【五】勇者パーティの性処理魔術師(=僕)、魔王に捕まる。(★)
僕の生活は、変わった。
朝起きて、食事を用意し、テントを片付け、魔族を倒し、食事を用意し、魔族を倒し、テントを設置し、食事を用意し、そして――三人に抱かれる。
どんなに疲れきっていたとしても、この流れは変わらない。
僕の安息と言えた、睡眠時間すら失われたのである。
荷物持ちも、相変わらず僕だ。
しかも――当初こそ、僕側の快楽もそれとなく煽ってくれた彼らであるが、それはすぐに無くなった。僕は、食後、テントに先に入って、自分で香油付きの玩具を中に入れて、解しておくよう命じられた。抱かれている最中に強制的にYESと言わされてしまってから、断れない流れで、自分でほぐし続けている……。そして、中に入ってきた彼らに、自分から乗っかっている。自分で動くのが面倒だという勇者の上に乗って腰を振ったりしている。自分で勃たせるのが面倒だというアルクス殿下の陰茎を口に含むのも、日常茶飯事だ。それはマスティスも同じである。
こんなのは嫌だと、最初、僕は言った。
だが――快楽を一度教え込まされてしまってから、僕は逆らえなくなった。
誰か一人にでも突っ込まれて、感じる場所を突き上げられながら果てる快楽。
虜になってしまった僕の体は、逆らえない。三人がかりで攻められたりしたら、もう訳が分からなくなり、何にだって「はい」と返事をしてしまう……。こんなにも自分の体が淫らだと、僕は知らなかったし、知りたくもなかった。
四ヶ月目に差し掛かる頃には、すっかり僕の体は作り替えられていた。
夜、テントに入るだけで、僕の体は期待して反応するようになってしまった……。
辛いのに、嫌なのに、気持ちが良いのである……。
しかも、最近の裏・大陸新聞には、『勇者パーティの性処理魔術師』なんていう悪口も書かれるようになった。キスマーク付きの首筋の写真が出たりしてしまっている。もう……仮に旅を終えても、僕は恥ずかしくて実家には帰れない。両親に合わせる顔が無い。悪口というか、事実であるし……。
僕が魔族に捕らえられたのは、そんな風に鬱屈とした胸中で過ごしていた半年目の事だった。いつもの通りに魔族討伐をしていたつもりだったのだが――実は、それは魔王軍の罠だったのである。
大陸新聞や裏・大陸新聞とは異なり、魔王軍は、きちんと把握していたようだった。
――討伐を主に行っているのが、僕であると。
魔族に紛れ込んでいた魔族四天王の一人が、瞬足で僕を気絶させたようだったが、それを理解した頃には、既に僕の意識は無かったようで、次に瞼を開けた時、僕は両手首に鎖を嵌められ、壁に張り付けにされていた。
「そなたが、勇者パーティが誇る最強の魔術師か。我が配下の魔族や魔獣を痛めつけた極悪人の」
その言葉で、蒙昧としていた意識が、はっきりと覚醒した。
視線を向け――僕は目を見開き、息を飲んだ。
そこに立っていたのは――……魔王だったからだ。
魔王だと分かるのは、魔王にのみ着用が許されていると人間にも伝わっている紋章付きの外套を纏っていたからというのが、まず一つ。他には、このように強い魔力を持つ存在など魔王以外には考えられないという事も挙げられる。
長身で肩幅の広い魔王は、暗い闇夜のような瞳をしていた。
――とても人間とは思えない。魔族ならではの美というより、人間には到達不可能な端正な顔の造形をしていた。
歩み寄ってきた魔王が、僕の顎を指で持ち上げた。体が拘束されているため、抵抗一つ出来ない。息をするだけで強い魔力に、僕の体は凍りつきそうになる。
「どうしてくれようか」
「……」
「我が配下を痛めつけた報い、しっかりと受けてもらうぞ」
そう言って、魔王が無表情だった顔に、嘲笑を浮かべた。ゾクリとした俺の前で、魔王が指をパチンと鳴らす。すると――場所が変化した。気づくと俺は、天蓋付きの豪奢な寝台に、仰向けに拘束されていて、太ももを立てた状態で開かれていた。服が消えていた。外気が肌に触れる。周囲には、甘ったるい匂いが漂っていた。
「さて、どのように啼くことやら」
魔王はそう口にすると、長い指先に、瓶から透明な液体を垂らした。
その指で、僕の陰茎を撫でる。
「!」
ビクっとした僕に対して、気を良くしたように魔王が笑った。
形の良い唇の両端を持ち上げてから、僕の中に指を一本差し込む。
「ン」
「自分が何をされるか、分かっているか?」
「……」
僕は、答えられなかった。何せ、勇者パーティの旅で教え込まれている。
しかし目の前の魔王は、どことなく、僕に経験が無いと思っている風だったからだ。
「ぁ……」
香油ですんなりと入った一本の指が、ゆっくりと振動を始めた。
