【7】初体験



「へ!? 付き合ってないぞ!?」
「ああ、そう。他に恋人は?」
「いないけど?」
「ふぅん」
「それがどうかし――っ、!?」

 そのまま耳の裏を舐められて、ビクンとしてしまった。

「え、あ、あの」

 動揺した。感触が全然違うからだ。硬直したら、気づいたら、反転させられて、押し倒されていた。早業過ぎた。起き上がろうとしたら、唇を奪われて、息が上がってもずっと口を貪られた。動揺と混乱が――時期に、息を必死でする事に塗り替えられていき、生理的な涙が出てきた。胸元の服がはだけられていることにもずっと気付かなかった。体の力が抜けてしまい、押し返すどころか、高砂の服につかまっている状態である。 

「ぁ……っ……ッ」
「感度いいけど、慣れてない」
「……」
「VRでも初々しいとは思ったけど」
「……ぁ……ぁぁ、あ、た、高砂、ま、待ってくれ」
「嫌だ」
「!」

 直接的に、性器を触られた。ボトムスの中に手がしのび込んで来て、優しく握られたのである。こんな体験は、初めてである。VRとは真面目に違う。リアルの自慰の方に近い。何より、体温がリアルだし、触覚もリアルだし、高砂の体重とか息遣いとか体の体温というのをリアルに感じるのだ。服を完全に取り去られて、俺は全裸になってしまった。太ももの付け根をきつく吸われて、陰茎を口に含まれた。

「っぅ、ぁああ! 待って、あ!」

 初めてのフェラである。思わず高砂の肩を押したが――直後、ズクンと腰に快楽が走った。目を見開き、体を震わせた。あ、ダメだ。俺は硬直した。

「あ、あ、あ、あ」

 今度は、声を抑えるのに必死になった。やばいのだ。嬌声が勝手に出るのだ。片手で口を覆い、もう片方の手で、無我夢中で、床に落ちている服を握った。何かに捕まっていないと、おかしくなってしまいそうだったのだ。

 体がゾクゾクする。出る、出そうだ。俺だって自慰はするし最近覚えたからこの感覚は分かるのだが――違う、一人と違う、明確にこれは、SEXだと分かる。ゲームとは違う。太ももがガクガクした。

「待って、出――っ!!!」

 そのまま呆気なく、俺は放った。ぐったりと畳に体をあずけて、大きく吐息した。気持ち良かった。その事実にも愕然とした。生理的な涙で瞳が潤んでいるのが分かる。髪の毛が汗で張り付いてきた。これは、ちょっと、まずいんじゃないのだろうか? 俺はそう思った。俺の中で、現実のSEXというのは、恋人同士とかがするものという印象だ。しかも俺と高砂は、男同士である。

 そう考えつつ、声も出ない程、一生懸命息をしていたら、目の前で、高砂が服を脱ぎ、手に、瓶を持った。これもゼクスは見たことがあった。高砂は、薬剤スキルも上げていて、これは、その、R18の場合に使える、ローションなのである。VRだから、痛みなく普通に入っていたわけで、これは雰囲気を出すアイテムである。男同士でもこれで水の音が出るというものだ。が――、ゼクスは焦った。

「あ!!!」

 高砂がそれを指につけて、ゼクスの中に指を進めたからだ。しかも、キツイ。ぬるっとして入ってくるし、痛くはないのだが、明らかに、リアルなのだ。

「痛い?」
「い、痛くはないけど、でも、高砂やめろ、これは――」
「痛くないなら大丈夫だよ」
「!?」

 何も大丈夫じゃない。そのまま指を進められて、圧迫感に硬直していたら、軽く折り曲げられた。ビクンとしたら、そこから――振動させられた。最初はよく分からないと思ったら――すぐにゼクスは目を見開いた。

「うわっ、あ」
「……」
「ぁ……嘘、なんだこれ……」

 ゾクゾクした。涙が出てくる。感覚はリアルなのに、感じ方はVRだったのだ。すぐに、腰の感覚が無くなる。ここはリアルだ。しかし広がる気持ち良さは、VRで高砂だとかに教えられたものだったのである。それが一つ一つリアルになり、再実感させられて、塗り替えられていく感覚だ。指が二本になった。ぐちゃぐちゃと音がする。ヌルヌルする。

「あーっ、ぅあ、あ! あ、あ、あ」
「気持ちいい?」
「うう、ぁ、やぁっ」
「泣いてる。可愛いな。何回か、いつものアバターも好きだけど、頭の中、こっちの姿でヤってた。こうしたかったんだよね。中身はゼクスが好きだから、中身がゼクスならどちらでも良かったんだけど」
「あ、あ、あ」

