【十四】一日目の夜






 恢斗が出てきたので、入れ違いに僕は浴室へと向かった。広い浴槽のお湯に浸かり、ゆっくりと手足を伸ばす。寮の部屋以外に泊まるのも久しぶりだ。疲れが溶け出していくような感覚を味わった後、僕は泡立てたボディソープで体を洗い、髪や顔も洗った。その後バスローブに着替えて外へと出ると、恢斗が窓際のソファでタブレットを見ていた。あれは生徒会の支給品であるから、仕事をしているのだと思う。もうすぐ行われる球技大会はGWがあけてからすぐなので、最終調整の段階みたいだ。風紀委員会でも審判をする際の行動について二階堂や副委員長から周知された記憶がある。

 暫しの間、僕は真剣な表情をしている恢斗に見惚れていた。すると僕の視線と気配に気づいた様子で、すぐに恢斗が顔をあげて僕を見た。

「あがったのか。そろそろ寝るか」
「う、うん。仕事はいいの?」
「今終わらせたところだ」

 それを聞いてから、僕は当然のように一つしかないベッドを見た。巨大なダブルベッドであるから、二人で寝るのに問題はない。タブレットをテーブルに置き、恢斗が立ち上がって、僕の正面に立った。そして優しく僕を抱きすくめた。その体温を感じながら、僕もおずおずと腕をまわし返してみる。暫くそうしていると、恢斗が片腕で僕をより強く抱きよせ、もう一方の手で、僕の顎を軽く持ち上げた。

 そのまま優しいキスが降ってきた。反射的に目を伏せた僕は、柔らかな感触に浸ってから、薄っすらと唇を開ける。すると今度は腰から僕の後頭部に手をまわした恢斗が、僕の髪を撫でながら、より深いキスをした。ゆっくりと舌を絡めとられる。そのまま頭を撫でられながら、僕は何度も角度を変えながら、恢斗とキスをしていた。ふわふわとした心地になった時、恢斗が唇を離して、僕を寝台へと促した。

 恢斗に押し倒された僕は、すぐにバスローブを開けられる。
 こうしてホテルでの夜が始まった。

「んン」

 恢斗が左手の指先で僕の鎖骨をなぞりながら、僕の右の首に口づける。ツキンと疼いたので、キスマークをつけられたのだとすぐに分かった。それから左右の胸をじっくりと愛撫されると、僕の陰茎はすぐに反応を見せ始めた。

 恢斗は片手を僕の陰茎に添えると、瞳を獰猛に変える。そして右手では、僕の後孔を撫でた。それだけで僕の背筋を、ゾクゾクとしたものが駆け上がっていく。窄まりから二本の指が入ってきた時には、嬌声が堪えられなくなった。

「ぁ……ァあ! んンっ、ッ……あぁ……ン」
「もうドロドロだな」
「あ、あ、っ……言わないで」
「俺で感じてくれて嬉しいぞ」

 かき混ぜるように指を動かした恢斗が、それからすぐに押し入ってきた。硬い楔で穿たれた瞬間、僕は体を震わせる。恢斗の熱が触れている個所から、全身が蕩けてしまいそうになる。ぐっと根元まで挿入した恢斗は、そこで一息つくと、涙で潤んだ僕の目に視線を向けてきた。

「好きだ」
「ん、ぁ……ァっ、ぼ、僕も……んン――!!」

 恢斗が激しい抽挿を開始した。その度に水音が響き始める。喉を震わせ声を上げながら、僕は思わず恢斗の体に両腕をまわす。そんな僕の腰骨のところを掴んで、恢斗が何度も打ち付ける。僕の陰茎が恢斗の引き締まった腹部に擦れる。そうしている内に僕は射精したが、恢斗の動きは止まらない。

「あ、ああ、ァ! ん、ぁ!」

 射精の余韻に浸る事は許されず、そのまま最奥の感じる場所を、何度も何度も突き上げられ、更なる絶頂を僕は促された。恢斗が放ったのは、僕の中が収縮したその時の事だった。ぐったりとした僕が寝台に沈み込むと、陰茎を引き抜いた恢斗が、僕の体を反転させた。そして僕のうなじをぺろぺろと舐め始めた。

「んぅ」

 そうされると僕の体はもうぐずぐずになってしまい、僕はポロポロと涙を零すしかない。

「ああぁ! あ、ァ!!」

 恢斗が僕のうなじを噛んだ。プツンと僕の理性が途切れる。それからすぐに、今度はバックから恢斗が挿入した。しかしその動きは緩慢で、全然足りない。

「恢斗、あ、恢斗、っ」

 自然と僕の腰が揺れてしまう。僕の腰を持つと、じっくりと恢斗が抜き差しを始めた。浅い位置まで引き抜いては、ゆっくりとより深いところまで陰茎を進める。僕は震えながら、ギュッと目を閉じる。

「もっともっと紫樹が欲しい」

 恢斗の声は少しだけ掠れていた。そうしてまた、激しい抽挿が始まった。
 この夜も、何度も中を、恢斗の白液で、僕は染め上げられたのだった。


 ――翌朝。
 いつもの週末よりは激しくなかったので、気怠さはあったけれど、僕は体を起こす事が出来た。恢斗が綺麗にしてくれたようで、僕の体は綺麗になってはいたけれど、朝も僕は入浴した。恢斗も同様だったようで、シャワーを浴びた後の様子で、タブレットに向かい仕事をしていた。恢斗の腕の中で目を覚ます事が増えていたけれど、たまには別々の朝もあって当然だと思う。テーブルを挟んで正面のソファに座り、僕はホテルに備え付けの冷蔵庫から取り出した、冷たいお茶を静かに飲んでいた。既に窓の外には、良く晴れた青空が広がっている。

 朝食はホテルのレストランで食べる事とし、それを終えてから、僕達は恢斗の家へと向かった。