魔王軍四天王、乱交す。
俺は人間である。
ただ、人間のいかなる国よりも、魔王国の方が待遇――主に給料面が良かった為、求人募集を目にしてからすぐに、魔王国に転職した。元々膨大な魔力を生まれながらに持っていた為、魔族が主体の魔王軍の中にあっても頭角を現し、俺は魔王軍四天王の一人、破壊神と呼ばれるようになった。なお本名は、サフという。
討伐対象は、主に魔獣だ。
別段、人間の国々と戦争をしたりするわけでもないし、俺以外にも魔王軍には人間もいる。魔族と人間の違いは、主に寿命と色彩、体格、回復能力だ。それ以外では、特に違いは無い。魔族の方が長命で、カラフルで、体格が良く、怪我をしても治りやすい。あと心なしか、美形が多い。
「サフ」
俺が魔王国図書館でそんな事を考えていると、声がかかった。視線を向けると、四天王の一人である魔族、ユリアスが立っていた。ユリアスは、多分顔面造形でいうと、魔王様の次に整った顔立ちをしている。それを隠すように伊達眼鏡をつけているが、全然美貌が隠せていない。綺麗な金髪をしていて、瞳の色は緑だ。長身で肩幅も広く、俺がイメージする魔族らしい魔族だ。
「ん?」
「珍しいなと思って。君、あんまり本とか読んでる姿を見ないから」
「まぁ忙しいかったからな、最近」
魔獣の群れが現れた為、俺は先週は特に働きづめだった。幸い討伐は完了したので、今週からはまた平穏な日々だ。
「ユリアスは結構図書館に来るのか?」
「まぁね。読書は暇つぶしにはいいよね」
そういうものかと頷きつつ、俺は隣に並んだユリアスを見上げた。頭一つ分くらい身長が違う。そんな事を考えていたら、周囲から視線が集中し始まった。
――ユリアスは、非常にモテる。
その理由は、容姿が良いからでも、性格が良いからでも無い。性格は、悪い奴ではないが、どちらかといえば淡々としていて俺から見ると冷ややかだ。あんまり笑わないしな。
では何故モテるのかというと……SEXが巧いらしい。
魔族も、人間同様性行為をする生物だ。俺も別段身持ちが堅いわけではないので、時々配下の魔族や人間と寝る事がある。ただし俺は、受け身になった事は無い。非童貞の処女だ。なお、魔族の特徴として、同性愛はメジャーだ。というのは、魔族には男性型しか存在せず、子孫は魔王国大聖堂で祈りを捧げると卵が出現するという生態だからであるようだ。俺は子供が欲しいとは思わないので、詳しい事は知らないが。
「サフは何を借りるの?」
「特に考えていない。何かお薦めはあるか?」
「そうだね――コレ、とか」
ユリアスが一冊の本を抜き取り、俺に渡してきた。見れば、『How to SEX』と書いてある。
……。
パラパラと捲ってみた結果、男性同士のSEXについての指南本だった。
「お前さ、暗に俺が下手クソとかって噂が立ってるのとかを、教えてくれているのか?」
「別に」
俺はその噂を知っていた。というか、俺は人間の場合は普通サイズだが、魔族と比べるとブツのサイズが小さいとされ、俺はデカさではなく技術だと考えるタイプだが、たまに事後、受け身の魔族に生温かい目を向けられている。その流れから、魔王城の中には、ある噂があって、『破壊神は下手クソ』というデマがある。繰り返すが、デマだ。俺は相応に自信がある。
「ユリアス」
「何?」
「お前はそんなに自信があるのか?」
「うん?」
「そんなにお上手なのか!?」
「――試してみる?」
「上等だ!」
こうして俺は、本を書架に戻してから、目を据わらせてユリアスを見た。
「俺としては、ただ単純にサフを誘ってみただけなんだけどね」
「言っておくが、俺はタチだぞ?」