生み出された快楽の予兆に、僕の口から声が漏れる。
「もっと啼け」
その言葉に――僕は、言葉に詰まった。
普段は、テントの外に万が一嬌声が漏れたら困るからだとか、煩いだとかと言われて、なるべく声を出さないようにと指示されていたからである。
「ァ……ぁ、ぁ……ン」
ピクンと僕の体が跳ねた。ゆっくりと抜き差しされ始めた指の先が、感じる場所を甘く刺激したからである。
「ここが好きか?」
「……っ……ぁ、ああっ」
僕は答えなかったが、魔王はそこばかりを刺激し始めた。
優しくつついては、指を引き抜き、そこを目掛けて挿入しては、時折力を強める。
「ひっ……ぁ、……ああっ……あ、ア」
それを繰り返される内、はっきりと僕は脳裏に『足りない』という言葉を思い浮かべた。それは――指が二本に増えた時も同じだった。緩慢に緩慢に、指を増やした魔王は、僕の中をほぐしていく。ゆるゆると抽挿し、時に指先を広げて、中を暴く。
初体験の時から考えても、こんなにも長時間ゆっくりと、他者に内部を慣らされた事など無かった。香油をさらに垂らした魔王は、じっくりと僕の内壁をなぞる。その内にかき混ぜるように動かし、そうしてから二本の指先で感じる場所を刺激する。
「あ、ああっ」
前立腺を指が掠める度、僕は大きく啼いた。
そうすると――魔王は、意地悪くそこから指をそらす。
とっくに僕の前はそそり立っていて、たらりと透明な汁が溢れ始めていた。
「ま、魔王……ぁ……」
「なんだ?」
「は、早く……早く、早く挿れてくれ……」
気づくと僕は懇願していた。涙ぐんでいた。
すると魔王が、すっと目を細めた。
「――我がものは、人間のものとは異なる。もっと慣らさなければ、辛いのはそなただ。仮に人間であったとしても、この程度しか慣らさないのでは、辛かろう?」
「ぁ……ぁ、ああっ、や、や、駄目だ、僕、もう……やぁっ」
「なるほど。よくは分からぬが、真の快楽を知らぬようだな――思ったよりも、楽しめそうだ」
魔王はそう言って、唇を舌で舐めた。
「ン、んっ」
それから、僕の中から指を引き抜き、伸し掛ってきた。
僕の額にキスをし、耳の付け根に唇を落とし、それからねっとりと舌先で首筋をなぞってから、鎖骨に吸い付く。僕の全身が震えた。這う舌は、その後僕の左の乳頭を甘く刺激し始める。ガクガクと僕は太ももを揺らしたが、拘束されているため、閉じる事は出来ない。その僕の両足の間にいる魔王は、そのまま僕の全身を舐め始めた。
「いやぁっ、ぁ、ぁあっ」
全身は、とっくに勇者達に開発されていた。だから、どこを舐められても感じる。しかし彼らの場合、僕の中に挿入しながら、別の誰かが舐めていた。だから、このように舐めるだけの刺激というのは初めてだった。
「う、うぁっ……ぁ、ああっ」
足の指をしゃぶられ、僕は泣いた。涙がポロポロと溢れる。更なる刺激を待ち望んでいた。早く貫かれたかった。
「ひあっ、あ、あ、ああっ」
そうして、再び指が、僕の中に入ってきた。また、一本だけだった。
そして丹念に丹念に、僕の中で魔王は指を動かした。
長時間そうされて、二本目が入ってきた頃には、僕は首を振ってむせび泣いていた。
もどかしい。焦れったい。体が解放を求めていた。
「あ、あ、あ」
三本目の指が挿入された。バラバラに動く長い指先に合わせて、僕の喉からは声が漏れる。押し広げられ、ドロドロに蕩けた僕の内側は、香油の音を響かせている。自分でも、菊門からぬめった香油が垂れているのが分かる。この部屋の甘い匂いの正体は、これらしい。魔王が、三本の指を揃えて、動かした。時折指先を折り曲げて、前立腺を突く。
「あン――!! ん、んっ、ぁ、あ、ああっぅ」
「そろそろ良いか」
魔王が呟くように言ってから、肉茎を取り出した。
既にそそり立っている魔王の楔を一瞥し、僕は一瞬硬直した。
――あんまりにも凶暴だったからだ。太さも、長さも、桁違いである。
人間のものとは違う――その言葉は、本当だったのだ。こんなの、入るわけがない。
そう思った一瞬後には、何も考えられなくなった。
「うあああああああああ!!!」
ググッと挿入されたのである。まず、最も太い亀頭部分まで、迷いなくめりめりと進められた。僕の菊門は限界まで広げられ、中もキツく絡みついているのが、自分でも分かった。僕の内側は、魔王の陰茎の形にされていく。
「あ、あ、ああっ」
「もう我が楔でなければ満足できぬ体となる――誰としても、そなたの体は我の形を忘れぬようになった」
「うあ、あ、あ、ひっ、あ、壊れるっ、ン――!!」
巨大な魔王の陰茎が、更に僕の中に進んでくる。あれほど中に質量を求めていた僕の体も、さすがに恐怖していた。脈打つ魔王の陰茎は、僕の中をどんどん暴いていく。
