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 なお、この間に、7時からは、俺は桃雪と遊んだ。初回の次の日、個別で旅立つか聞いたら、「本当に良いのですか!? 本気だったとは!」と、驚かれて吹いた。桃雪の他に、琉衣洲と、琉衣洲が支援していた榛名という初心者と、橘宮という桃雪のフレになったという初心者という3人がいる。合計4人での旅路だった。装備の話や職の話、スキルの話をしたり、適宜レベル上げを、戦闘練習を兼ねてやった。俺は回復に回る事が多かった。フィールドの敵属性とスキルのレベル上げの話は、琉衣洲が食いついて熱心に聴いていた。確かにあんまりメジャーじゃないかもしれない。アステナに着いたら、琉衣洲とそちらの確認に遊びに行こうと話した。また、榛名とは、榛名が暗殺者だったから、色々話した。俺も暗殺者だから、仲間である。橘宮は、生産に興味があるみたいだったから、その話が多かった。桃雪とは、これら全部複合である。こちらは、丁度一週間で到着した。夜の七時半くらいに俺は合流して、夜の十時過ぎくらいまで一緒にいた。それ以外は、彼らはレベル上げをしているようで、琉衣洲もそこにいるらしかった。到着後は、三日くらいしてから行こうと琉衣洲と決めたのである。装備支援というか、仲良しになったからあげたのだが、なんか琉衣洲が感動して涙ぐんだのが印象的だった。良い子である。なお、その後一時間くらいはアステナでダラダラして、橘やクライスと話したり、移動スキルで転移できるらしき榎波と話したり(普段攻略組と一緒にいるらしいのに街にもいるからだ)、アルトや副とはチャットをしたり、色々だった。榛名はその後、副のギルドに入った。ラフ牧師のファンみたいだったから紹介したら、副もなんか榛名を気に入ったのである。

 さて、四個目と第四段階と特別スキルを上げる事になった。こちらも時間は変わらない。奴らも本当に廃人だったのである。しかも解説はするがクランチャットでも話さない。話によると、インしても、ギルドホームと別荘、俺とのレベル上げにしか移動しないし、会話はギルドメンバーとしかしていないというのだ! 俺よりもひきこもりだったのだ! 俺がそう気づいて喜んで指摘したら、なぜなのか爆笑された。何故だ?

 それからは、七時半から十一時半まで、琉衣洲と月〜金で、固定で遊ぶようになった。琉衣洲もまた、強さを望んだのである。毎日三時間、スキルのレベル上げに励んだのである。今回は、属性モブの所在地や、スキルとの組み合わせ解説を話したり、職業のクロス習得の話をしたりしたし、琉衣洲は、職業スキルは召喚者しかカンストで無かったから他のレベル上げや、そもそものスキルのレベル上げなどである。時東や高砂とは方向性が異なり、なんというか、イメージとしては、あちらが上級者、こちらが中級者の感覚で、俺は教えた。時東と高砂が聞きにくいと前に言っていたが、琉衣洲くらいの頃が、一番聞く相手がいなかったり、どこが足りないか判断に迷ったり、色々悩む時期かもなと俺は思った。最初に二人でフィールドを見に行ってこういう話になり、それ以後固定となったのである。その後別れてからは、俺は露店に出す武器に銘を入れたり、ギルチャやクランチャットでダラダラ話して、一日が終わる。俺は、六時間くらいは寝たいタイプだ。三時間でも活動できるし、十二時間くらい寝ていられるが、基本的には、である。

 土日の夜は、桃雪と遊ぶか、榎波と遊んでいる。榎波が土曜夜、桃雪が日曜日の夜が多い。来た順で、順番が変わる事もあれば、その日しか空いていないというパターンもある。桃雪とは、旅やレベル上げ、その時に橘宮と生産をしている。榎波は最初、装備相談だったのだが、現在は、奴もまた強さを求めている。榎波は、上げたいスキルが明確にあるから、基本それを一緒にやっている。後は、今まで通り、英刻院閣下と遊んだり、ラフ牧師と遊んだり、ゼストやルシフェリア達と遊ぶ場合も土日の夜であるが、超たまにである。大体が、どこか手伝って、という流れだ。イリスと治癒効果のある聖遺物アイテムを共同制作したりもしている。