「らしいね。まぁ、君に俺を押し倒す技量があるとは思わないけど。部屋は、俺の部屋で良い?」
「おう」
ユリアスは表情を変えるでもなくそう述べると、同意した俺を見て歩き始めた。その後図書館を出た俺達は、ユリアスの魔王城内部の執務室へと向かった。隣に仮眠室が存在している。
「どうぞ」
扉を開けてくれたユリアスに対して顎で頷いてから、俺は中へと入った。
巨大な寝台しか存在しない部屋だ。仮眠室だから、それで良いのだろうが。
そう考えていたら、パチンと指を鳴らす音が響いた。
瞬間、俺の全身が入浴後のように綺麗になった。多分体内にも効果がある。魔族はSEX前に清浄化魔術を使う事が多い。さすがに手際が良いなと思いながら振り返ろうとしたら、そのまま寝台に突き飛ばされた。
「ユリアス、服を――」
俺が言いかけた時には、再びまたパチンと指を鳴らす音が響き、なんと俺は全裸になっていた。本当に魔術は便利である。首だけで振り返ると、ユリアスは服を着たままで、下衣だけおろすと、寝台に両手をついている俺にのしかかってきた。え。完全に隙をつかれる形で、そのまま行為が始まってしまった。
容赦なく、ユリアスの長い指が俺の後孔に入ってくる。水魔術を用いているらしく、どろりとした感触がする。ただ、痛みはない。確かに、俺にはユリアスを押し倒す事は出来なかったが、急展開過ぎた。
初めて後孔を暴かれる感触に震えていたのは最初ばかりで、それからすぐに、俺は嬌声を飲み込む事に必死になった。気づいた頃には、全身にびっしりと汗をかいていて、もどかしさい熱に、体を絡めとられていた。
「ぁ……ユ、ユリアス……ッ」
「黙って」
「!」
俺の唇を指先でなぞりながら、ユリアスが挿入してきた。長く太い。ゆっくりと亀頭部分が入ってきた時、俺は震えながら泣いた。入るわけがない。
「無理だ、やめ、大き……っ」
するとユリアスが笑う気配がした。なお、そのまま突っ込まれた。
「っ、ン、っ!!」
「ほら、全部入ったよ」
「――、――」
俺は声にならない悲鳴を上げる。痛みからではない、快楽からだ。
「あ、ああっ……あ……っ、っ、っ」
唾液を零しそうになって、俺は必死で唇を閉じた。声も頑張って飲み込むが、涙は出てきた。
――余計な事を言うべきではなかった。
そこから、散々貪られた。
なお……これがきっかけで、俺達は関係を持つようになった。
討伐帰りで疲れている日などは、特に盛り上がる。
「っ……」
現在は、ソファの上で、座った状態で挿入されている。ユリアスの執務室のソファだ。俺は施錠していない事が気になって仕方がない。
背が高く肩幅も広いと、陰茎までこんなに巨大なのかと、俺は考えさせられた。熱く脈打つユリアスの肉茎が、俺の内部を押し広げている。ビクンビクンとユリアスの陰茎が脈打つ度に、その振動が俺の中全部に響く。太い、太すぎるし、長すぎるし、何より硬い。ギチギチに押し広げられていて、奥深くまで暴かれていた。
「あ、ああ!」
ついに俺が声を上げたのは、抱き起こされて、前から抱きしめるようにされ、下から突き上げられた時だった。より奥深くまで穿たれ、誰も知らない場所を暴かれ押し広げられ――突き上げられた。逃れようと腰を浮かすがすぐに力尽き、より深く刺さる結果となる。狙っているわけではないだろうが、陰茎が前立腺を抉る。いっぱいだから、どこを動かしても当たるのだ。
「う、ァ……ぁ……ぁ……」
少し動かれるだけで、全身が揺れる。巨根なのは間違いない。締めつける意図など必要とせず、ギチギチに広げられているから、しまっている。
「ひっ」
