序
大学四年の二月、教育学部だった俺は、結局採用試験に落ちた。
非常勤講師の口もまだ見つけられていない。
憂鬱な思いでいると、姉から電話があった。
「良介、まだ就職先決まってない?」
「……うん」
姉は高校時代から読者モデルをしていて、現在では大学院に通っている。
才色兼備というやつである。
一方の俺は、平々凡々で、大学にもギリギリ入学を果たした。
それでも先生になりたかったので、ここまで来たのである。
「実はね、私の彼氏の従兄弟のお父様が、学園経営をなさっているんですって。私立で、丁度教員を募集してるみたいなんだけど、貴方行ってみたら?」
これはもしや――コネ採用!?
そんなこんなで、俺は私立霊宝学園の理事長室のソファに現在座っている。
「君が、狭山良介先生かぁ」
俺の正面の理事長席に座っている人は、思いの外若かった。
「私は理事長をしている宝之宮時雨。こちらは秘書の真鍋北斗さん」
茶髪の理事長と、金髪の秘書さんに会釈されたので、俺も会釈を返した。
「結論から言うと、合格。四月一日からよろしくね」
こうして俺は無事に、職を見つけた。