【七】初物を食す(★)
「――でも二人部屋って大変だろ?」
「え?」
「一人で抜くのも、気を遣うだろ?」
俺が何気ない素振りでそう尋ねると、きょとんとしてから、頬に朱を差してアルトが顔を背けた。いいねぇ、男前が照れた顔。俺の大好物である。
「入寮してから、どうしてるんだ?」
「えっ……そ、その……まだ引っ越してきたばかりで……仕事の開始に備えていたので、あまり落ち着いてそういう事を考えたりはしていなくて……」
正直に答えているのだろう。
言い淀んだアルトがそれからチラリと俺を見た。その瞳を見て、やはり好みだと思う。俺は缶を置いてから、膝立ちで移動し、アルトの横に陣取った。そしてグイと詰め寄る。
「なぁ、抜いてやろうか?」
「――え?」
「刑務官は抜きあいが珍しくないんだ。これは学校でも習わねぇだろ?」
「な」
「寮では人目があるしな、ここみたいに一人部屋でもなければ。あとは下の街に降りて夜の蝶にお相手願うくらいしか、処理は望めない」
「だ、大丈夫です!」
アルトが仰け反ったので、俺はさらにグイと詰め寄った。アルトの顔が朱い。俺との行為を想像しているのだろうというのが、ありありと分かる。
「上官の善意を拒むのか?」
「っ」
「ほら、脱げ」
「そ、そんなの……そんなのは……」
「セクハラだって?」
「っ……」
困惑と羞恥が綯い交ぜみたいな顔をしているアルトは、本当に艶っぽい。男前の色気が俺は大好きだ。二本の指先で、俺はアルトの顎を持ち上げてみる。すると目に見えて体を硬くしたのが分かった。
「嫌だっていうなら無理にはしねぇよ?」
「……で、でも」
「でも?」
「そういうのは、恋人同士がする事で……」
「純情だな」
俺が言うと、カッとアルトの顔がさらに朱くなった。俺はアルトの制服の首元に手をかける。そして服を乱すが、アルトは抵抗しない。真っ赤なままで俺を見ている。
どうやら耐性が無いらしい。押しにも弱い。それだけでなく――その瞳に、俺は期待を見て取った。思わずニヤリと口角を持ち上げる。そのまま服を開けて、俺はアルトを押し倒した。アルトは抵抗せずに、真っ赤なままで俺を見上げている。その首の筋をぺろりと舐めてから、俺は鎖骨の少し上に口づけた。
「んぅっ」
そしてシャツのボタンを外してから、左胸を掌で覆うようにして撫でる。
それから指と指の間に乳首を挟んで振動させると、アルトが息を詰めた。
右手では性急にアルトのベルトを引き抜き、下衣の中に手を入れる。そしてゆるゆると陰茎を撫でながら、乳首を同時に愛撫した。どんどん朱く尖り始める。
「お前男と経験ある?」
「無いです、っ……」
「ふぅん。じゃ、優しくしてやるよ」
俺はそう言うと、両手で完全にアルトの下衣を脱がせた。もぞもぞと足を動かして、アルトも自発的に脱ぐ協力をしてくれた。既にガチガチの陰茎を見て、大人びてはいるが、まだまだ若いなと感想を抱く。俺は右手で緩く握ってから、アルトの陰茎を口に含んだ。そして唇に力を込めて、頬を動かす。
「っぁ……」
アルトが声を上げてから、両手で口を覆った。それをチラリと見てから、俺は口の動きを速める。するとすぐに限界までアルトのものが張りつめたのが分かった。中々いいものを持っている。俺ほどではないが、長い。一度果てさせてやるかと考えて、俺は舌先で鈴口を刺激してから、口をさらに早く動かした。
「ッッ!」
すると呆気なくアルトが放った。俺が飲み込んでみせると、真っ赤な顔でアルトが俺を見ていた。しかし俺にとっての本番は、ここからである。俺は手を伸ばして、そばの棚にオブジェのように置いてあったローションのボトルを手繰り寄せた。するとアルトの焦点があまり会っていなかった瞳に、明確に光が戻った。ビクリとしているのが分かる。
「ま、まさか」
「ん?」
