【一】教師と教え子(★)




 リアレード国立軍養成学校。
 王国軍本部と同じ建物に、その学校は存在している。高良雛瀬(たからひなせ)は、一年S組の担任だ。

 この学校では、陰陽力に応じて、S・A・B・C・D・Eのクラス分けなされている。
 ただ一クラス十名前後なので、合同授業が多い。

 現在もそうだ。

 ちなみに陰陽力というのは、ごく一部の人間が希に持って生まれる特殊な力の事で、『オーグ』と呼ばれる怪物退治に利用されている。オーグは上空に突如として出現する時空の割れ目から現れる敵だ。

 王国軍がその対処を行っている。

 養成学校の生徒は、十八歳から二年間の教育を経た後、二十歳で軍属になることがほぼ決まっている。

 そんな生徒達を指導するのが高良の役目なのだが――ほとんど誰も話を聞いていない。

 S組の生徒達は勝手に他教科の自習をしているしAからDまでの生徒は雑談をしているかスマホをいじっているかだし、不良が多いEクラスの生徒達なんて教室後方で、丸めた配布プリントを投げ合って喧嘩している。

 高良は困ったように笑いながら、黒板にチョークで文字を書いている。

 高良はこのエリート学校で、二十三歳から教職にあり、今では三十三歳だ。
 それでも一番若い。

 みんな、高良には討伐の実務経験が無いようだと考えている。

 教えているのはオーグの種類で、そんなもの教科書と図鑑のはいったタブレットを見れば一日で覚えられる。はっきり言って、不要な授業だと生徒達は思っているようだ。

 もう教師になって十年だが、いつもこんな感じである。

 その時、授業の終了を告げる鐘が鳴った。教卓の上でプリント類を縦に持ちトントンと叩いて位置を直してから、高良は告げる。

「今日はここまで。また明日」

 なお、高良の授業は毎日ある。ほぼ自習時間のようなものである。

 細く吐息して大教室から出た高良は、職員室へと向かい廊下を歩く。

 すると上階から降りてくる黒い軍服姿の二人組が見えた。片方は肩もとで色素の薄い髪を切りそろえた――男ながらに美人、もう片方は長身で口布をつけている黒髪のイケメンだ。二人とも、高良が初めて教職についた時のSクラスの生徒だったが、今では高良とは比べものにならない位置にいる。黒髪が、青波悠河(あおなみゆうが)隊長。美人が、東雲紫(しののめゆかり)副隊長である。

 国防軍第一部隊のトップだ。実力も確かで、オーグ討伐の要であり、みんなの憧れである。格好良い二人だなぁと、ぼんやりと高良も眺めた。

 高良も顔は悪くない。むしろ良い。授業能力は地を這っているが、優しげなアーモンド型の大きな瞳、通った鼻筋、色白で華奢だが平均的な身長で、手足が長くスタイルも良い。

 教員が纏う青い軍服姿もよく似合っている。フワフワの黒髪はさわり心地が良さそうだ。が、存在感が薄い。

「もう俺の事なんて覚えていないだろうなぁ」

 二人が一階へとそのまま下っていくのを眺めてから、ポツリと高良は呟いた。教え子のめざましい活躍は嬉しい。しかし危険がつきものの仕事なので、高良は二人の無事を祈った。

 高良はその後は職員室へと戻り、来週の授業の準備をしたり資料の整理をしていた。誰も聞いていないが、高良は真面目に授業をしている。

 昼食後、定時になるまでそうして過ごした。
 こうして放課後がきて、定時になった。

 後は教職員寮に帰るだけである。

 夕暮れの道を歩いて行き、寮のエレベーターに乗った。そして部屋についてすぐ、レンジ調理のチャーハンを食べてから、シャワーを浴びてジャージの下とTシャツに着替えた。少し大きめなので、鎖骨がのぞいている。

 後は寝るだけなのだが、まだ七時半だ。レモン水を飲み干してから、読書でもしようかなと高良が考えたその時――インターホンが鳴った。この家に人が来たことは無いに等しい。

「?」

 誰だろうかと考えながら、高良は玄関へと向かった。
 そしてモニターを見て目を疑った。

 黒い口布をつけた国防軍最強の軍人が立っていたからである。ゆっくりと二度瞬きをしてみたが、確かに映っている。ボタンを押して、恐る恐る高良は声をかけた。

「高良ですが」
『青波だ。話がある。入れろ』
「……」

 全く心当たりはないが、名乗っても入れろというのだからと、高良は唾液を嚥下してからチェーンと鍵を開け、扉を開いた。

 すると切れ長の瞳をしている長身の青波の姿がそこにはあった。
 それを確認し、高良は一歩下がって室内に振り返る。

「ど……どうぞ……?」

 中へと促すと、青波が入ってきた。先に室内へと戻り、高良は珈琲を用意する。
 ブーツを脱いだ青波が入ってくる。

 テーブルの上にカップを二つ置き、青波をソファに促して、自分は正面の座布団に座った高良は、それから頑張って笑顔を浮かべた。青波は一見すると怖い――氷のような無表情の持ち主である。

