23:吾輩は人である!★


ご主人ーージェフが僕の服を脱がせた。
そして呟くように言った。

「この首輪、切っていいか?」
「え? だけどそうしたら、僕が僕だってわからなくなっちゃうでしょう?」
「約束するから。絶対に見間違えたりしないって。ずっと一緒にいてやるから。いや、一緒にいてくれ」
「……うん」

なんだか不思議な感じがしたけど、ジェフがそう言うならいいのかなって思った。
もう僕は猫じゃないって言ってもらったからなのかもしれない。だけどそれでも、ジェフは一緒にいてくれるって言った。
首輪を切ると、ジェフが、深々と僕にキスをしてくれた。

「ン」

歯列をなぞられ、舌を吸われる。それだけで甘いうずきが身体中に広がった。
だけど僕は、それが発情期だからじゃないって思った。
ジェフだからなんじゃないのかな。何となくそんな気がしたんだ。

「っ」

唇が離れると、僕たちの間には、唾液が線を引いた。僕は肩で息をしながら、ジェフの長い睫毛を見る。ジェフは王子様じゃないのに、瞳が優しくてキラキラして見えた。なのに、すぐに、狩りをする時みたいな顔になった。今度はいじの悪い瞳になって僕を見ている。

「本当に蕩けているみたいな顔するよな」

そう言って、ジェフが僕の目元を指でなぞった。ようやく僕は、自分の瞳が涙ぐんでいることに気がついた。

「色っぽすぎて、余裕が奪われる」
「ジェフ、もっとして」

もっと指で撫でて欲しくてそう言ったら、ジェフが吐息に笑みをのせた。
それから首筋に吸い付かれた。
ちょっとだけ痛くて、鼻を抜ける声が出てしまう。なんだか恥ずかしくなって、僕はきつく目を閉じた。
今度はそこを、指で何度も撫でられた。

「色、白いな。旅をしてて焼けなかったのか?」
「よくわかんない」
「その割りにしっかり筋肉ついてんのな。もとが細すぎるけど」
「僕、もっと焼けて、もっと太るよ!」
「別にそうしてもいいし、今のままでもいい。そのままのお前を大事にーー大切にしてやるから」
「ぁ」

その時今度は、乳首の周りを指でなぞられた。僕はジェフのこの指の感触が好きみたいだ。すごく優しいのに、体が熱くなっていくんだ。不思議な感覚だった。
だんだんもどかしくなってきて、僕はまた涙が滲んでくるのを感じた。

「そんなに緊張するなよ」
「だ、だって……!」

僕は本気でどうしたらいいのかわからなかった。
気持ちよかったからだ。なんだか変だ。
「!」
その時、急に手が、僕の肉茎を覆った。びくりと体がはねちゃった。
胸がドキドキするから、やっぱり僕はジェフのことが好きなんだと思う。

「へ、変だよっ」
「変じゃねぇよ。人間の整理的な反応」
「僕、猫だったし……」
「今は人間だろ?」
「ああっ」

くちゅくちゅと僕の先端から出てきた液を撫でつけながら、親指で刺激された。
片手も側部に触れられ、僕はわけがわからなくなってきた。
だからポロポロと泣いた。

「綺麗なピンク色」
「あ、あ、ジェフッ」
「もっと名前、呼んでくれよ」

僕の涙を舐めとりながら、ジェフが言った。
そのしたの感触に、背筋を何かが走って行く。
それから小瓶から香油を手にたらし、ジェフの指先が、僕の菊門を撫でた。
襞をなぞるように、一本一本を丁寧に動かされる。

「うン、ぁ」
「中、慣らしていいか?」
「え、あ」

僕が答える前に、指が中へと入ってきた。前にした時よりもずっと優しくて、僕はなんだか気持ち良くなってしまって息をつめる。

「キツイか?」
「だ、大丈夫……ぅン」
「じゃあもっと声出せよ」
「ああああーー!」

すると一気に指が入ってきて、僕の背がしなった。
思わず声を上げたが、そのあとは喉で凍りついたようになってしまった。目を見開くと、また涙がこぼれた。だけど、嫌じゃなかった。
すぐに二本目の指が入ってくる。
指を開いて、中で押し広げられる感覚がした。だけど僕が好きになった指の感触だと思うと、なんだか体が熔けて行くような気がしたんだ。
ネチャネチャと、香油の水音が響いてきて、指をそれからゆっくりと抜き差しされた。

「あ、ああっ、ン、ぁァ」
「挿れるぞ」
「う、待っーーああああ??」

襲ってきた衝撃に怖くなって、僕はジェフの首に腕を回した。
そしてやっぱり猫の本能で、噛み付いてしまった。

「中でなじむまで、動かないから、安心しろ。怖いか?」
「平気。ジェフなら、平気」
「殺し文句多すぎだろ」

それから中で小刻みに揺らされて、僕は腕にさらに力を込めた。
すると耳の中を舐められた。

「ひゃッ、ぁぁっ」
「そろそろ動いていいか? 悪い、我慢できないわ」

そのまま激しく抽送されて、それがどうしようもなく気持ちのいい場所を刺激し始めた。そして僕は果てた。だがジェフの動きは止まってくれない。

「ぁああ?? も、もうーー」
「悪ぃな。遅漏で定評があるんだよ、俺は」
「ひぅッ」

それから何度も何度も腰を打ち付けられ、その度に皮膚と皮膚が奏でる音がした。
僕は何回か果てて、もう何も考えられなくなって、ただ泣いた。
どうしようもなく気持ちが良かった。そして早漏だって言われた。
よく意味はわからなかったけど、ただ、僕は幸せだって思ったんだ。




それから僕とジェフは、恋人同士になった。
ずっと一緒にいられるようになったんだ。
すごく幸せだから、僕はこれでいいなって思っている。
たまに、ジェフに、ウィズやアクア、王子様が挑みに来たりしているけど、その理由はよくわからない。ただローブのオジサンが、実はジェフのクランのマスターだったってことは知った。
こうして、これからも僕はたくさんのことを覚えて行くんだと思う。
ジェフと一緒に。
これからはずっと一緒なんだ。

そうして、思ったんだ。

吾輩は人である!

なんてね。そんな僕の物語は、きっとこれからも続いて行くと思うんだ。
幸せにね。

ーーおしまい、おしまい!