【四】性処理も雑用に含まれていた、だと!?(★)




 僕にとって(マイナスの意味で)衝撃的な事態が発生したのは、三ヶ月目の事だった。

「花街に行くお金……!? ゆ、勇者パーティの旅の資金は税金だし……そ、そんな不埒な……」

 僕の声に、勇者が目を細めた。
 この日、勇者が言いだしたのである。

「溜まった。次の街では、色を買う」

 小さい頃から戦闘三昧だった僕は、こういった話題には疎かった。
 だが、花街が売春・買春の場である事は知っていたし、勇者が性欲を抑えきれないと言っている事くらいは理解できた。

「それに、勇者パーティが花街に行ったなんて噂がゴシップ誌に載ったら困るだろう……」

 僕が言うと、勇者が不機嫌そうな顔になった。腕を組んだ勇者は、舌打ちしながら僕を見ている。するとアルクス殿下が言った。

「確かに噂が立つのはまずいですね。こちらのテントの中であれば、魔王対策として、盗聴・盗撮は完全に封じられていますから、行くのではなく、こちらに処理手段を設けるべきじゃないかな?」

 どういう意味なのか、これは僕には分からなかった。
 すると、マスティス神官が続けた。

「良いですねっ! 神殿は、基本的に男同士が多かったから、実は時々、ムラッムラしてたんです」
「気が合うよね、僕達。僕も下手に女性の相手をすると王族としてまずいから、これまで男相手ばっかりで、正直ヤりたくてさぁ。顔も良いし、体も良さそうだしね」

 答えたアルクス様は、腹黒そうな微笑を深くした。
 ――?
 意味が分からず首を傾げていた時、勇者が顎で頷いた。

「なるほど、そう言う事なら、悪くないかもな」

 結果、三人がそれぞれ頷いた。その後、話は続かなかったので、僕はその話は無くなったのだろうと一人片付けて、宿屋の手続きに向かおうとした。久しぶりにベッドで眠る事が出来る。経費削減をしながらの旅だから、決して豪華な宿というわけでは無いのだが、普段のテントの寝枕と比べたら、全然違う。

「――いいや、今日は宿を取らない」

 しかし、僕は引き止められた。へ?

「どうして?」
「お前、昼間の話、聞いていなかったのか? 今夜はテントだ」

 勇者が俺を蔑むように見た後、きっぱりとそう言った。全部聞いていたと思うが、テントになったというのは、初耳だった。ぐるぐる考えつつ設営する。もしかして――花街から内密に、誰かをテントに呼び寄せるのだろうか? だとしたら……その間、他のメンバーはテントから出ていなければならない。テントは四人用だ……。

 溜息を零しながらテントを張り終え、僕は夕食に酢豚を作った。
 僕の料理の腕前は、どんどん向上している気がする。
 旅を終えたら……料理人をしながら長閑に暮らすのも良いかもなぁ……。

 食べ終えてから、テントに入った。何だか、「早くテントに行きましょう」とアルクス殿下に肩を叩かれたのである。首を捻りつつ中に入る。四人で次々と中に入った。密談でもあるかのような流れだった。

 ――そして。


「や、止め、止めろ! 止めてくれ!!」

 僕は……現在、服を剥かれている。
 後ろから僕を抱き抱え、脇の下に両腕を回しているのは、アルクス殿下だ。引き裂くように強引に、僕のローブの紐を解き、その下のシャツを破った。左横からそれを手伝ったマスティスは、続いて僕のベルトを外した。右横に立っている勇者は、濃いエメラルドの小瓶の蓋を引き抜いている。下衣を下着ごと脱がされた僕は、正面に回ったライトを見た。恐怖で涙が浮かんでくる。ようやく僕も理解したのだ。彼ら三人は――僕で性欲を解消するつもりなのだ……。こ、こればっかりは、雑事(?)といえど、許容できない。

