【六十三】一対一
「ルイス。ノアをどう思った?」
夜、寝台の上に二人で座り、毛布をかけた時、クライヴに問いかけられた。
「どう? って、いうのは?」
クライヴを見て、僕は首を傾げる。すると抱き寄せられた。
「ノアを好きか嫌いか、そういう感覚でも構わないし、思った事をそのまま聞きたい」
「面白い子だなぁって。元気で明るいけど、僕よりもずっと貴族の機微に長けていそうで、頭脳明晰っていうのかな……悪い子じゃないと思ったけど、まだよく分からないです」
「そうか。好きになれそうか?」
「うん。もっと話してみたいと思ったよ」
「――やはりSubへの転化を勧めるか。日常的には」
「え?」
「いくら子供とはいえ、俺はルイスを俺以外のDomのそばに、二人きりで置きたくないんだよ」
「クライヴ……それは、僕も同じだよ」
「ん?」
「僕だって、クライヴが僕以外のSubとずっと二人でいたら、その……クライヴの事を疑うつもりはないし、相手が子供だからってわかっていても、なんていうか……世界には、魅力的な人は多いって、きちんと僕はわかってる」
「ルイスより魅力的な人間に俺は出会ったことがないが、嫉妬されるのは嬉しいな。ただ心を煩わせたくないという思いの方が強いから、心配は不要だと改めて伝えさせてくれ。愛している」
そういうとクライヴは、僕を抱きしめた後、そのまま僕を押し倒した。
見上げた僕は、降ってきたキスの雨に浸る。
何度も何度も二人で唇を重ね、お互いを見つめあった。
「明日は、仕事納めの最後の視察だ。朝が早い」
「うん。今日はゆっくり眠ろう? 四時起きなんでしょう?」
「――すぐにでもルイスが欲しいが、明日が終わったら少しゆっくりできるのだからと、今自制中だよ。そうだな、では、一緒に休もう」
こうしてその日、僕はクライヴの腕の中で眠った。
朝はもちろん一緒に起きて、いってらっしゃいのキスをした。
そうして朝食までの間、読書をして過ごした。本日の朝食は、使用人はいるものの、僕とノアの二人きりとなる。誰かと一対一で食事をした経験がほとんどないとはいえ、ノアがまだ子供らしい少年という事もあり、僕はそこまで緊張せずにダイニングへと向かう事が出来た。バーナードが引いてくれた椅子に座していると、予定の時間にノアが現れた。
「おはようございます、ルイス様。ん? クライヴ殿下は?」
「今日は視察なんです」
「あ、そうなのか。こんなに年末まで働かなければというのは、大人は大変だ」
「すぐにノアも、大人になるよ。一瞬だと思う」
「そうかもしれないが、僕は早く大人になりたいとは思わない。そういう事をいうのは、子供だ! 僕は子供のままでいい!」
本日も元気なノアは、そう言って笑うと席に着いた。
「そういえば、窓から雪だるまらしきものが見えたんだ。あれは誰が作ったんですか?」
「僕とクライヴだよ」
「ふぅん。見に行きたい!」
「じゃあ、ご飯を食べたら、庭に出ようか」
「うん!」
微笑した僕に対し、満面の笑みでノアが頷いた。
食事中は、ほぼすっとノアが話していたのだけれど、楽しくて僕は何度も笑みをこぼした。会話が途切れることは一度もなかった。