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このシリーズは、集団転移のお話で、並行世界が五つある設定です。 その世界の設定や、集団転移時の前提などが、下記のFirst(共通設定)に書いてあります。 ご覧頂いたことを前提で話が進みますので、どうぞご一読願います。 なお全世界別軸ですので、あちらでは攻めでこちらでは受けなどもあります。 苦手な方は回避願います。また、多少の残酷描写も含みます。男のみの世界です。First
ある日、地球は滅びた。いいや、正確には、地球が存在した世界が消失したと言えばいいだろう。多くの人々は、一瞬で存在が消えた。しかし、ごく一部の、神に選ばれた者達がいた。
複数いる神の内、ある男神――外見は金髪で、緑の目をした、十三歳頃に見える、二次性徴手前のその神は、いわゆるショタじじいであった。名を、カイトと言う。カイトは、合法的にR18を読める年齢であり、成人向けのBLが大好きであった。即ち腐っていたのである。
「どうせなら、僕が管理する世界に、BLを布教したい。このままボーイズラブという文化が消滅してしまうなんて嫌だ! 丁度、男だけの世界を、僕は作ってるんだし!」
そう決意した神・カイトは、地球は現代日本において、BL小説を書いていた人々に目をつけた。どのようにして個々人を探り当てたかと言えば、ある投稿サイトに目をつけ、その作者である個々人を探り出したのである。カイトは複数の並行世界を管理しているので、それらにそれぞれ百人ずつのBL書きを送り込もうと決めたのである。
「だけどいきなり異世界に行って、それも男女問わず、全員が男になる――現実世界のBL小説以外の記憶は消えるし器も変わって魂が同じだけだから、最初から全員が男と自認しているとはいえ……いきなり異世界に放り込まれたら困るよね」
そこでカイトは思案した。目を伏せ、長い睫毛を揺らす。睫毛の色も、金色だ。
「ひらめいた!」
目を開けて、パンとカイトが手を叩く。
「Web小説でよくあるように、チートを与えたらいいんだ! でも、全員の全ての願いを全部叶えるのは、さすがに大変だから、一人一つだけにしよう!」
うんうん、と、カイトは一人頷く。
このようにして、BL小説家達は、元の性別を問わず皆男子として、異世界に集団転移することになったのである。なお、魂が同一で、BL小説の自作の記憶や、他の関わりのあった作者名を除くと、他のことは記憶から消失した。新しい器は、カイトが作った現地人と同じような体である。細部は異なり、カイトの思いつきで、ある世界はバース系であったりもするので、その場合は様々な変化があったのだが。あとは、カイトは基本的に美形が好きであったため、転移者は全員が、現地の人から見ると、神々しいほどに美形となった。可愛い系、美人系、男前系、全てが揃っている。
以後、カイトの手によりチート能力を、祝福(ギフト)として与えられた者達は、百人ずつ、集団で転移することになったのだった。
◆◇◆
さて――現地人である。彼らから見れば、転移者こそが異世界人である。そのため、転移者達は、こちらに来て、『異世界人』と呼ばれるようになった。これは、複数の世界で共通である。他にも、二つ共通事項がある。
一つは、カイトが投稿サイトのランキングを模して作った、実力ランキングなるものが作成され、何かがあると、皆の前に表示されるようになったのである。これは見たいときに見る事もできるがランキングに変動などがあると、自動的に出現する。これには、現地人の名前も加わっている。左側が異世界人、右側が現地人で、真ん中には項目が並んでいる。
異世界由来魔力量(書いてきた文字数)、異世界語能力、異世界魔術レベル、魔王国魔力レベル、地・水・風・火の四種類の属性魔術、音魔術、香魔術、色魔術、回復魔術、身体強化魔術、結界魔術、識魔術、塔魔術、大陸共通語、王国語、共和国語、連邦語、公国語、帝国語、体力、武力、備考とある。
複数の世界において、魔術の種類と大陸にある国の数は共通だ。
基本的に、王国は属性魔術、共和国は音魔術、連邦は香魔術、公国は回復魔術、帝国は強化魔術と結界魔術、そして出自に限らず先天的に使用できる者が限られているのが、識魔術と色魔術だ。
また――いずれの国にも属さない『黒塔』を初めとした各塔の独自魔術も存在し、各塔に三大魔法などがある。なお、黒塔の魔術師は、他塔はともかく、基本的に大陸全ての魔術を行使可能で、大陸の言語は基本的に習得している。ただ一点、新しく出現した、異世界の魔術や知識は、彼らにも基本的には無い。そう、基本的には、無いのである。
