【6】★
――結果として、俺の体は、二人が言う通り、変わってしまった。
今、俺は口枷をハメられて、壁から吊るされている。足もM字に宙吊りにされている。
「ン――!!」
そこへミスカが、巨大なイボ付きのバイブを突っ込んでいる。長くて太い。振動するそれが、俺の全身に快楽を響かせる。しかし根元を戒められているため、俺は泣くしかない。これは……同意である。俺の体は、すっかり開かれてしまった。
俺は毎日ログインすると、ギルドホームに顔を出すようになった。そしてミスカとリュートのいる片方、あるいは両方に、体を弄ばれている。俺は、気づいてしまったのである。どうやら、人肌に飢えていたらしいのだ。勿論気持ち良いのもある。だがそれ以上に、ログアウトして一人になると、孤独感でいっぱいになり、涙が出るのだ。どうせ泣くならば、こうして快楽で泣く方がずっと良い。
「ん――!! あああああああああああああ」
口枷を外され、俺は涎をこぼしながら泣いた。こうしていると、何も考えなくて良くなる。バイブが、俺の前立腺を掠めた。その瞬間、俺は覚えこまされた空イキをした。自分が雌になってしまったような感覚だ。ミスカが乳首を噛んでくる。その刺激が辛い。
「さて、そろそろ前をしてあげないとだな」
ミスカはそういうと、黒くて細い棒を手にした。俺は、そればかりは怖くなって硬直する。陰茎から中へと差し入れる棒だ……直接尿道から前立腺を刺激する代物である。
「ぁ、ぁあ、あ、や、ぃゃ……」
「これをする時だけは、大人しくて可愛くなるんだからなぁ。俺は清楚な子が好きなんだ。バジルみたいなド淫乱よりも」
「ああああああ」
進んできた棒に、俺は体をこわばらせた。入ってくる、その感覚が生々しい。しかし――気持ちが良いのだ。
「あ」
そして最奥まで進んだところで、トンと棒の先端をミスカが叩いた時、俺の全身に水のような静けさが広がった。中の前立腺と前の前立腺が、同時に刺激された。
「あ、あ……ああああああああああああああ」
直後前の棒をぐりぐりと抜き差しされて、俺はイけないのに果てた。頭が真っ白になる。世界が焼け付いたようになった。しかしVRだから気絶も何もできず、ただただ尋常ではない快楽が押し寄せるだけとなる。
「いやああああああああああああああ」
そして俺は、気が狂いそうになるほど泣き叫び、その日を終えた。
翌日は、リュートと二人だった。リュートは生産技能で、薬剤――媚薬を作り出せる。俺はその治験をさせられている。
「ひ、う、ひう、あ、ああっ」
リュートは、俺の体を四つん這いで拘束し、もう二時間も、媚薬まみれにした二本の指で、俺の中をほぐしている。気持ちの良い場所を刺激してくれることは一度もない。だが媚薬の熱に蝕まれた体は、とっくに熱い。ゆるゆると焦らされて、俺は唯一自由になる首を何度も降って号泣した。
「お願い、お願いだ、挿れて、早く、あああああああああああああああ」
「まだ、だめ」
「うあああっ、ああああ、あ、や――!!」
今度こそ気が狂う。VRは、快楽刺激をもっと制限するべきだっただろう。快楽を高める機能をつけただけであるなんて、バグだ。もう耐えられそうにない。限界までの刺激に、俺の焦がれた体は、ピクピクと跳ねる。
「――兄さんに聞いたぞ。お前、リアルでも同性が好きらしいな」
その時響いた声に、俺は目を見開いた。バレてしまったらしい。しかし熱い体は、思考を冷静にする時間をくれない。
「言えよ、現実でも俺達にヤられてる所を妄想して、ヌいてますって。そうだろ?」
「あ、あ、あ」
図星をさされて、俺は赤面した。
「やっぱりな。顔ですぐに分かる。変態」
「うっ……あ、ああああっ、あ、やぁ……早く、中に……」
「自分から乗れ」
それから拘束を解かれた俺は、無我夢中でリュートの上に乗り、泣きながら腰を振った。もう何も考えられない。ただただ快楽を追うことに専念した。
なお、ギルドのメンバーは、二人しかいなかった。それが俺には不思議だった。
二人は、ギルド名すら、俺には教えてくれない。ギルマス権限で遮蔽されているから、ステータス情報を見ても分からない。本当にヤり専の内輪ギルドらしかった。
ある日の事後、俺は寝台の上でぼーっとしながら、二人を眺めた。
するとリュートが俺を見た。
「なぁ」
「……」
声を出すのが億劫で、俺は視線で応えた。なんだろうかと見ていると、リュートが続けた。
「お前って、なんでいつもそんなに寂しそうな顔してるんだ?」
虚を突かれた俺に、今度はミスカが聞いた。
「確かにな。いつも泣きそうな顔をしているし、ヤってて泣くと気分が少し良さそうになる」
そんな事を言われても、俺は困る。自分で自分の表情は分からない。
「だから虐めて泣かせたくなるんだよなぁ」
「リュートが言う事はよく分かる」
「……俺には、二人がSだって事しか分からない」
「そういう事言うのか」
「これはお仕置きが必要だな、リュート。そう思わないか?」
「思う思う」
俺は迂闊な口を呪った。
「――言えよ、『シャムロックの元マスターのバジルは、ヤリ専のど淫乱になりましたぁっ』って」
木馬に乗せられて、媚薬を目一杯体に塗られ、俺は涙をボロボロとこぼした。
目の前には動画撮影用アイテムのカメラが浮かんでいる。
嫌だ嫌だと首を振ってなく俺の前で、二人は残酷な顔で笑っていた。
だが、熱い体は、激しく木馬を動かして欲しいと訴える。しかし俺のなけなしの自尊心が、その言葉を放つのを拒んだ。だから泣きながら俺は、もう三十分ほど耐えている。けれど、もう限界だった。
「俺は……うああああああああ、もうやだあああああああ」
「言えば楽にしてやるぞ? なぁリュート」
「勿論だ」
「あ、ああっ……しゃ、シャムロックの、あ、元マスターの、バジルは、ぁ、ヤリ専の、フっ……ど淫乱に……なり……うあああああああああああああああ」
俺が最後まで言う前に、リュートが木馬を蹴った。ようやく与えられた刺激に、俺はおかしくなった。