 ゼクスはわけがわからなくて、激しく抜き差しされる指の方しか意識できなかった。そうしていたら――前立腺をいきなりつかれた。体が反り返る。VRと場所が同じだと苦笑された。好きなのは全部分かるけど確認しないとと言って、高砂がゼクスの中をいじめる。

 高砂としても、ゼクスがVRと違う感じ、完全に初めてのようだと分かっているようだった。抜き差し、かき混ぜたり、激しく振動されたり、ゼクスはいちいち涙した。イきたくなった。だが、中でイける感じはしない。もどかしい。あ、ダメだ。

「高砂、俺、死んじゃ、から!」
「なんで?」
「やだっ、もう、頼むからイかせ――」
「挿れていい?」
「うん、うん、あ、ああああああああああ!!!!」

 こうして、高砂が中に体を進めた。その圧迫感と質量に、ゼクスは叫んだ。だが、途中で声も出なくなった。何かこう、征服されてしまったような、支配されたような、犯されて暴かれる感覚がした。動けない。熱い。繋がっている。これがSEXなんだなと理解したくなくても強制的に理解させられた感じだった。

 入り切ると、高砂が動きを止めた。その衝撃で、ゼクス側ももどかしさは収まっていて、そういうのではなく、頭が真っ白だった。呼吸が止まりそうで、そうしたら高砂に「ちゃんと息して」と言われて、必死でそうした。

 そこからゆっくりと、中で馴染んでいた巨大な陰茎を揺さぶられた。それをしばらく受け入れていたら――ズカンと一気に前立腺を突き上げられた。目を見開いた時にはもう、ガンガン貪られて意識が飛んだ。

 無我夢中で首を振り、ボロボロと泣いた。そのまま高砂が放つまで揺さぶられて、強く付きあげられたその時、ゼクスも放った。そうしたら反転させられて、猫のような姿勢にさせられ、体重をかけられて身動きを封じられ、またすぐに再会となった。結合部分からぐちゃぐちゃと音がする。

 もう意味のある言葉が出てこない。手で陰茎をこすりながら果てさせられて、ゼクスは嬌声を上げる事しかできない。もう、経験値が違うとしか言えない。完全に大人の男の高砂に翻弄された。VR内よりも、ずっとリアルスキルがものを言うのだ。そのまま今度は高砂はイかないままで、体勢を変えられて、抱き抱えられ、下から突き上げられた。震えていたら動きが止まり、少し抱きしめてから、乳首を嬲られた。

 優しくこすられ、つままれる。こちらも最初はよくわからなかったのに、そうされるうちに、VRで感じていた快感が出てきて、しかもそれがあまりにもリアルで大きいから、ゼクスは号泣する事になった。腰が勝手に震えだし、つながっているのに胸から広がるもどかしさで、イけなくて泣いた。動いてくれと言ったのに、「ダメ」と言われて、ずーっとそのままで、動いてもらえないのにゼクスは、そこから二度も放った。

 一日に四回も出したのは初めてで、しかもまだイきたいのは変わらず、もう動けないまま、静かに蕩け切った顔で涙をこぼした。何回か意識が遠のき、目が覚めても繋がっている。頭がぼーっとしてしまった。快楽しか頭に浮かばない。そうなったら、やっと高砂が強く突き上げて果てた。その時、前を撫でられて、ゼクスは五度目を放ち、気絶した。暗転したのである。

 目が覚めたら、ドロっと、後ろから精液が出てくるのにゼクスは気づいた。かつ、全身が泥のように重くて、起き上がれない。声を出そうとしたら、かすれて出なかった。指を動かすのも辛い。それでも頑張ったら、高砂がゼクスの起床に気がついた。タバコを吸いながら近づいてきたので、ゼクスは――赤面した。死ぬ程恥ずかしかったのである。

「おはよう」
「……っ、うん」
「色っぽい声。しかも真っ赤だね。もう一回する?」
「死ぬから、やめろ! 俺にも煙草と、できたらお水……けど、起き上がれない」
「大丈夫?」

 高砂が微笑していた。お前のせいで大丈夫ではないと言いたかったが言えない。抱き起こしてもらい、煙草をもらった。銘柄はゲーム内だが、ニコチンなどは完全にリアルだ。飲み物は、アンチノワールのアイスティをもらった。

 これが、なんというか、リアルで販売している品と、同じ味だった。今までは五段階評価の味だったから、こういうリアルなのは無くて、びっくりしながらグラスを見た。

「すごくリアルだ……そして、お風呂に入りたいな……」
「うん。ゼクスがリアルになったのと、SEXに関しては同じ意見で利点なんだけど、その他全部、リアルが良いとは思えない。俺もシャワー浴びたいんだけど、無いからね」
「倉庫窓口鏡とかあるか? 俺の個人倉庫にシャワー室がある」
「あるよ。それ設置して」
「うん」

