ヤンデレ執着美形騎士攻めのえっちなお話







 このエスカルネード王国の始祖王は、勇者パーティの剣士だったという言い伝えがある。そのため、全王族男子は、十八歳の誕生日を迎えたら、信頼できる仲間一名を連れて、魔獣を討伐するという儀式がある。

 昨夜十八歳の誕生日を迎えた第二王子の俺も、いよいよ本日魔獣討伐に向かう事になった。

「よろしく頼むぞ」

 深い森の獣道を歩きながら、俺は『仲間』に選んだジェフを見る。仲間とは言うが、ジェフはもう俺に五年ほど仕えてくれている近衛騎士で、現在二十三歳だ。元々は凄腕の第一騎士団の精鋭だったのだが、何故なのか配置転換を希望したそうで、俺の近衛になった。

 目が合うと、ジェフは両頬を持ち上げて、端正な唇の両端で弧を描いた。彫りの深い顔立ちをしており、目の色は紫、髪の色は艶やかな黒だ。

「光栄です、クリフ殿下」

 長身のジェフが、俺の一歩後ろに付き従っているのはいつもと同じだし、何度か二人で戦う練習もしたから慣れているはずなのに、俺は緊張している。

 現在俺達が歩いている森は、通称――常闇の森という。鬱蒼とした木々の葉の合間からは、日の光が入ってこないので、日中でも暗い。ここには野生動物はいない。魔獣の瘴気が強すぎて、生息できないらしい。

 魔獣というのは魔力を持つ害獣なのだが、生命の理が、生物とはいえない存在なのだという。

 こうして進んでいき、その後俺達は、洞窟の奥にある石段を降りてダンジョンに潜り、古い遺跡の中を進んでいった。すると最奥に、このあたりの魔獣を統べる屍竜がいた。気合を入れて剣を構え、俺は床を蹴った。そして屍竜の首をたたき切る。ズドンと頭部が落下したが、まだ体は動いている。尻尾が俺に襲いかかってきたので仰け反ると、ジェフがその瞬間に屍竜にとどめを刺していた。肩で息をしながら、俺は倒れた屍竜を見ていた。

「クリフ殿下、ご無事ですか?」
「あ、ああ……ありがとう。ジェフのおかげだ……」
「いいえ、殿下のお力です。どうぞこれで喉を潤してください」

 ジェフはそう言うと、小瓶を笑顔で俺に差し出した。回復のための魔法薬のようだと判断して受け取り、俺は一気に飲み干す。僅かに檸檬の風味がするポーションだった。初めて飲む味だ。

「あとは、帰るだけだな」
「ええ。倒した証左に、鱗を一枚持ち帰りましょう」
「うん」

 頷き俺は、屍竜の倒れている体に歩み寄った。そして検分し、透き通るような鱗を一枚手に取った。これで俺もきちんと成人したという証を得られたんだなぁと思っていると――ドクンと体の奥が熱くなった。一瞬視界が二重にブレた気がした。

「クリフ殿下、鱗をコチラの小箱に」
「……、……」
「殿下?」
「あ……ああ、そ、そうだな……ッ……」
「顔が朱いようですが、どうかなさいましたか?」

 不思議そうな顔をしているジェフを見た時、俺の腰に熱が直結し、かくんと力が抜けた。すると腰に腕を回されて、抱き留められる。

「殿下……もしや、血を見て興奮なされたのでは……?」
「へ?」
「当たっております」
「えっ」

 ジェフの言葉で、俺は初めて自分が勃起していることに気がついた。正直焦った。そんなことが果たしてあるのだろうか?

「激しい戦闘でしたし、気分が昂ぶっておられるのかもしれませんね」
「……っ、いや……あ!」

 否定しようとしたが、下衣の上から陰茎を撫でられて、思わず俺は声を上げてしまった。過去に剣を揮ってこのような状態になった事は一度もないので、混乱の方が強いが、体が反応しているのは間違いない。

「このまま王宮へ戻るのは辛いでしょうし……俺で良ければお相手しますが」
「え、え? 相手って……ぁァ……」

 ジェフの手が下着の中へと入ってきて、俺の陰茎を握り混んだ。そして一度、二度と擦りあげてから、指先で鈴口を刺激した。すると俺の陰茎はすぐにガチガチになってしまった。おかしい。体が熱い。声が零れそうになったものだから、俺は両手で口を押さえた。

「っ……ンん……」

 そうしていると、下衣を開けられた。どんどん俺の体が熱くなっていく。力が抜け始め、思考が曖昧になっていく。それを理解していると、ゆっくりと石床の上に押し倒された。気づくと俺の背後には、ジェフの外套が敷かれていた。その上で、俺の上着も脱がされた。

 こんな場所で一糸まとわぬ姿になっているのは、恥ずかしい。
 そう思うのに、体が熱くて上手く思考ができない。
 するとジェフが先ほど俺に渡した品と同じ小瓶をもう一つ取り出した。ジェフも喉が渇いているのかと思ってみていると、それを指に垂らしたジェフが、きゅっと俺の左乳首を摘まんだ。瞬間その箇所から、熱がしみこんできた。

「ぁっ……やっ、なに……う、うあぁ」

 同じくドロドロに液体で濡れた右手の指では、ジェフが俺の後孔を暴き始める。すると今度は内側に熱が渦巻いた。おかしい。本当におかしい。液体が触れている箇所全てが熱い。