その状態で動かれると、グリと前立腺が刺激される。頭が真っ白になる。深く穿たれ、身動きが全くできない。
「あ、あ、あン、あ」
ユリアスが動き始めた。あわせて勝手に声が出てしまう。俺は震えながらきつく目を伏せた。目尻から涙がこぼれる――気持ち良かった。
「あ、ああっ」
「可愛い」
「!」
俺の耳元で囁いたあと、ユリアスが俺の乳首を甘くかんだ。ジンと体全体が痺れる。そのまま胸を吸われて、俺は次第にすすり泣きをこらえる事となった。俺の前もすぐにそそり立ち、ユリアスの腹部にあたる。ユリアスが、それから押しつぶすように、前から押し倒した。
「ああ!」
内部で陰茎の角度が変わる。ゴリと気持ちの良い場所をえぐられ、俺の頭が白く染まった。ユリアスが抽挿を始めると、グチャグチャと音が響き始める。どんどん中が押し広げられていく。太いものの動きを覚えさせられていく。今度はユリアスの体重で動けなくなった。
「いやあっ、あ、ああっ、だめだ、もう、もう出る、ッ」
「いいよ、イって」
「うああっ」
俺は前立腺を突き上げられながら放った。しかしユリアスの動きが止まるわけでもない。
「いやあああ」
射精後も、中から快楽がずっと響いてくる。ダメだ、また出ると、そう思った時には果てていた。ユリアスはぐぐっと深く突き入れて、体を揺さぶり、また引き抜く。俺はその日も、ユリアスが果てるまでの間、何度もイかされた。
――今日は、壁に手を付きながら、俺はユリアスに暴かれていた。根元まで挿入し、ユリアスが俺の腰を掴んでいる。
「あ、はっ、ン――っ、あ」
俺は受け身側になる事にも少し慣れてきていたので、前よりもスムーズに動く。
「あ、ああっ」
だが、感度も上がったため、すぐに射精しそうになる。
「ひっ、やぁあっ、あ」
「サフ、顔がドロドロ。気持ち良い?」
窓に映った俺の顔をユリアスが見ている。俺はボロボロ泣きながら頷いた。あんまりにも気持ち良かった。俺は、ユリアスの肉棒の虜であると自覚していた。なにせ、入っているだけで気持ち良いのだ。
「ん、んっ、ぁ、ああっ」
そこからゆるゆると抜き差しされて、腰が揺れた。
「もっと、あ!」
「こう?」
「あああああああああああああ」
ガンガン突かれると、もうダメだった。
こんな日々が続き、段々と多くの体位などを俺は覚えさせられた。ユリアスは、S気がある――俺は、そう確信していた。
「っ、ふ、ぁ」
太いユリアスのものをこの日は口で咥えながら、俺は四つん這いになっていた。手と口で必死に舐める。しゃぶるが正しい。大きすぎて咥えられない。挿入時に十分になるようにといって、ユリアスは俺の後ろに張り型を入れた。そのため、俺はギチギチに中を広げられている。ユリアスのものよりは細く短いが、人工物だから硬いし、イボ付きだ。振動している。
「う、あ……ぁ……」
しかも、最中に俺だけ先にイかないようにと、前には拘束具がはめられている。ユリアスは、俺にこらえ性がないと言って、前を拘束するのが好きだ。金色のその輪とお揃いだといして、乳首に丸い輪っかをそれぞれはめることがある。留め具の部分を乳首に挟むのだ。すると乳首から、ジンジンと快楽が流れ込む。
「そろそろ良いよ」
ユリアスが許可を出し、俺の後ろから張り型を引き抜く。そして、自分の巨大な陰茎を入れて、俺を後ろから抱き抱えた。正面には大きな鏡がある。金色のリングが胸に二つ、陰茎にひとつはまった状態の、顔が蕩けきっている俺が映る。結合部分もはっきりと映っている。
「サフ、動く練習の成果を見せて」
「あ、あ、ああっ」
