【二十七】「どんな食べ物が好きだ?」(☆)
レストとミスカが出て行ってからすぐ、ルカス陛下が俺の頬に両手で触れた。
「俺の事が好きか?」
「好きです」
「俺のどこが好きだ?」
「存在!」
「くっ……そ、存在……ええと、俺の顔は好きか?」
「好きです!」
「俺の性格は好きか?」
「好きです!」
「俺のその……性技は好きか?」
「大好きです……って! 何を言わせるんだ!」
思わず俺が抗議の声を上げると、ルカス陛下が今度は両手で自分の顔を覆った。
「俺と、もっと寝たいか?」
「寝たいです! おい、やめろ!」
「俺にどうされたい?」
「抱きしめて! いや、だ、だから――」
俺が思わず本音の数々を口にすると、ルカス陛下がギュッと俺に腕を回した。実際そうされたかったのだが、照れてしまう。長い指が、俺の背中に触れている。
「どんな食べ物が好きだ?」
「卵」
「どんな男が好きだ?」
「ルカス陛下! あ」
「……好きな本は?」
「今は、眠りの森の王子様」
「理由は?」
「陛下にもらったから! ちょ」
「ああ、もう、愛おしい、大好きだオルガ」
強く俺を抱きしめなおすと、俺の額に陛下が口づけた。そのまま、俺の体を抱き抱えると、ルカス陛下は寝台に俺を下ろした。
「どこが好きか、教えてくれ。正直に」
「え?」
「こんなチャンス――あ、いや、病い、滅多にないからな」
「それはそうだけど、え?」
ポツポツとシャツのボタンを外されて、俺は呆然とした。
「ン」
するとすぐに、ルカス陛下の唇が俺の首筋へと降ってきた。吸われる感触に、体がピクンと跳ねる。直ぐに一糸まとわぬ姿にされた俺は、シーツに後頭部をあずけながら、陛下を見上げた。
「俺とするのは好きか?」
「うん」
「本当に?」
「本当だ……いや、あ、あの……嘘を言えなくなってるのに、なんて言うことを聞くんだよ!」
「――しても良いか?」
「うん」
「して欲しいか?」
「うん――って、おい! やめろって!」
陛下は、俺にいちいち言わせている! 酷い! こんなの恥ずかしいではないか。
「右耳と左耳、どちらが好きだ?」
「んっ」
俺の右耳の後ろを指でなぞりながら、左の耳元でルカス陛下が囁いた。吐息が耳に触れる。俺は身を固くして、睨めつけながら言った。
「右!」
「そうだと思っていた。じゃあ、こちらは?」
続いて陛下は、俺の右胸に指先で触れた。左胸の突起には舌を這わせる。
「胸嫌い!」
「どうして?」
「下のほうが気持ち良い!」
「――もっと開発しないとならないな」
ルカス陛下がにやりと笑った。俺はそんな事は求めていない! 俺の本心は、直接的に陰茎を触って欲しいという願いだ! しかしこんな風に本音を口走らせられると、恥ずかしい。
「陛下」
「ん?」
「意地悪をしないでくれ」
「――っ、どうしてそういう可愛い事を言うんだ! これからじっくり、どこが好きか聞こうとしていたというのに!」
「そんな事、聞かないでくれ!」
「それは、聞かずとも察しろということか?」
「違う! 恥ずかしいんだ……」
「恥ずかしがっているオルガが可愛い……くっ、しかし、嫌がる事はしたくない」
「うん、しないでくれ」
陛下は俺の言葉に唇を噛むと、何かを非常に迷うような顔で、しばしの間沈黙していた。それから、長い間をとった後、俺の額に自分の額を当てた。
「分かった。嫌われたくはないからな」
「嫌いになることはないけど」
「では、もっとしても良いか?」
「……普通になら。変なことを言わせないなら」
俺が小声で同意すると、陛下が両頬を持ち上げた。そして笑顔で、俺の陰茎に手を添える。筋を舌で舐めてから、ルカス陛下はチラリと俺を見た。
「通常の範囲であれば聞いても良いか?」
「へ? ン、ああっ……うん」
「気持ち良いか?」
「それ通常の範囲でも、聞かなくてもわかるだろう! ルカス陛下は、こうされたら気持ち良く無いのか?」
「オルガに舐めてもらった事が無いから答えようがない」
それを聞いて、俺は上半身を浮かせた。起き上がりながら、ルカス陛下を見る。
「俺も頑張る! その代わり、ルカス陛下も気持ち良いかどうか教えてくれ。だって、言われないと分からないからな」
「!! 良いのか!?」
俺の言葉に、するりとルカス陛下が下衣をおろした。あらわになった陛下の肉茎を見て、俺の物より大きいなぁと思った。ちょっとイラっとした。俺だって、決して小さくはないと思うのだが。陛下のブツはでかい。格差社会だ……!
「どうしたらいい?」
「オルガ、では、咥えてくれ」
「っ、う、うん……」
寝台の上にあがってきた陛下の陰茎を、俺は前のめりになって口に含んだ。亀頭まで飲み込んだのだが、既にその時点で息苦しい。なので一度顔を離し、先ほど陛下にされたように、筋を舌でなぞる。
「……オルガ、くすぐったい」
「ン……これは?」
続いて雁首を唇で重点的に擦るように刺激した。すると陛下が嘆息した。
「眼福だ。ただ、病気でないが本音を言うと、気持ち良くない」
グサッと俺の胸がえぐられた。思わず涙目で陛下を睨む。
「もうやらない!」
「手本を見せよう」
「いい! もう二度とやらないからな! 手本なんて必要ない!」
「そう言わないでくれ、眼福だったんだ、そこは本心だ。オルガが俺のものを咥えていると思うだけで、体が熱くなる。そういう意味では、気持ち良かった。ただ、もう少し、技量が欲しい。オルガは真面目だから、きっとすぐに出来るようになるだろう。簡単な仕事だ!」
そう言うと、陛下が俺を再び押し倒した。そして太ももを右手で持ち上げると、左手を俺の陰茎に添えて、舌を這わせる。
「んっ」
「じっくりと教えてやるからな」
ルカス陛下はそう言うと、端正な唇で俺の陰茎を飲み込んだ。深く咥えられて、俺は目を見開いた。