【一】





 明け方すぎ、出会いと別れがあるのだと教えてくれた人がいた。

 その時二人の間には、確かに愛の約束があった。けれど、叶いかけていた二人の夢は、夢のままで終わった。初めから互いに、進むべき道が違うことは定められていた。

 身請けするからと、そう言った坂本の言葉を、あの日楼主は断った。
 それは愛ゆえだ。
 身を焦がすような恋など苦しくて呼吸ができなかったから。

 坂本は、ただ、「そうか」と言って笑った。
 そんな過去が確かにあった。