そしてユリアスが、俺に自分で動くことを強制する。果てたくて果てたくて仕方がない時は無我夢中で動くが、それは射精欲求を募らせる逆効果しか生まない。ユリアスが後ろから乳首のリングを弄る。俺は嬌声を飲み込んだ。そのまま中を突き上げられて、ドライオルガズムを促され、俺は悶え狂った。いつ意識を落としたのかは不明だ。
「随分とご盛んだな。ユリアス、お前確か、一度喰った相手とは、二度とヤらない主義じゃなかったか?」
「――まぁ、そうだったんだけどねぇ。なんかねぇ。うん。アクルスこそ、ついに魔王様に突っ込んだって城中の噂になってるけど、そうなの?」
「ああ。魔王様は純情なお方だから、私の体に絆されてしまって、私の言いなりだ」
「相変わらずドSだよね、アクルスって」
「ユリアスにだけは言われたくないな。ただ、魔王様は処女は私で捨てたわけだが、今もなお、一回でいいから誰かに挿入して、童貞を捨てたいと泣いている」
話し声が聞こえてきたので、俺は意識を取り戻した。全身が気怠い。事後特有の感覚に、俺は細く吐息してから目を開けた。
「おはよう、サフ」
「おは……――アクルス!」
普通に声をかけてきたユリアスに返事をしようとして、俺は扉の前に立っている四天王の一人、アクルスを見て焦った。見られた。別に見られて困る事は無いが、気恥ずかしいし、俺にも人並みの羞恥心はある。
「な、その……こ、これは!」
「どんな言い訳をするのか興味があるから続けろ」
「……ええと、その……ちょっとした運動をしていて!」
「ほう。サフにとってユリアスとの行為は、スポーツの一環か」
悪気が無さそうにアクルスが言った。するとユリアスが片目だけを細くした。
「ふぅん。へぇ、そうなんだ。知らなかったよ。あんなによがりくるってるのに」
「ユリアス! 黙れ!」
「お前ら、何だ、付き合っているわけではないのか?」
アクルスの言葉に俺は首を振った。確かに最近の俺は完全に受け身であるが、元々は俺は上だ。ユリアスを一瞥すると、どことなく不機嫌そうに見えた。
「アクルスと魔王様だって、付き合ってないでしょう?」
「まぁな。私は別段、恋人同士になりたいといった欲求は無い。ただ、体の相性が良くてな。本来私は、処女など面倒だから絶対に相手にしたくはなかったんだが、魔王様は特別だ」
「遠隔的な惚気?」
「ただの本心だ。しかしたまには他の者ともヤりたくなる。ユリアス、サフをちょっと貸してくれないか?」
「俺ではなく、サフに直接交渉したら?」
冷ややかな声でユリアスが述べた。俺は全力で首を横に振る。
「断る!」
するとアクルスが腕を組んだ。
「しかし最近のマンネリ感は否めないんだ。はぁ……もっと派手に乱交でもしたいものだな……――ん。それもそれで良いな。どうだ、ユリアス、サフ」
「どうって何がだ?」
俺が聞き返すと、アクルスが続けた。
「私は魔王様を連れてくるから、四人でどうだ?」
「は?」
「あー、それはちょっと俺も興味があるな」
ユリアスがそんな事を言った。俺が唖然としていると、アクルスとユリアスが打ち合わせを始めた。ポカンとしたままで、俺はそれを眺めているしか出来なかった。
――次の週末の夜。
俺は、どうしてこんな事態になったのかと、色々な意味で泣きそうだった。
ユリアスの太いもので貫かれながら俺は、後ろから抱き抱えられ、乳首を嬲られている。
そんな俺の陰茎を口で咥えている魔王様は、陰茎を戒められていて、四つん這いの状態で後ろからアクルスに貫かれている。
「魔王様。サフをイかせられたら、お前のこともイかせてやる」
「サフ。もし魔王様の口に出したら、お仕置きだからね」
ドS二名が、魔王様と俺に声をかけた。魔王様がボロボロと泣いている。