 こんな感じで、時東と高砂の方は、それから二ヶ月で終わった。もう連携もばっちりで、聖職者と僧侶として、さらに今回習得分のスキルも使えるので、ラクラクで隠しダンジョンに連れて行った。初めて入ったと喜んでいたが、もう奴らに緊張は無い。遠慮も消えてきた。ちなみに遠慮は、榎波が一番先に消えた。琉衣洲は今でも遠慮している。桃雪は、デフォルトが敬語らしい。橘宮は、俺がすごいとか特に知らないから気楽だ。ちなみに、こちらには、榛名が再合流したので、一緒に三人でレベル上げと旅をしている。途中で、政宗という、40レベルくらいのソロと出会い、榛名達が追いついていたので、一緒にレベルを上げるようになった。政宗もそれから副のギルドに入った。政宗は、復帰組の古参で、ラフ牧師を知っていたらしく、その流れだった。

 こうして隠しダンジョンで200まで上げて、次に移る頃、攻略組が段々難航しだした。丁度琉衣洲が落ち着いてきた頃だったので、琉衣洲も一緒に、ここからは攻略組に参加した。琉衣洲も転移スキルは習得済だ。クライスと橘にも、これを頼まれて教えた。なので、最初のチャット時の桃雪以外は、みんな最前線に集まった。なお、時東と高砂は特別来なかった。行くかと聞いたが、「そのうち、気が向いたら」と言われた。攻略は攻略で超楽しい。200までは4ヶ月弱、300までは半年かかった。なので気がついたら、ギルドができて、あっさり一年たっていた。一周年のお祝いはしなかったが、目標達成のお祝いをする事になり、気づいたのである。なお、俺は達成のプレゼントを用意していた。

「あのな、これを300になったらと思っていたんだ」
「「!」」

 俺は、俺から見て二人にあると良い、装備一式武器も全部およびオシャレなオーダーメイドを作成しておいたのである。白衣もある。私服もあるのだ。二人はしばらく呆然としていたが、それから二人共、満面の笑みになった。

「ゼクス、ずっと言おうと思ってたんだけど、本当にありがとう」
「俺もだ。お前のおかげで世界が変わった」
「あはは。なんだか嬉しいな。こちらこそありがとうな」

 常日頃から俺は自作なのだが、これにより、ギルメン全員がゲーム内に唯一の服となった。和服もある。時東の和服も作ったら、吹かれた。逆に高砂の手術着も吹かれた。良いと思ったんだけどな。

 それにしても、アンチノワールは有名になった。メンバーが、俺の他に高砂と時東だというのも、もう広まっている。これは、高砂が揉めた連中が高砂を探してしつこいらしかったので、俺が全体チャットに『ゼスト、ルシフェリア、あのなー聞いてくれ、高砂と時東がサブマスなんだ、あ、ミス』と、わざとらしく叫んだ結果である。今の誰だとなった後、ゼストが全体チャットで、『ゼクスのギルド名なんだっけー? あ、ミス』『アンチノワール! あ、ミス』とやってくれた結果である。奴はノリが良い。ルシフェリアは普通にクランチャットで「そうか」と返ってきた。爆笑していた。まぁだがこの結果、誰も何も言えなくなったようである。二人の影響力もあるし、アンチノワールの武器も売れていたし、鴉羽商會の人間がアンチノワールにいる、として、噂はとっくに広まっていたのもある。さらにアンチノワール自体が、手に入りやすいのに鴉羽商會と品質同等という評判で購入者が後を立たなかったのもある。まぁどっちも作ってるの俺だけどな。