 こうして、取り急ぎ、仏壇脇の鏡からシャワー室1個を取り出して、窓の横に設置した。すごいシュールな宗教建築になってしまった。中の処理もあるし一緒に入るかと言われて、ゼクスは、聖職者のスキルで、『清浄化魔術』により、体が綺麗にできるのを発見した。だが、それができるのと、シャワーに入りたいのは別の話である。

 汗や体液を消えさせるだけで、匂いや感触が消えるわけではないからだ。高砂は、お腹を壊さなくて良いと言っていたが、ゼクスはそういう問題じゃないと思った。

 高砂が出てくるまでの間、悶々と、男同士でSEXしてしまった点について考えていた。しかも恋人だとかではない。流された。高砂は嫌いじゃないが、かといって恋愛的に好きというわけでもない。考えたことがない。それはあちらもそうじゃないかなと思った。困るのは、高砂は手馴れた様子で態度が変わらないことで、ゼクスのみ、完全に挙動不審の真っ赤である点だ

 。意識しすぎの童貞上がりという感じである。だって、初体験なんだからしょうがない。高砂がシャワーから出てきた後も、真っ赤になって逃げるようにお風呂に代わりに向かったのである。体を重ねたせいだろうが、高砂が妙に格好よく思えて困る。

 ちなみに、チャットは、この内部に入った時に『睡眠中』表示にして、全部遮断してあった。高砂がそうしろと言ったからである。来たいとか言われないようにだという。メールもあるし、それで良いかなとゼクスもそうした。

 これは、『ゼスペリアの教会』と『ハーヴェストクロウ大教会』のメンバーも『事態が落ち着くまでメールにしよう』というのを、ここに来る前に一斉で文字チャットでゼストが流していたから問題ないし、レクスにも『後でメールで連絡を』と言われていたから良い。アンチノワールには、高砂がやはり同じ言葉を流していた。

 遠隔は、一人一個しか使えないので、高砂にゼクスは任せたのである。文字チャットは、後でも閲覧できるし、同時に見られる。

 何やら、昨日の0時に衝撃な開始をしたわけで、1時くらいから高砂とここにいて、多分朝方までSEXしていて……寝て起きてシャワーを浴びている現在、もう夕方の6時だった。クラウンズ・ゲートは、街やフィールドにより夕方だとか朝というのが変わるゲームなのだが、現在は、窓の外を見る限り、現実と同じになっていた。

 シャワーから出て、ゼクスは、とりあえず、浴衣を着た。手頃な着替えが思いつかなかったので、高砂がそれに着替えると言うから、二着出したのである。下着は、今は無い。ゼクスは、下着を生産できるのだが、慌てすぎていて持ってこなかったのである。

「色っぽい」
「!」
「意識しすぎでしょ。よく言われるんじゃないの?」
「な、いや、あの」
「――なんかごめん。思いのほか純情で経験なくて可愛かった。慣れてるんだろうなと勝手に思ってたから、ギャップもあるけど、罪悪感もあるな。個人的には嬉しいけど、もっと時間かけて優しくしてあげれば良かった」
「……」
「後悔はないけどね。ずっとこうしたかったし」
「……」
「そこまで真っ赤になられると、俺のこと好きだと勘違いしそうなんだけど」
「なっ、そ、そういうことじゃない! 恥ずかしくて死にそうなんだ! どうせ俺は経験なんかない!」
「経験なかったの? リアルでって、事だけど。男以外も?」
「うん……」
「……うわぁ、俺、経験とかあんまり気にならないんだけど、今回は死ぬ程嬉しいな。ゼクスの初めてを貰ってしまった」
「!!!!!!」
「優越感というか、なんというか」

 高砂はそう言うと、ゼクスの腕を引いて、抱きしめた。良い香りがする。シャンプーだ。アンチノワールの薬剤POTの一つである。ゼクスも同じものを使ったのだが、なんだか他の人から香るとまた違った。

「ごめん」
「ん?」
「もっとしたい」
「!」

 と、そのままキスされて、ゼクスは気づくと押し倒されていた。そしてそこから、また一晩中SEXした。慣れていないゼクスに、拙い舌使いでフェラをさせた高砂が、そこから教育を開始した。開発も、である。

 VRでもそれは同じだったのだが、本格的にである。全身を全部舐められて、ギリギリの限界まで体を焦らされて、かと思えば連続でイかされて、次第に中だけでイくのも覚えさせられて、ゼクスの体は開発されてしまった。程度で言うと、高砂に抱きしめられて、腰をそれっぽくなぞられると、体が熱を持ってしまうほどだ。