【十】性欲処理者(★)






「こりゃあ良い雌だな」
「殿下も具合の良い穴をよく下さったなぁ」

 俺は首輪をはめられ、戦争の最前線に投げ込まれた。首輪は、俺の体を統制するもので、抵抗できないようにする魔力が込められているようだった。だから、なのか、それとも月の満ち欠けに従い体が熱くて自分で求めているからなのかは不明だが、俺は今日も兵士達に貫かれている。

「あ、ああ……あ」

 もう何日も、哀願と嬌声以外、俺は発していない。乱暴に、強引に、黒薔薇の快楽を失っている俺の体を、兵士達が交互に蹂躙する。黒薔薇は、俺の体をドロドロに変えていたのだが、それが封印された結果、俺の体は痛みをきちんと覚えるようになった。

 だが残酷なことに、それすらも気持ちが良い。

「あ、ひ!! やあ、ぁ……うあああ」

 兵士達が、俺に同時に陰茎を挿入した。二本の太いモノが、俺の菊門を押し広げている。後ろと正面から抱くようにされ、下から突き入れられているのだ。周囲はニヤニヤしながら、そんな俺を見ている。

「歯を全部抜いてやるか? お口でもっと俺達を気持ち良く出来るように」
「やめとけ。顔だけは良いんだから、綺麗な歯もそのままの方が良い。どうせ抵抗できないんだから、噛みもしねぇしな」

 俺の体を正面の男が舐める。後ろの男は、俺の耳の中を指で刺激する。痛みと快楽が同時に襲ってきて、俺はすすり泣いた。もうずっと、こんな日々が続いている。

 その日も散々嬲られた後、俺は裸で布の上に放置された。兵士達は、入れ替わり立ち替わり、戦争に行く。ぐったりとしたまま、俺はそれを見ているしか出来ない。

 このまま俺は死ぬのだろうか。犯し殺されるのは、そう遠くないと感じられる。
 だが、もう、それでも良いのかもしれない。

 平和だった幼少時を思い出す。天空の穏やかな雲景色の合間で、父王陛下と母様と、ミネスや異母兄達と過ごした日々が甦ってくる。ああ、こんな事ならば、手を離すべきでは無かった。俺は、ともに死ぬべきだったのだ。

 最近は、そればかり考えている。そうだ、やはりこれは、報いなのだ。

「敵襲だ!」

 叫び声が聞こえたのはその時だった。虚ろな瞳を向けた時、目の前にいた兵士の首が飛んだ。硝煙の臭いがし、銃声が谺する。大規模な攻撃魔術が放たれたのも目にした。俺がいた野営がどんどん焼けていく。そこに風の国と戦っている地の国の兵士達がなだれ込んできた。彼らは、次々と風の国の人間を殺していく。俺は現実感が伴わないままでそれを見ていた。

「ん? 男娼か?」

 その時、声がした。視線を向けると、首を傾げている長身の青年がいた。歩み寄ってきた彼は、膝を突いて座っていた俺の顎を持ち上げると、まじまじと見た。

「性奴隷の首輪だな。へぇ。随分と綺麗な性欲処理者を使ってたんだな。貰っていこう」

 そう言うと男は俺を抱き上げた。肩に抱えられ、俺はそのまま連れて行かれた。
 向かった先は、地の国の設営している砦だった。

「おかえりなさいヴェルス団長。ええと……それは?」
「俺の新しい男娼だ」
「お金払うんですか?」
「衣食住くらいは保証してやるさ」

 ニヤっと笑った男は、ヴェルスという名らしい。そのまま俺は、砦の奥の簡素な部屋へと連れて行かれた。ぐったりとしていた俺の体を、木の板に布をかけただけの寝床に、ヴェルスが下ろした。

「咥えろよ」
「……」

 首輪がその命令に反応する。俺が口を開くと、ヴェルスが長く太いものを突っ込んできた。雄の臭いに、息を詰める。口の奥深くまで暴かれながら、必死に舌と頬を動かした。

「さすがに巧いな。出すぞ」
「っぐ」

 口の中深く、喉の間際まで貫かれ、そこに吐精された。俺の唇の端から、白液が零れる。

「飲め」
「っ、ぁ」

 必死に言われた通りにすると、頭を撫でられた。それからヴェルスが俺の耳を擽った。ピクンと俺の体が跳ねる。それから、ヴェルスは俺の背後に回ると、四つん這いになっている俺の腰を掴み、性急に挿入してきた。硬度を取り戻していたヴェルスの肉茎は、グリと俺の感じる場所を抉った。

「ああ」

 布を掴み、俺が声を上げると、俺に激しく打ち付けながら、ヴェルスが笑った気配がした。

「あ、あ、あ」

 まるで獣のような交わりだった。乱暴なのだが、気持ち良い。痛みは無い。激しいのだが、気を遣って抱いているのだと理解出来る。

「あ、そこは、嫌だ……やあああ」
「感じすぎて嫌か?」
「う、うあ、あ、ああ……お願い、あ、イっちゃ――ああああ!」
「いっぱいイけよ。一緒に気持ち良くなろう、な?」
「ああ、あ、ああ! 待って、まだイったばっかりで」

 黒薔薇の刻印の残っている力で、俺は何度でも果てられる体らしい。それが逆に辛い。ボロボロと泣きながら、俺は快楽に耐えた。緩急をつけて俺の内部を暴きながら、ヴェルスが楽しそうな声を上げた。

「いいねぇ、いいな。気に入ったよ、お前の体」
「あ、は……ああ、あア」
「顔も随分と綺麗だしな。こりゃあ……そうだな。献上品にも良いか」
「もう、もう……ア……あああ!」
「良い声で啼くんだなぁ。んー、誰に捧げるとするか」
「ひゃッ!」

 俺の陰茎から精液が飛び散る。一瞬力が抜けて寝台に上半身を預けた時、背中に体重をかけられた。そして両手首を掴まれる。その状態で腰を揺さぶられた。

「だめ、だめだ、だめ、だめいやあああ」
「嘘つきだなぁ。よがってる」
「お願いだから、あ、あ――さっきの所突いて」
「うん。そうやって素直にしてろ」

 クスクスとヴェルスは笑ったが、そのまま動いてくれなかった。果てたくて果てたくて、何度も俺は懇願した。だがヴェルスは俺の背中をねっとりと舐めるだけだった。そうしてその夜は、散々焦らされた後、最後はまた獣のように貫かれ、俺はいつの間にか意識を手放していた。