【第六話】快楽と恐怖と優しさ(★)





「舐めろ」

 69の体勢で、如月が告げた。俺の後孔をくちゅくちゅと弄りながら、楽しそうに言った。俺の体は言われた通りに動き、俺は如月の太く長いものを咥える。亀頭を口に含んだだけで、俺は苦しくなった。

「もっと深く」
「っく……ン」
「頬を使って、両手を添えろ」

 如月に指示をされながら、俺はフェラをする。いいや、イラマチオに近い。
 息ができないほど苦しくて涙ぐみながらも、俺は必死で口を動かす。

「んぅ、ぁ」

 その時如月の長い指が、俺の前立腺を刺激した。トントンと優しく刺激されると、俺の陰茎が反り返る。タラタラと先走りの液が垂れていき、如月の腹部を濡らす。

「口を離すな」
「ン――!」

 今度は激しく前立腺を刺激されたので、俺は慌てて言われた通りにした。するとまた優しくトントンとするように指を動かされる。

 そうして一時間ほど、俺は内部を解されていた。

「もういい、ヘタくそ。まぁなんとか勃ったな」
「……ッ」
「自分で俺の上に乗れ」

 勿論その言葉にも俺は逆らえない。
 俺は起き上がり、如月の方を向いて、ベッドに膝立ちする。そして屹立した巨大な尖端に、己の菊門をあてがった。両手を如月の型に置くと、腰を掴まれる。俺は震えながら、ゆっくりと腰を下ろした。すると陰茎がめり込んでくる。

「あ、あ……っ……」

 押し広げられるような異物感がし、なんとか亀頭が入ってきた。ギュッと目を閉じ、なんとか半分ほどまで体に受け入れる。

「遅ぇよ」

 呆れたようにそう言うと、ぐいと如月が俺の腰を下に動かした。

「ひぁあああ、ひゃ、あっ、ぅ――ンあ――!! 深い、深い、待って、あああああ」

 俺は如月に抱きつく。最奥まで挿いってきた如月の楔が、俺の結腸のさらに先の雲特有の気管を容赦なく貫く。そうして如月が、下から突き上げ始める。

「あ、あ、あ」

 その度に、俺の口から嬌声が漏れる。俺はいやいやとするように泣きながら首を振る。髪が揺れた。気持ちよすぎて、何も分からない。如月の肉茎が触れている全ての箇所から快楽が響き、俺は思いっきり締め上げた。俺の内側が、如月の形を覚えていく。既に後孔は、如月の形に縦に形が変わりつつある。

「イく、イくぅ」

 俺は泣きじゃくりながら、己の陰茎を、如月の引き締まった腹筋にこすりつける。

「ああっ! ア――!!」

 強く疲れて射精された時、その衝撃で俺は果てた。
 しかし今日も如月の動きは止まらず、ダラダラと白液が垂れてきてよりスムーズに動くようになった俺の中を、今度は腰を回しかき混ぜるように動かしてから、さらにズクンと突き上げた。俺は意識が遠くなりそうになり、口から涎を垂らす。

「もう嫌だ、やだ、止めろ、止めてくれ、助けて、ああああああ。気持ちいい、やぁあああ、おかしくなる、待ってくれ――うああああ」

 如月は、この日も俺を抱き潰した。
 激しく濃密な交わりは朝方まで続き、俺は自分がいつ意識を手放したのか、覚えていない。

 次に目を覚ますと、この日は如月が、俺の隣に寝転んでいた。そして俺の顔をじっと見ていた。

「……」
「起きたか」
「……ああ」

 俺は気怠い体で頷く。啼きすぎて、声が枯れていた。

「しっかし綺麗な顔をしている風紀委員長様だな。お前の声も、たまらねぇ」
「……」
「蝶の肉や体液を喰わせると、それに似た子が生まれるとは言うが、俺はお前に似た子供が良い。だからなにも喰わせてはやらん。そうすれば、蜘蛛か俺の特徴を受け継ぎやすくなるからな。お前の顔の子が生まれたら、実に楽しそうだ」

 如月は、新しい玩具を手に入れた子供のような目をしていた。仮に俺似の子供が生まれたとしたら、如月は嬲って弄ぶのだろうか?

「お前も早く、子を見たいだろ?」
「……」
「俺様との愛の結晶だ。俺様の子を産める誉れを誇れ。ん?」
「……っ」

 俺は唇を引き結び、ポロポロと涙を零す。辛い、辛くてたまらない。

「なんで泣くんだよ。あ?」

 すると純粋に不思議そうな顔をして、如月が俺の頬を拭った。

「怖いからに決まってるだろう。俺は、卵なんて産みたくない。死にたくない」
「怖い? この俺様の卵を産むのに? 最高の幸福だろ」
「……っ、なんで、なんで俺なんだ。なにも、こんな……そんなに俺が憎かったのか?」

 敵対しているだけでなく、俺達は学業においても運動面においても、首位を競うライバルだ。いつも如月は、俺を忌々しそうに睨み付けていたように思う。

「? 憎む? お前は何を言っているんだ?」
「……だって、そうじゃなかったら、こんな……っ」

 俺の涙は止まらない。すると何度も何度も如月が俺の涙を拭い、それから俺を抱き寄せて、髪を撫でた。その感触が優しくて、俺は震えながら、さらに泣いた。急に優しくされたら、堰を切ったように涙が溢れた。

「俺はいつもお前を見ていた。綺麗だと思っていた。だから相良の子が欲しいと思ったんだ。憎いと思ったことなんてない」

 そういうと、如月が俺の額に口づけた。