「うああっあ、あ、あアクルス、俺、俺、もう、ひっ」
「ユリアス、あ、ああっ……無理だ、や、動くな……ああああああ」
必死で俺は哀願し……その後、俺はなんとか快楽に耐えた。
結果、魔王様は果てることを許されなかった。
そう――ドS共の打ち合わせの通り、乱交が始まってしまったのである。
「破壊神をイかせられないとは、情けない口技だな。私が直接再指導してやる。ユリアス、代わりに魔王様に突っ込んでおけ」
「うん」
と、俺を解放したユリアスが、立ち上がった。ぐったりと俺は寝台の上でシーツに這いつくばった。まだ射精の余韻が残っていて、必死で息をするしかない。
続いてユリアスが、魔王様を抱きかかえて下から挿入した。魔王様の陰茎は未だ戒められたままだ。ガチガチのそれを、アクルスが咥える。
「あああああ、もう無理だ、やぁあああ!!」
魔王様が大きな嬌声を上げた。思わずそちらを見ると――ユリアスと目が合った。ユリアスは魔王様を突き上げ、ゆるゆると動きながら、じーっと俺を見ている。魔王様の胸の飾りを時折弄りながら、ユリアスは俺を見据えている。
そうされていると、まるで自分が抱かれている時の気分が再燃してきて、俺の体は再び熱を帯びた。だが、今ユリアスが抱いているのは俺ではない。ズキンと、何故か胸が痛んだ。何故だ……。
「分かったか、魔王様? こうするんだ」
「わ、わかったからぁ! もうイかせてくれ!」
「良いだろう」
アクルスが許可し、魔王様の根元の戒めを取り去った。そしてそのまま口淫を続けて、魔王様を果てさせた。いいや、一際強くユリアスが突き上げた衝撃で放ったのだろうか。魔王様は恍惚とした表情になり、その後ぐったりとしてしまった。
「魔王様、さすがに下の口は、この私が直接教え込んでいるんだから、きちんと仕事を果たしているんだろうな? どうだった? ユリアス」
「うーん。まぁ、一回抱けば満足かなぁ」
「ほう。で? 魔王様、私とユリアスのどちらが良かった?」
「分からない……」
魔王様が疲れ切ったように述べた。するとユリアスが吹き出し、目に見えてアクルスは不機嫌そうになった。ユリアスは魔王様から体を放すと、俺の方へとやってきて、俺を抱き起した。
「大丈夫?」
「そろそろ終わりか?」
「うん? まだまだ夜は長いよね」
「え」
唖然として、俺は目を見開いた。そんな俺の背後に回り、再び抱き起してユリアスが挿入してきた。先程の残滓と、既に存分に解れていた状態だった事もあり、俺はそのまま勃起しているユリアスの陰茎を受け入れた。どうやら魔王様の中には放たなかったらしい。
「魔王様。破壊神に乗れ」
「!」
「ああ、それはいいね。サフ、俺に貫かれるのと、魔王様を抱くの、どちらが気持ちいいか、確認してごらんよ」
「な」
俺は声を失った。目を見開いていた魔王様は、それから頷いて、俺に跨ってきた。こうしてサンドイッチ状態になった俺は、中への刺激と、久しぶりに感じる陰茎を挿入して得る快楽のはざまで、涙ぐんだ。魔王様の中は絡みついてくるし、さすがにアクルスが至高だというだけはあって、腰遣いも絶妙だ。
だがどちらかというと、中にあるユリアスの存在感に、俺の全身は蕩けていく。最奥をガンガンと突き上げられる度、壮絶な快楽が襲い掛かってきて、そちらの方に意識がどうしても向かってしまう。
「サフ。魔王様の中と、俺に入れられるの、どちらが好き?」
「あ、あ……ああ! あ、ユリアスが良い!」
「うん、良い子」
後ろで笑う気配がした。なお、魔王様は一人で動いて、一人で果てた。俺には動く余裕など無かった。それを見ていたアクルスが、舌打ちしてから魔王様に言った。
