【20】朝になったのに(★)
その日、工房へと素材を持っていくと「二日で素材が全て揃うなんて……」と、驚かれた。ユフェルのおかげだと思う。あとは、熟成させる薬液があるからとの事で、一週間だけ待つ事になった。
ユフェルと共に家へと帰りながら、俺は空を見上げた。日が落ちるまで、もう少しである。
「今夜も体が熱くなるのか……」
思わず俺が溜息をつくと、ユフェルがそっと俺の肩を抱いた。
「辛い想いをさせるな」
「……ユフェルは、嫌じゃないのか?」
媚薬の熱に飲み込まれると、俺は自分で自分が分からなくなってしまう。考えてみれば、いくら子供が欲しいとは言え、ユフェルだって望んで俺の相手をしているわけではないと思うのだ。
「嫌なはずがないだろう。カルネと繋がっていると、満ち溢れた気分になる」
「え?」
「伴侶紋が疼くんだ。ずっとこうしていたいと訴えてくる」
それは俺には分からない。無意識に左手首に触れながら、俺はユフェルを見た。
「カルネが伴侶で俺は嬉しいぞ」
「どうして?」
「理屈は無い。ただ、嬉しいだけなんだ。これまでに、こんな幸福感を覚えた事は無い」
その言葉に俺は照れてしまった。
こうして二人で帰宅し、その日は早めに夕食を取った。
そうして――夜が来た。
やはり俺の体は熱くなった。しかし三回目であるせいなのか、本日は随分と余裕が有る。まだ理性が飛んでいない。そんな俺を抱きしめると、ユフェルが耳元で言った。
「媚薬が無しでも、俺に抱かれてくれれば良いんだが」
「……それは、その」
「この一週間で、俺に絆されてくれ」
「ユフェル……ん!」
直後、熱烈なキスが降ってきた。正面から俺は座った状態でそれを受け止める。何度も何度も深く唇を貪られると、全身がカッと熱を帯びた。
「あ、あ、これはダメだッ!」
きゅっとユフェルが俺の左乳首を摘む。そうしながら右腕では抱き寄せられ、更に深くキスをされた。
「あ、あ、あ」
「カルネの全てが欲しい」
「ん、ぅ」
一糸まとわぬ姿だった俺の右乳首を、ユフェルが吸う。それから甘く噛まれると、俺は訳が分からなくなった。
「や、ゃァ……! ん、ハ」
陰茎が頭をもたげ、俺の先端からは透明な先走りの液が溢れ始める。純粋にそれが気持ち良くて、俺はユフェルの背中に腕を回した。ペロペロとユフェルは俺の乳頭を舐めている。その度に、ジンジンと甘い疼きが全身に広がった。
「あ、あ」
そのまま座った状態で挿入されて、俺は喘いだ。膝を立てている俺は、ゾクゾクとしながら目を閉じる。始めは浅く挿入され、シーツを握り締めながら、俺は甘い衝撃に耐えた。
「ンん、あ、もっと……」
「カルネは綺麗だな」
「あ、ハ……っ、うあ」
俺の両方の太ももを持ち上げて、ユフェルが深く挿入し始めた。抽挿される度に、俺の口からは声が漏れる。それが恥ずかしいのだが、抑えられない。根元までぐっと挿入した状態で、その時ユフェルが動きを止めた。
「や、あ、もっと動いてくれ」
「ああ、いくらでもな」
「ん――!!」
そこから激しい抜き差しが始まった。感じる場所を突き上げられる度に、俺は快楽から涙をこぼした。穏やかな交わりは、逆に俺の体の熱を酷くする。
「あ、ああ! あ、足りない、っ」
「俺も全く足りない」
「いやだ、アあああ、あ、あ、あああ! 気持ち良っ、うあああ!」
激しくユフェルが動き始めると、この日も理性が掻き消えた。
それから空が白むまでの間、俺達は交わっていたのだった。
翌朝――ユフェルの腕の中で目覚めながら思った。
俺は結構、こんな朝が幸せかも知れない、と。
ユフェルを見ると、視線が重なった。
「目が覚めたか?」
「うん……ユフェルは寝たか?」
「ああ、少しな」
微苦笑したユフェルを見ていたら――ドクンドクンと胸が煩くなった。理由は分からないが、その表情があんまりにも綺麗に思えたのだ。赤面してしまった俺は、シーツで顔を隠す。するとその状態のまま、ユフェルが俺を抱きしめた。
「カルネが足りない。もっと欲しい」
「……ユフェル」
「媚薬が無ければ、ダメか?」
「……っ」
その言葉に、俺は苦しくなった。ダメ、だとは思わない自分がいた。俺も何故なのか、ユフェルがもっと欲しい気がする。だからシーツから顔を出して、俺はまじまじとユフェルを見た。頬が熱い。
「……ダメじゃない」
「本当か?」
するとユフェルが俺を抱き起こした。されるがままになっていると、俺の腹部にユフェルの剛直が当たった。
「挿れても良いか?」
「う、うん……」
完全に理性がある状態では、初めての事である。緊張がないわけでは無かったが――俺は、拒否しようという気にはならなかった。何故なのか、左手首が熱い気がする。
「ん、ア」
俺を上に乗せるようにして、下からユフェルが挿入してきた。巨大な屹立に、俺は震える。押し広げられる感覚がして、いつものような媚薬の熱が無いから、露骨に感じて狼狽えた。慌ててユフェルにしがみつくと、喉で笑われた。
「大丈夫か?」
「あんまり!」
「……慣れてくれ」
「あ、ああ!」
最奥までユフェルのものが一気に入ってきた。腰を掴まれている俺は、逃れられない。触れ合っている箇所が、熱いのは変わらない。ただ、いつもより鮮明に、ユフェルの存在感を俺の体が識っている気がした。
「ん、ぁ、ああ! 動いてくれ」
「良いのか? もう少し馴染んでからの方が良いんじゃないか?」
「い、いいから……あ、ああ!」
ゆっくりとユフェルが体を揺さぶった。そうされると、切ない疼きがこみ上げてくる。媚薬の熱が無いというのに、俺ははっきりと、もっと欲しいと感じていた。
「あ、あ、ああ! ユフェル、動いて」
「――求められるのは悪い気がしないな」
「ああア――ん、っ、うあ!」
それからユフェルが激しく動き始めると、俺は気持ち良すぎて、媚薬の熱が無いというのに理性を飛ばしてしまった。気が付けば、俺の腰も蠢いていた。