 しかし僕の左の太ももをマスティスが持ち上げて拘束し、右の太ももは、後ろからアルクス殿下が抱えた。あらわになった俺の下腹部を、じっとライトが見ている。そして萎えきっている俺の陰茎に、まずたらりと小瓶から液体を垂らした。陰茎から下へとそれが伝っていくヌメる感触に、僕は震えた。次に指に香油を取ったライトが、真っ直ぐに僕の中に指を二本差し入れた。

「うああっ」
「力を抜け」

 命令するように言われたが、そんなのは無理である。

「ひっ!」

 その時、横から乳首をマスティスに吸われた。後ろから、アルクス殿下が僕の陰茎を握る。そして乳首と陰茎を二人に攻められた状態で、僕はぬちゃぬちゃと勇者に体の中を暴かれる形となった。指で数度僕の中をかき混ぜた後、勇者が押し入ってきたのである。

「ああああああああ!!」

 勇者の膨張した楔を打ち込まれ、僕は泣き叫んだ。
 すると三人とも、にやっと笑った。

「いや、いやぁ、ああっあ、あああ!」

 痛みと熱に涙しながら、僕はマスティスには乳首を吸われ、動けないようにアルクス殿下には抱きしめられていた。アルクス殿下はそうしながら、僕の耳の中へぴちゃぴちゃと舌を差し込む。

「!!」

 勇者が僕の中で果てた。

「次は、僕が挿れるね」
「じゃあ僕は口を頂きます」

 力が抜けた僕の体を地面に下ろし、彼らは無理矢理四つん這いにさせた。
 そしてマスティスが僕の口に陰茎を入れてきた。

「噛んだらお仕置きです」
「うっ、ン」

 後ろからは腰を掴まれ、奥深くまでアルクス殿下に貫かれる。今度の勇者は見ている番らしい。口と中を同時に暴かれ、僕は二人の精液を両方で受け止めた。口では飲まされ、後ろ側からは、アルクス殿下が引き抜いた時、勇者のものと混じった精液が、どろりと太ももを伝った。続いてマスティスが、僕の中に肉茎を突っ込む。今度は後ろから抱き抱えられ、下から貫かれた。そして僕の陰茎を、勇者が舐め始めた。

 この時――僕の体は反応した。

「や、や、やぁっ、や、やだ、やだ!」

 勇者は巧みに僕の陰茎を弄ぶ。すぐに張り詰めた僕の前からは、先走りの液が漏れ始めた。もう痛みはどこにもなく、後ろ側からもジンジンと熱が広がり始める。アルクス殿下は、そんな僕の太ももや首筋を舐める。

「うああっ」

 それから勇者とアルクス殿下に、左右の乳首を同時に吸われた。下からはマスティスに突き上げられながら、僕はボロボロと泣いた。状況が辛いといった感情よりも、完全に本能が優っていた。気持ち良かった。

 これまでの人生、魔術一色だったから、僕はこのような快楽を知らなかったのである。

「いや、いやっ、あ、あ、出るっ!!」

 こうして僕は、初めて他者の刺激で射精するに至った。
 出してから、全身を使って息をする。そんな僕の涙をアルクス殿下が意地悪く笑いながら舐め取り、僕の中に出したマスティスは体を引いた。それから再び勇者が僕の中に入ってきた。

「ひあっ!!」
「――ここか?」
「あ、あ、ああ、あ!」

 勇者は、僕の中の、感じる場所を見つけ出した。そこを貫かれると、全身に白い稲妻のような快楽が走る。激しくそこを突き上げられ、僕は快楽に涙した。アルクス殿下が今度は僕の陰茎を飲み込む。マスティスは、両手で僕の乳頭を擦る。

「いやああっ、だめ、だめ、ああああ!! だめ、止めてくれ、死んじゃう!!」

 こうして――その日、僕は散々三人に体を貪られた。
 その日というか、この日から、それは日常の風景に加わる事となった。