「ちなみに聞くが、破壊神と私とユリアスのものならば、どれが一番気持ち良かった?」
「分からない……全部気持ち良い……」
「魔王様は、良い子とは言い難いな。私は失望したぞ」
「それよりアクルス……俺も童貞を捨てたい。脱童貞したい……!」
「私は生涯処女を誓っているから断る」
「俺も生涯誰かに突っ込まれる予定はないし、悪いけどサフの事は貸さないからね」
「ええ!?」
魔王様が情けの無い声をあげた。しかし、アクルスとユリアスには、譲る気配はない。
「サフ! お願いだ。俺、サフを抱きたい!」
「悪い……俺は、ユリアスが良い。ユリアス以外は嫌だ!」
俺もそう口走っていた。ユリアスも貸さないと言ってくれたから、勇気を出した。この状況となり、俺は気づいてしまった。何故なのかと当初悩んだが、どうやら俺は、ユリアスが好きみたいだ。
扉が開いたのは、その時の事だった。四人そろって視線を向けると、魔王様の寝室その五十二の扉を開け放っているのは、四天王最後の一人のモルベルだった。
「お前ら何して――……いや、本当に何してるんだよ?」
「乱交だ」
ドきっぱりとアクルスが答えた。するとモルベルが目を輝かせた。
「えー、良いなぁ! 次は誰に誰が何するの?」
「今、サフに突っ込みたいと魔王様が宣言して、フラれた所だ。モルベル、代わりに、魔王様の筆おろしを頼む」
「いいよー!」
「では私はその魔王様に突っ込んで、きちんと誰のものが一番気持ち良いか、確認させてやる事にする」
やってきて、颯爽と服を脱ぎ捨てたモルベルは、寝台に上がって魔王様の前で四つん這いになった。すごく嬉しそうな顔をして、魔王様がモルベルに挿入した。覆いかぶさる形だ。その後ろへと、アクルスが挿入し、三名が連結した。
それを眺めていたら、俺の中に挿入したままだったユリアスが、再び動き始めた。
こうして、あちらと俺の喘ぎ声が交錯し、室内には荒い吐息が溢れかえった。
「んン――!!」
その後、ユリアスが俺の中へと放った。その衝撃で、俺もまた絶頂に達した。
ぐったりとした俺を片腕で抱きしめ、もう一方の手で、ユリアスが頭を撫でた。
「ねぇ、サフ」
「ん? もう無理だからな……もう出来ないからな……」
「そうじゃなくて、さ。俺も君が良いし、君は俺以外嫌なんでしょう? それってさ、スポーツではなくて、俺の事を好きになってくれたと考えてもいいのかな?」
「う、うん、まぁそうなるな……」
自分でも自分の気持ちに気づいたばかりだった為、思わず照れつつ俺は頷いた。
すると俺の頬にユリアスがキスをした。
「俺も好きだよ」
「でもお前は、俺以外も抱くんだろう?」
「恋人になってくれるならば、話は別だよ。俺、恋人には誠実だからね」
「!」
「俺の恋人になってくれますか?」
「な、なる! 浮気したら怒るからな! 乱交とかも以後なし!」
「うん。俺も、感じてるサフの顔、もう他の人には見せたくないよ」
その後俺達は、今度は唇を重ねた。
「アクルス、俺はサフを連れて先に帰るね」
「ああ。こちらは魔王様を再教育しておく」
「俺がいるから大丈夫!」
モルベルが魔王様に貫かれながらも余裕そうに答えた。間に挟まれている魔王様は理性が飛んでしまっている様子で、こちらを見る余裕すらなさそうだった。
こうして、この夜、俺とユリアスは先に帰った。
そしてこの日から、俺とユリアスは恋人同士となった。
なお、帰宅したのはユリアスの家であり――その後の夜も長かった。まぁ俺としては、自分の気持ちも確認したし、相思相愛になれたので、ハッピーエンドだと思っている。
(終)