「あ! ああ!」

 それは内部のある箇所を指先で刺激されたら、より酷くなった。座学で知っているが、多分前立腺だ。ジェフの二本の指がそこを間断なく刺激した瞬間、俺は陰茎から放っていた。

「待っ――」

 肩で息をしている俺の中を、俺は達したというのに、ずっとジェフが刺激する。そのまま再び追い詰められて、俺は必死で息をした。ダメだ、また出る。そう思った時には、俺は射精していた。しかし出しても全然、体の熱が引かない。その時ジェフが指を引き抜いた。

「俺は待ちますよ」
「……ぁ、ぁァ……」

 今度は息をする時間は与えられたけれど、内部から刺激が消えてしまい、それが切なくて、俺は涙ぐんだ。おかしい。また陰茎が硬く張り詰めていく。とにかく出したい。いいや、出しているのだが、それでは収まらない。なんだこれは。

「ただクリフ殿下があんまりにもお辛そうで……」
「う……ッ……ぁン……ひ!」

 甘く乳首を噛まれて、俺は仰け反った。ビリビリと快楽が全身を染めている。
 だが――足りない。

「あ、ぁ……中、中……っ、や、指……ジェフ、っ」
「指でいいのですか?」
「え? え、ぁ、ァ……ああっ」

 その時ジェフが陰茎の尖端を俺の菊門にあてがった。液体のせいでぬるりとしている窄まりに、ジェフのものが挿いりそうになっている。

「待っ……、そ、それは……あ、ああ……だって、俺、や、ぁ……男だし……ぁァ」
「でも欲しいのでしょう?」

 尖端が少し入ってきて、菊門を押し広げられた時には、プツンと俺の理性が切れた。

「早く、もっと、あ、中……あああ!」

 俺がぎゅっと目を閉じて哀願すると、ぐっと一気に奥深くまでジェフが陰茎を進めた。押し広げられる感覚がし、太く硬いもので擦りあげられるように動かれると、もうダメだった。根元まで挿いりきった頃、一度ジェフが動きを止めた。そして俺を抱きすくめるようにして、激しく腰だけ動かし始めた。痛みはない。だが気持ちよすぎて、もうなにも考えられない。時折水音が響く。

 この日、何度も何度も、ジェフは俺の中に白液を放った。
 地下ダンジョンであるから時間感覚は曖昧だが、持参した時計が夕暮れだと告げる頃まで、ずっと中に出されていたせいで、俺の後孔からは白濁とした精液がこぼれ落ちている。ぐったりと石床に頬を預けていると、ジェフが魔術で俺の体を清めてくれた。その頃になって、やっと俺の体からは熱が引いていた。

「そろそろ帰りましょう、殿下」
「ん、うん……は、っ……」

 俺の声は完全に掠れていた。泣きすぎて目も痛い。腰が重い。
 そんな俺を、ジェフが抱き起こした。
 そのまま横抱きにされて歩きながら、俺はジェフを見る。

「本当に魔獣退治で興奮する者は多いのか……?」
「――どうでしょうね」

 ジェフは少し呆れたような声で返してきた。

「……そ、その、悪かった。手間をかけたな。あ、あのな、ジェフ。頼む、こんなことは恥ずかしいから、誰にも言わないでくれ」
「俺に抱かれたのは、殿下にとって恥ですか?」

 少し声の調子が下がった気がして不思議になったが、俺は首を振る。

「そこじゃない。剣を使って勃ってしまったなんて、なんだか……」
「俺に抱かれた方は問題ないと?」
「それは……ジェフには迷惑をかけたし申し訳ないが……嫌じゃなかったから……」
「殿下は、本当に愛らしい方ですね。ああ、もう……そういうところですよ、本当」

 するとジェフが実に嬉しそうな顔になった。

「うん?」
「では、二人だけの秘密にしましょう。その代わり――また、俺に抱かれてくれますか?」
「え?」
「俺はクリフ殿下のことが大好きなんです」
「……っ、俺だってジェフの事が好きだぞ? で、でも……俺、男で……その……」
「性別なんて無関係です。では、みんなに言ってしまいましょうか?」
「言わないでくれ! わ、分かった、分かったから」
「ええ。素直に脅されてください。それと、俺以外から飲み物をもらっても、迂闊に飲まないように」
「? うん? 脅すって……別に脅されたとは思わない。ジェフは優しいから黙ってくれると知っている。ただ、飲み物?」
「――殿下が行く場所には、どこでもお供しますので、俺が直接見張ります、なんでもありません。はぁ、この日を夢見て長かった。一目惚れして、配置転換を願い出てから、今日に至るまでずっと計画してきましたが……ああ、好きですよ、クリフ殿下」

 つらつらと語るジェフの瞳を眺めつつ、好きという言葉に俺は嬉しくなった。

 なお王宮に戻ると、皆に帰りが遅かったことを心配された後、無事の討伐をお祝いされた。この時の俺は、まだ自分が十三歳の頃からずっとジェフに執着されていたことも、ジェフがちょっと病み気味なほど俺を好きで、俺に媚薬を盛った事も、そのまんま絆されて以後ずっと抱かれる事も、なにも知らなかった。ただ正直、俺は振り返ってみると、ずっとそばにいてくれたジェフの事がとっくに好きだったので、これはこれでよいと思っている。


 ―― 終 ――