 小心者で優しい高良は追い返すことも出来ず、とりあえず話を聞くことに決めた。

「どんなご用ですか?」
「……」

 青波は何も言わない。ただ険しい顔で高良を見ているだけだ。

「あの、青波隊長?」

 高良が困惑していると、不意に青波が立ち上がった。
 そして高良の隣まで歩み寄ると、膝をつく。

「?」

 何だろうかと高良が青波を見た、その直後。
 青波が真正面から高良を抱きしめた。青波が口布を下げる。

「!?」
「……ろ」
「え?」
「ヤらせろ」
「!?」

 焦って狼狽え、高良が目を見開く。その瞬間には下着ごとジャージを手際よく脱がせられていた。そして押し倒されながら、右の首筋に噛みつかれた。左手はTシャツの中に入ってきて、ギュッと高良が目を閉じると、そのままあっさり脱がせられてしまった。高良は軍人の行う体力トレーニングや拘束術などを習ったことがないため、それらも最高成績だった青波を前にしたら為す術もない。

「っく」

 頭が座布団にぶつかった時、右の乳首を青波に吸われた。押し返そうとしたが、筋力が違いすぎる。筋肉だるまとは違うがよく引き締まった体をしている青波と、線の細い高良では、どう頑張ってものしかかられたら無理である。青波は右手では高良の乳輪をなぞってから、指先で乳首を摘まんだ。高良の乳首が赤くなり、尖ると、満足そうな顔で、青波が残忍な笑みを浮かべた。

「ぁ」

 尖った乳首を甘く噛まれる。ピクンと高良の体が跳ねた。その時、青波が左手を高良の陰茎に添える。そうして数度握って扱いてから、口に含んだ。

「え、あ……え!?」

 混乱した高良は、涙ぐんだ。しかし……気持ち良い。温かい青波の口が、じゅるりじゅるりと音を立てて、高良の陰茎をしゃぶっている。時に唇に力を込めて雁首を刺激されたり、舌先で鈴口を刺激されたりすると、腰の感覚がなくなっていく。膝を立てた高良の間で口淫している青波は、じっと高良の様子を眺めている。

「あ、ぁ……ま、待って……っ……出る、う、うあ……」

 堪えきれずに高良が言うと、青波が口を離してポケットからローションのボトルを取り出した。

 急に刺激がなくなりイくにイけず高良が涙ぐんだ時に、青波が右手にローションを垂らして、高良の中に指を進めた。

「!!」

 容赦なく一気に二本突き立てられた上、激しく指を抜き差しされる。

「あ、あ、あ」

 動きに合わせて高良は声を零す。
 青波の激しい指先が、高良の前立腺をかすめたのはその時だった。

「やだうあ、やめそこ――ああああああ」

 より青波の手の動きが激しさを増す。
 グリと前立腺を激しく執拗に刺激され、高良の頭が真っ白になる。

「あ、ぁン、ん、ン――……っ、あ、あ!!」

 その時、指を引き抜かれた。青波がベルトを外し、巨大なそそり立つ陰茎の先端を、高良の菊門にあてがう。そうして一気に貫いた。痛みはない。ただ全身が熱い。根本まで挿入され、高良は震えながら泣いた。気持ち良い。

「あ、あ、ああ……あ――、ああンっ――!」

 高良の左の太股を持ち上げて、青波が激しく抽挿する。激しく体を揺さぶられて、何度も打ちつけられ、思わず高良は青波の首に手を回してしがみついた。

「いやあああ」

 すると動きがより激しくなり、最奥を容赦なく責められる。頭の中で白い雷がバチバチと散った気がした。

「だめ、ぁ、ア……ああ! ……おかしくなっちゃ、ああああ! だめ、ぇ」
「……」

 青波は何も言わない。
 ただ獰猛な瞳で高良を見ながら、獣のように高良の体を貪るばかりだ。

「あああああああ!」

 その時、高良が放った。

「嘘、あ、待って――いやあああああ」

 しかし青波の動きは止まらない。高良の頬が涙でぐちゃぐちゃになり、そのまま続いて内部だけで果てさせられた瞬間ビクンと体が跳ねた。快楽が強すぎて何も考えられなくなっていく。青波の白液が内部に飛び散った直後、高良は気絶した。