こうして俺と井原先生は付き合うことになった。
結局翌日には、俺の方から改めて井原先生に告白していたのだ。

「さ、狭山先生……俺、嬉しくて失血死しそうです」

その告白が台無しになる勢いで井原先生が鼻血を吹いたのが印象的でならない。
俺が遠い目をしたのも納得してもらえるだろう。
それから俺達は周囲になんと伝えるかについて対立した。
なんと、なんとだ。
俺の方が常識を気にしていると思っていたが、俺は言うべきだと思ったのだ。
しかしながら井原先生の方が、秘匿しようと言ってきたのだ。

「俺と付き合っていると知られるのが嫌なんですか?」
「狭山先生、そんなわけが……! 俺が相手じゃ、これまでよりも奪おうと考えて先生の争奪戦が激化すると思うんです。先生が同性も行けると分かっちゃったら!」
「……」
「守るって言いたいけど、俺じゃ守りきれません!」

井原先生は素直だ。等身大だ。俺は――そんな所も好きかも知れない。
こんな時に、ああやっぱり好きなんだなと思う。

そんなこんなで俺達の恋愛的お付き合い――恋人関係は始まった。
王道学園(と巷で言われる)の教師となった俺は、めでたくその色に染まってしまったらしい。だけど、決して後悔はしていない。

だってこんなにも、胸の中が温かいのだから。

王道学園の教師は、決して悪くないなと俺は思う。
その後本採用になっても、俺は井原先生と共にこの学園に勤め続けるのだった。
そんなハッピーエンドで、いったん俺の日々の記録は終わりだったりする。

「もうすぐクリスマスですね。狭山先生はその、欲しい物とか……」
「一緒にいてくれたら十分です」

まだまだ敬語でやりとりする俺達。
それが日常で、そして、ただただ楽しかった。