 さて、新大陸ができて一年半後。これまでの大陸攻略最速で、俺達は、制覇した。大歓喜である。しかも最初は弱かったが、最後の方は、実はアイゼンバルド並に強かったのだが、それでも倒したのだ。やったー! と思った。こちらには、時東と高砂も加勢してくれた。途中からは三人で参加したのである。そして全体的に見て思うが、二人は死ぬ程強かった。スキルを取ったからというより、練度が違う。回復としてもそうだが、時東ですら、威力が桁違いだ。高砂なんてこう、最終破壊兵器みたいな存在である。俺はこれ以上だと言われるし自分でもそう思う。あくまでも全体的に見た場合の話だ。これにより、新大陸セントラルの攻略勢情報は一気に駆け巡ったし、俺も、二人も、アンチノワールも、そういう意味でも広まったのである。榎波や橘もいた。橘も生産ではなく、攻略組として、広まったのである。結果、お祝いをした後の話である。

「私もお前達のギルドに入りたい」
「えっ、実は俺もなんだけど。アンチノワールに行きたい」

 最近いっつもつるんでいる榎波と橘と俺と時東と高砂のメンバーで、ダラダラしていた時の話である。

「それは嬉しい発言だ。時東と高砂が良いなら、俺は良いよ」
「――俺も良いよ」
「つぅかもうお前ら入ってるようなもんだろう」

 二人が笑った。まぁ実際、アンチノワールのギルドホームに二人はいつもいるのだから、それは正しい見解だ。服も俺のオーダーメイドだしな。という事で、俺も頷き申請した。脱退してからの方が良かったかなと思ったら、していたのかすぐしたのかは不明だが、加入がすぐになされた。執権にしておいた。

「部屋は三階の空いてる部屋を使ってくれ」
「ああ。というか、想像以上の資産と露店倉庫とギルド内容で吹いた」
「ありがとうゼクス、っていうか、なにこの資産。俺初めて見たんだけど。生産同盟より普通に多い」

 俺は笑った。そして誤爆する事にした。

「聞いてくれゼストー! 榎波と橘が執権になったー! あ、ミス」
「さっすがゼクス! メンバークオリティ高っ! 生産レベルも神だし! あ、ミス」

 ノリの良さは変わらない。榎波と橘が大げさに咳き込んでいた。

「全体でゼスト相手にタメ語でミスしてしかもフォロー返ってくる上、自分の名前を出された時の心臓止まる感分かった?」
「ゼストが私を知っているのか、というドキドキもあった」
「うん、心臓が止まるな……生産……くぅっ!」
「頑張ろう。前衛榎波&他高砂の戦闘狂と、比較的まったりの俺&生産狂橘の組み合わせの露店組。ゼクスは両方だ」
「あはは。けど、確かに落ち着いたよな。もう少しは、攻略後のバタバタとかあるかもしれないけど、攻略も終わったし、後はその方向性でやるとして、しばらく何する? 榎波もスキル落ち着いたんだろ? 橘はスキルどうかわからないけど。図書室にあるスキル書、一応今は高砂が常に補給してくれてるから十冊ずつあるし、それ見る? あと、二階の他の倉庫の装備とか武器とかオシャレとかは全部自由、他倉庫の料理POTワープ自由で必要物入れるの、資金は露店資産やギルド資産から自由に使う、というのがこれまでの流れだけど、二人ならこのままで良くないか?」
「いいと思おうよ」
「だな。榎波も転売屋じゃないしな。後、橘は裏の生産設備を確認すると良い。多分嬉し泣きする。庭の敷地も。ただしこれは、移転先を見つけるまで仮に置いたものであり、ギルドが落ち着いたらオリジナルを建てるというものだったから、愕然とした。俺もうこれオリジナルで十分レベル。あと図書室には生産のスキル書もある」
「何それまじ神。俺庭と周囲と施設見てくる」
「私は武器などありがたく頂いて部屋に行ってくる」
「行ってこい。橘はその時もっとあった方が良い設備プラス牧場と鉱物系の今置いてないような敷地チェックしてくれ。ないのそうだった、そろそろ体制整えないと」
「チェックは任せてくれ、いってきます!」

 もう少しは見た事があったりするのだろうとは思うのだが、こうして二人はでかけた。