本日の神殿の庭は、白い陽光に照らし出されている。
 輝也は噴水の前に立ち、濃いピンク色のトリオイバナを見ていた。すると司馬を踏む足音がした。

「輝也」
「なんだ?」

 振り返らないままで、輝也は答えて、水面を見る。そこには真先の姿がゆらりと映った。

「まだ寝ていた方がいいんじゃないのか?」
「魔夜先生には、大丈夫だと言われている」
「魔夜先生は雑なところがあるだろう」
「だからなんだ? こうして命を繋いでもらっただけで充分だ」
「そうか」
「だが、何も真先まで……俺のせいで、その……」
「お前と一緒なら、不老不死の理において、ずっと魔夜先生の雑用をしたっていいと思った。そただそれだけだ」
「何故?」
「……あのな」
「俺が死にそうで同情したとしても、命まで賭けるべきじゃなかっただろう?」
「お前はたまに変なところでバカだな。俺は、輝也、お前の事をその……大切に思ってるんだよ」
「そうか」
「ああ」
「ありがとう」
「――意味が伝わってないのは分かった」
「何がだ?」
「俺は、輝也が好きだ」
「それは俺が貴様を好きだから、哀れんで――」
「だから、違う。俺は凛を好きではなかったらしいんだよ」
「? どういう事だ」
「凛を好きだというと、お前が……俺を見て辛そうな顔をするのが、たまらなく……好きだったみたいなんだ、俺は」
「俺の気持ちがバレていたのは理解したが、それが事実なら、貴様はとんだドSだな」
「自覚はある」

 真先はそう述べて深くと息してから、長めに瞬きをし、それからしっかりと目を開けると、不意に後ろから輝也を抱きしめた。

「おい。離せ」
「嫌だ。お前には、こうでもしないと伝わらないだろう?」
「ッ……は、離っ……」

 力強い真先の腕の感触に、輝也は反射的に照れて朱くなった。
 そんな輝也の肩に、真先が顎を乗せる。

「好きだ、輝也」
「わ、わかったから、だから、離せ!」
「何故?」
「心臓がもたん。だから、頼むから」
「もっとドキドキしてればいい」
「う、うるさい。離せ、本当に」

 輝也がより一層照れた。真先はさらに腕に力を込める。
 そんな二人の庭での一時。