「ジェフ主任……そ、その……俺を抱くつもりじゃ……」
「そうだけど?」
「えっ……お、俺、男ですよ?」
「見れば分かる」
「こ、こんな、その……とても受け身になるような体型でも無いですし」
「いいや? 意外とお前より筋肉だるまも抱かれる方を好むやつはいるが?」
「……え、え? ほ、本当に俺を……ひっ!」
俺がローションを垂らした指で後孔をつくと、アルトが驚いたように声を出した。
「お前だけ気持ち良くなるのは不公平だろ?」
「そ、それは……」
「力、抜いてろ」
「んンッ、く」
俺が迷わず人差し指を進めると、アルトが体を硬くした。
「力を抜けと言ってるだろうが」
「っ……」
その後俺は、指をかき混ぜるように動かした。するとその度に、ピクンとアルトの肩が跳ねる。それから指を二本に増やし、俺は当たりをつけていた前立腺を指先でグリと刺激した。
「あ!」
するとビクンとそれまでより大きくアルトの体が跳ねて、声が上がった。
俺は基本的にじっくりと慣らしてやるなんて事はしないのだが、今回は特別とした。艶っぽい男前は例外だ。照れさせるのが楽しい。
「ぁァ……ぁぁあ……んフ」
前立腺ばかりを刺激してやると、次第にアルトの瞳が潤み始める。本当に堪らない。
ローションを増量し、指を三本を増やして、今度はバラバラに動かしてやる。
するとギュッとアルトが目を閉じた。長い睫毛が震えている。
まだちょっときついが、そろそろいいか。
俺はそう判断したところで指を引き抜き、既に痴態で反応していた自分の陰茎の先端を、下衣を抜いてアルトの菊門へとあてがった。
「あ、ああ」
めり込ませるように先端を容赦なく挿入すると、背を撓らせながら、アルトが喉を震わせた。やはりきついが、初物のそういうところも俺は好きだ。
「分かるか? 俺のが挿いっていくの」
「あ、あ、あ」
「どうだ?」
そのままグッと陰茎を進め、根元まで挿れる。そして俺は腰を揺さぶった。すると生理的な涙をこぼしたアルトの手がもがくように動いた。そのまま俺の体に腕をまわしてきたので、思わず俺は喉で笑ってから、さらに深く貫くように動き、ゆっくりと抽挿を開始した。熱い中が絡みついてくる。まだ俺以外の形を知らないアルトの中が、戸惑っているようですらあった。ローションがぐちゅりと立てる水音と共に、俺が動く音がヌチュリと響く。
「んあア――っ、あ、熱い……う、うあ、硬い、あ、あ」
「すぐにコレが無いとダメな体にしてやるよ」
「ひぁア!」
俺は動きを速めていく。アルトの体も俺の体も汗ばみ始めた。その内に肌と肌がぶつかる音が響き、アルトがギュッと中で締め付けてきた。見れば再び陰茎が反り返っていて、達しそうらしいと分かる。それを見計らい、俺は内部のアルトが感じるらしい場所をこすり上げるように動いた。
「ああああああ!」
するとアルトの白液が飛び散った。より収縮した内部に、俺も果てそうになったので、陰茎を引き抜き、アルトの腹部に向かって射精する。俺の精液がダラダラとアルトの引き締まった腹筋を濡らしていった。はぁ、気持ち良かった。
アルトは黒髪を汗で肌に張り付け、荒い息をしながら、ぐったりとしている。その姿がまた凄艶だ。さて、俺には最後にやる事がある。何気ない素振りで、俺は脱ぎ捨てた下衣のポケットから魔導通信機を取り出すと、精液まみれのアルトを写真に収めた。
「!」
カメラのフラッシュに、驚いたようにアルトが、我に返った様子で目を丸くする。
「な、何を」
「ん? ハメ撮りしとけば、お前も――俺の言うとおりになるしかなくなるかと思ってな」
「な……」
「これから、よろしくな? 俺の相手、宜しく頼むぞ。この画像をばらまかれたくなかったらな」
俺は画面に映し出されたアルトの姿を、本人に見せた。
するとアルトが顔面蒼白になった。その姿を見るのも、本当に気分がよかった。