すチャンネルが増設されていた。人混みが映っている。
「すげぇな」
「うん。俺は、ゼクスと知り合いである事に神へ感謝したレベル。あそこにはいられない」
「俺もだ」
「なんだか、空がちゃんとリアルと同じ明るさで、不思議だ……これは、他もか? 天気とかもあるのか?」
「ん、ああ。朝昼晩は、現在まではリアル仕様らしい。天気も雨の土地がある。四季はまだ不明だが、氷や雪のフィールド、その最寄りの街は、氷点下だそうだ。空調があるギルドホームなんて基本ねぇから、凍えて帰ってきたらしい。逆に暑い場所もあるそうだ」
「俺、ちょっと、宗教建築を裏庭に設置して、各地の家状況見てきたいんだけど、レクスと琉衣洲を見ていてくれないか?」
「兄上、俺は大人しく待っている」
「俺もだ」
「二人もそう言ってるし、俺もいいぞ」
「うん、俺も見てるよ」
「有難う」
こうして俺は立ち上がった。外に出て裏庭に周り、万象院仏閣を設置した。そして中に入って、スキルを発動した。まず――俺の個人ホームは、設置が200ぴったり存在する。各街に、実は、一個ある。セントラルには、近日中に建てようと思っていたのである。他は、各大陸6つに、平均20の街があり、そこに1つずつで、120。また、複数ある場所があるので、プラス10。さらに生産向きの敷地に50。海辺だとか鉱山だとかだ。残りの20は、風景が気に入ったフィールドである。結界を貼ってあるから、モンスターはこれまでは入ってこなかった。
全てに万象院仏閣はあるので、問題なく200軒を見て回った。内部の書斎で防衛状況や、生産敷地内容、倉庫、周囲のモンスターや人気を確認したのだが、全部安定していて、いつも通りだった。続いて、メインの一番使う家に行き、移動式建築の99軒を1個ずつ開いて確認した。ぴったり100個あるのだが、一つはセントラルにあるからだ。レクス達がいる場所だ。こちらも全て問題ない。次に個人クランの、鴉羽クラフト名義のクランホーム100個を見た。大丈夫。鴉羽商會の店舗&生産施設150個も問題ない。ルージュノワールの店舗ホーム50個も無事である。
全てフル課金であり、無い生産敷地も施設も無いし、開墾スキルでの増設分も大量だ。倉庫もフル課金であるし、各ホーム・露店倉庫・クラン倉庫が全部ある。アイテムも全部あるし、生産素材も全部ある。無いものはゼロで、一番少なくとも99個×30はある。ただ、寒い場所にある課金の畑は萎れていたりした。魔術&錬金術スキルの気候操作を試したら、畑の上だけビニールハウスのようになった。ホッとした。生産の土地各地に、適した気候や天気設定を念のために行い、モンスターやプレイヤーが入ってこられない防壁や結界は、より強化した。
うん、大丈夫だろう。それから、総資産を確認したが、これも潤沢だった。それから、アンチノワールのクランホームの生産施設に同じ事をして、クランチャットで呟いた。『グッジョブ』と言われた。続いて桃花源に行き、同じ事をして『グッジョブ』と言われた。ハーヴェストクロウ大教会とゼスペリアの教会には、チャットログを残した。後は、生産だから、クライスのギルドの天球儀が結構大規模だからメールしておいた。クライスにも今のが可能なスキルがある。すぐに返信があって『助かるよ』との事だった。
さて、終えたのは、夕方の六時半過ぎだった。戻ると、時東と高砂がパスタを食べていた。シャワーも浴びたらしく、着替えている。琉衣洲とレクスは――いない?
「あれ、二人は?」
「安心しろ、二階の客間だ」
「よ、良かった……」
「家、複数あるのは知ってたけど、随分かかったね。大丈夫だった?」
「思ったより時間かかったな。うん、今のところ問題は無かった。ただ、チャットの通りだった。気温が畑にダイレクトだ」
「お前がいて良かったよ。アンチノワールは安泰だ」
「全くだよね。レクスくんには言ったの?」
「いいや。橘が生産同盟で通達すれば伝わるだろう。ユレイズは、生産クランとギルドがやりとりしているみたいだ」
「へぇ、なるほどな。まぁ、言ってやりに帰ると言われても困るしな」
「そうなんだ。変なことを言ったら行ってしまうだろう……」
「一緒にユレイズに行くとかはないの?」
「ギルドに行ったら攻略にレクス達は乗り出す気がするから、行かせない」
「なんで?」
「心配だからだ。何かあったら大変だ」
「ふぅん。ゼクスが一緒なのに?」
「一緒でもダメだ。危ないのは良くない」
「まぁな」
「この状況だから、過保護とかブラコンとは、今は言えないね」
二人がうんうんと頷いた。俺は、冷たいおろしたぬきそばを食べる事にした。さっぱりしていて美味しい。なんというか、食糧難だというが、俺からすると、逆に食料は豊富だし、しかも美味しい。罪なことだ。麦茶までいちいち美味しいのだ。完全にセレブである。
「所でお前らは今後どうするんだ? 五年分の食料と医薬品って俺だろ? POTは時東自信もあるし。もう確保終わっただろ」
「「ぶは」」
「まぁな、ぶっちゃっけそうだな」
「うん、そうだね――どうしようかなぁ。お前らというか、時東と一緒にいるかも不明。とりあえず昨日は俺達がいたってだけだからね。特に時東は、攻略始まったら呼ばれるだろうからね」
「それはそうだけどな。俺は、攻略にはまだ行く予定はない、が、既に呼ばれてはいる。けどな、高砂だって声かけられてんだろ? 攻略地に行くまでを考えても、お前がいないと辛い場所、いると易い場所はかなりあるし、それは攻略に行くような連中がよく知ってる。アイゼンバルドの連中は特に詳しいはずだ」
「俺、今は全部断ってるからね。悪いけど今は無理だってきっぱりと」
「そうか。俺は、まぁ、行かない方向だが保留だからな」
二人の言葉に、俺は静かに頷いた。
「攻略に行かないのなら、できたら俺といて、レクスと琉衣洲を食事代として守ってくれ。攻略に行くなら、そんなことを言ってあの二人が行きたくならないように、黙って出て行ってくれ」
「攻略には行かないし、食事代は払いたいけど、守るというのは内容によるね。身代わりになって死ねとか言われても無理だし」
「俺が自分宅とかに行ってここを空ける時に、ここにちゃんといるように見ていて、外部から不審者が来たら排除してくれればいい。入らないように見ていて欲しいし、二人がフィールドに出て行ったりギルドに行ってしまったりしないように見ていて欲しいんだ。基本的に行くとすれば、倉庫に無い生産物を新作するとかだけど、現在そういう予定は無い」
「ああ、なるほどね。ゼクスがいない時、留守番してればいいのか。ゼクスがいる時は、俺は出かけても良いの?」
「うん、勿論だ。ここにいなくても、俺がいない時だけ来てくれても良いしな。裏庭の万象院仏閣から、自宅に飛んでも良い」
「好条件だね。じゃあ俺しばらくゼクスといる。もし仮に攻略に限らずどこかに行く場合は、ゼクスに話すけど、二人には問題ありそうなのは黙ってる。セントラルの状況が見たいのと、料理的に、しばらくここに泊めて」
「ああ、分かった」
「俺は、自宅から通いで適度に来るわ。仏閣借りる。生産設備が気になる。という事で、今日は帰る。またな」
「うん。助けてくれて有難うな」
「っ、おう。じゃあな」
こうして、ニッと笑って時東が帰っていった。高砂と二人で見送ってから、二階を見上げた。