「あ、あ、ああっ」
「まだ半分も入っておらぬわ」
「やぁっ、無理、無理だっ、入らな――あああああああああ!!!」
その時、奥深くまで一気に進められて、僕の背が仰け反った。もうこれ以上奥なんてないと思って、僕は震えた。すると魔王が喉で笑った。
「やっと半分だ」
「うあ、うあああっ、嘘、やぁあっ!!」
更に腰を進められる。そしてまた一度止まり――最後は激しく一気に挿入された。
「全部入ったぞ。無理では無かろう?」
「あ、ハ、っ、は、はっ」
僕は必死に呼吸した。努力しなければ、吐息できない。それほどの衝撃だった。全身が、脈動する魔王の陰茎を意識していた。こんな凶器を動かされたら、僕はどうなってしまうのだろう……? 涙を零しながら、僕は怯えた。
「――気持ち良かろう?」
「ひっ!!」
その時、魔王が本当に軽く腰を揺すった。瞬間、僕の全身に快楽が走った。律動などされなくても、僕の中を全て満たしている魔王の陰茎は、揺れるだけで、僕の感じる場所全てを刺激するらしい。
「やぁっ、あ、あ、ああっ、あ、あああっ」
「――美しいな。人間にしては濃密な魔力も美味であるし、その蕩けた顔が、何とも言えぬ。青闇のような瞳、漆黒の髪、色白の顔ばせ……ふむ。貶めるのも良いし、堕とし甲斐もある顔立ちをしておる。つい虐めたくなる強気な瞳がたまらぬ」
「あ、ああっ、は」
「快楽に弱い淫乱な体も我の好みだ」
「嘘、嘘、あ、あ、ああっ、やぁあっ」
前立腺をその時、亀頭がグリグリと突き上げた。目を見開いた僕は、迫り上がってくる何かを感じた。これは、勇者パーティにおいてもたまに感じた事がある。だが、その正体を僕は知らなかったし、それが続くとどうなるのかも知らなかった。
「あ、ああっ、あ、あああ!! あ!!」
「中だけで果てよ」
「やぁああああ!」
魔王が、僕の陰茎の根元を押さえた。普段だったら、そこを突かれたら、迫り上がりきる前に、僕は射精して果てる。だというのに、戒められた結果、酷い熱のような快楽が迫り上がってくるのが持続した。そのまま――僕の頭は、真っ白になった。
「うあああああああああああ!!!」
射精していないというのに、圧倒的な射精感に苛まれた。
それも、一瞬ではない。ずっと出ているような感覚がした。
「我の形に、もっともっと慣れるが良い。慣れきるまで、このままだ」
「あ、あ、ああっ――あア――!!」
魔王が僕の陰茎から手を離し、今度は僕の腰を掴んだ。
そして奥深くまで貫かれた状態で、僕は啼かされる事となった。
動きを止めた魔王を、僕の内側が蠢き、形をじっくりと覚えていく。
その内――僕は、再びもどかしさを感じ始めた。腰が一人でに揺れそうになる。揺らす事が少しでもできれば、魔王のものは大きいから、気持ちの良い場所に刺激が届く。しかし、魔王はガッチリと僕の腰を掴んでいるし、太ももを開かれる形で拘束されている僕は、震える事しかできない。全身がカッと熱くなり、汗ばんでくる。息が上がる。
耐え切れなくなって、僕は哀願した。
「や、お願いだ、あ、あ、ああっ、動いてくれ」
「ならぬ」
「あ、ああっ、ン、あ」
「我に挿れられているだけで、果てる体になるが良い」
「ゃ、あ、ン――っ!! やぁっ!! あ、ああっ!!」
すぐに、魔王の言葉通りになった。
繋がっているだけだったが、再び体に何かが迫り上がってきたのだ。
そして今度のその感覚は、真っ直ぐに射精感と結びつき、僕の前が弾けた。
飛び散った精液が、魔王にかかる。すると魔王がニヤりと笑った。ぐったりとしながら、僕はそれを見ていた。汗で濡れた髪がこめかみに張り付いてくる。
「我がものでよがるそなたが愛おしく思えてきた。愛い」
「あ、あ、ああっ、ぁ……ぁ……ァ」
「このように心が動かされたのは初めてだ。これを人間は、恋と呼ぶのだろうな」
「ああ、あっ、ン、あ、ああっ」
「我はそなたの体の虜になってしまったようだ」
「や、あ、あ、また、出る、あ、ア」
再び繋がっているだけで、僕は果てた。体が熔けそうだ。射精しても射精しても、体の内側に快楽が残っている。もっと激しく貫かれて思いっきり果てたいという願望が顔を出す。
「ずっとそなたを見ていたい」
魔王はそう口にしたのを最後に、じっと僕を眺めるだけになった。
僕一人が喘ぎながら、何度も何度も吐精する。繋がっているだけだから、ブルブルと全身が震え、時に気持ちの良い場所に少しだけ強く当たるだけで、絶大な刺激となるようになった。そのまま――三日間、僕はずっと、屹立した魔王の凶悪な楔に穿たれる事となった。一切、動かれず、僕は我も忘れて、気づくと快楽に溺れていた。