【十九】朝の入浴(★)


「ぁ、ぁァ……ひ、ひぁ」

 クライヴ殿下は、鏡の前に座り、僕を下から貫くと、ずっと泡の付いた指先で、僕の両方の胸の突起を摘まんでいる。捏ねられ、押しつぶされるようにする度に、ジンジンと快楽が広がるから、僕はすすり泣いた。

 いつもよりも深い場所まで挿入されている陰茎は、僕の中を押し上げている。けれど動いてはくれない。僕は右手の大理石の浴槽にとめどなく落ちていくお湯の音を聞きながら、もうずっと浴室で体を洗われている。

「あ、あ、ああ……ァ……んぅッ」

 声が零れるのが止められない。僕の胸を熱心に洗っているクライヴ殿下の獰猛な顔が、湯気で少し曇った鏡に映っている。真っ赤な顔をして泣いている僕の痴態も同様で、泡まみれの僕の体は、全身が上気している。そのところどころにあるキスマークにも羞恥を煽られる。

「ん、ぁァ」

 クライヴ殿下に右耳の後ろを、舌でねっとりと舐められた時、僕は果てそうになった。だが直前で、クライヴ殿下の左手で陰茎の根元を握られて、それを阻止される。

「あ、あ、嫌……いや、あぁ」
「《まだダメだ》」
「う、うぁ……」
「もう少し。もし出したら、《お仕置きだ》」
「!」

 その声に、僕の背筋がゾクリとした。僕にとって、嘗ては『お仕置き』という単語は恐怖の象徴だったのだが、今は違う。この城に来てから、僕は幾度も甘いお仕置きというものを教え込まれた。

「う、うぁ……あ、あ、で、でも、も、もう……出ちゃう、あ、ああ。や、っ、あ、イけない。殿下、手……うう……ん……ンっ……あああああ、ダメ、何かクる。あ、あ、頭が真っ白になる、ヤァ、あ、あ、体が熱い」

 内側から快楽の波がせり上がってくる。
 その時クライヴ殿下が僕の耳元で囁いた。

「中だけで。《イけ》」
「んア――!!」

 頭の中をバチバチと稲妻のような衝撃が駆け抜ける。
 言葉と同時に、グッと突き上げられて、僕はドライオルガズムの波に飲み込まれた。脚の指先を丸め、全身を襲っている快楽に息を詰める。

「ああああああ!」

 その時、追い打ちをかけるように動かれて、僕は大きく喘いでボロボロと泣いた。
 気持ちが良すぎて、訳が分からない。

「ひぁっ」

 クライヴ殿下が再び両手で、僕の敏感になっている乳首をユルユルと嬲り始めた。その甘い刺激で、僕は射精した。壮絶な快楽のせいで、零れ落ちる涙が、僕の頬をずっと濡らしている。

「もっともっと、これから気持ちのいい事を教えるからな」
「あ、あ……」
「愛している、ルイス」

 こうしてお休みの一日が始まった。

「さて、《お仕置き》をしないとな。ルイスは本当に可愛いな」

 僕のとろんとした瞳が、鏡に映っている。僕は甘いクライヴ殿下の声を聞きながら、ぐったりと背中を、殿下の胸板に預けた。その間も胸を嬲られていたから、僕の体はすぐにまた熱くなった。僕の陰茎の先端からは、トロトロと透明になってしまった精液が零れていく。確かに羞恥を覚えているのに、僕の体は己の言う事を何も聞いてくれない。僕の耳には、ただただクライヴ殿下の声だけが入ってくる。

「大好きだ」