さて、この『黒塔』であるが、カイトの作った複数の世界は、並行世界であるので、文化や風土、国名や言語、魔術の他に、存在する人物も同一だ。中身には、それぞれ微少な差違があるとはいえ、顔面造形や基本性格は、根本的に同じである。そのため、『黒塔』の魔術師も皆、世界ごとに同じ顔をしている。
現在、この黒塔には、三人の現地人の魔術師が、所属している。そして所属する魔術師は、慣例として、暗黒魔導師と呼ばれる。暗黒魔導師達は、奇数代は偶数代をあけて次の奇数代を弟子とする。偶数代も奇数を開けて、弟子を取る。即ち一代目の弟子は三代目、二代目の弟子は四代目となり、続いてきた。なお、四代目に関しては、欠番とされている。
完全なる年功序列であり、生存している中で塔にいるその時点でTOPの魔術師は、主席と呼ばれ、塔全体の決定権を持つ。なお全員が強い魔力を持っているため、老化が遅い。魔力は人の老化を遅らせる。
さて、一つの世界の除いての、順番はこうだ。
現在の主席であるのが、第十一代暗黒魔導師のユーグである。
前代が今はその地位を譲った第十代暗黒魔導師のファルレ。
そして十二代目はキースである。
いくつかの世界では、ファルレとユーグの順が逆になっているが、それはカイトから見れば微少な差でしかない。今は、この三名しか暗黒魔導師はいないと、大陸全土には伝えられている。
魔力が強く圧倒的な知識量と魔術技巧を誇る黒塔の魔術師達は、いずれの国にも属さないが、全ての国から敬われている。それは大陸内で孤立し、悪し様に言われることの多い帝国ですら変わらない。ただし帝国は別段黒塔とは条約などは締結していない。
大陸を股にかけて、暗黒魔導師は必要時は活躍する。
他に国を越えて活動する存在は、大陸全域にある、誰でもアクセス可能な機関は、各地にある冒険者ギルドを束ねる冒険者ギルド連盟だけだ。大陸銀行も、連盟の傘下にある。連盟は、五元老と呼ばれる冒険者から選ばれた人間が、話し合いの末、物事を決定する。
異世界人が出現し、慌ただしくなったのは、まさに黒塔と、五元老、及び各国の王侯貴族だった。異世界人は、カガクという文化の元から来たとは言うが、異世界由来の独自の魔術を使う者が多い。未知の魔術で、戦を起こされたら? それは一つの危機である。それだけではない。この複数の世界は、いずれも魔力膜に覆われている。それが大きく破壊されると、人間はその外側から名流れ込んでくる膨大な魔力に飲み込まれ、死ぬ。そのためこれまでも魔力膜のほつれやほころびを見つけた時、修繕するのは黒塔の仕事だった。
それに今、異世界人への対応という難題が加わった。
そこで各世界ともに、黒塔は同じ結論を出した。異世界人を魔力で探知し、その全員を特定の街を作って、一旦そこに移動させ、様子を観察するというものだった。結果、転移魔術で強制的に移動させられた異世界人は、各世界でそれぞれ約百名――時折百に満たない場合もあったが、何人来たかを現地人は誰も知らなかったので、それで全員だと考えられていた。さて、異世界人集落となった街の周囲に、黒塔の魔術師は結界を構築した。これは、異世界人を逃げられないようにする効果と、そのすぐそばに魔獣の巣があるため、襲われたときに排除するためのものだ。他にも、結界内には、翻訳フィールドが展開され、異世界人だけでなく、大陸各国の共通語を知らない民同士も会話ができるようになった。
そこに、各国から来た王侯貴族や騎士・魔術師の代表者、及び五元老を代表してきた人物と、黒塔の三名が加わり、相談する場ができた。白い円卓の前に座り、彼らは異世界陣の処遇を話し合うことにした。
すると――ある日、中央に、透明なウィンドウが出現した。それはランキングを表示するものによく似ていた。
『異世界人にしか倒せない敵も、今後出現します』
『異世界人の五賢人には、異世界人の意見をまとめるように通達を出しました』
そんな文字が現れた。なお、実力ランキングの方は、どの世界でも、一番上は、『非公開』と書かれていた。さて、これには現地人も焦った。異世界人にしか倒せない敵が出現すると言うことは、協力しなければならないと言うことだ。
こうして、観察・監視の日々が、少しずつ変化を見せ始めた。
ここまでが、複数の世界の共通項目である。なお、複数の世界はそれぞれ、青月の世界、赤月の世界、黄月の世界、黒月の世界、白月の世界などと呼ばれている。以後は、それぞれの世界のお話に続く。
なお繰り返しになるが、一部の世界に置いては、黒塔以外に、『火塔』や『斜塔』、『砂塔』、『水塔』、『白塔』などの存在がある場合もある。魔術体系が異なることもある。
―― 共通設定・終 ――